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本当にミナミヌマエビ? (雄の脚が湾曲しているという相違がありました)追記2010/10/16


観賞用は外国産?

我が家で四年近く爆殖を続けているミナミヌマエビ達。
特に気にする事もなく「ミナミ、ミナミ」と呼んでいましたが、
実際の所、本当にミナミヌマエビなのか?
実験をするに当たっては、これは少々気になるところです。

ペットショップの熱帯魚コーナーで、「ミナミヌマエビ」と書かれた水槽。
そこから10匹購入し、水槽に移す時に一匹稚エビが混入しているのを発見しましたから、
導入は11匹です。
四年の間に増えた数は数千匹に及ぶでしょうか。

ミナミヌマエビは中国、韓国から、釣り餌用・観賞用に年間20トンも輸入されているらしく、
台湾からもノコギリヌマエビ(トロピカルシュリンプ)という近似種が輸入されているようですから、
人件費の高い国産のミナミが安く売られている確率は低いはず。
観賞魚店出身の“ミナミヌマエビ”が国産ミナミであることは極めて怪しい。

新たに琵琶湖へ侵入したシナヌマエビ?
http://www.lbri.go.jp/omia/80/omia80.htm

ノコギリヌマエビ(トロピカルシュリンプ)
http://www2u.biglobe.ne.jp/~niwasaki/department/toropikarusyurinnpu.htm【エビのデパート】
ミナミヌマエビの近似種としては唯一通称名があるエビ。
ノコギリヌマエビはレッドチェリーと同じ台湾産なようだ。
とすると、レッドチェリーは「ノコギリヌマエビ・レッド」である可能性も高い。

ノコギリヌマエビ(トロピカルシュリンプ)
http://homepage1.nifty.com/gebara/ebizukan/nokogirinuma.html【えび図鑑】
額角が第一触角の柄部を超えなければ「ノコギリヌマエビ」らしい。

http://www9.ocn.ne.jp/~ebi-505/newpage32.htmエビっこ倶楽部
情報源が一箇所なのは心許ないですが、
ここ以外にノコギリヌマエビとミナミヌマエビの見分け方を掲載している場所はなさそう。
もちろんシナヌマエビの亜種ごとの特徴が載っているサイトなども見当たらない。

額角を見れば、何か分かるかもしれないと思い、
3倍の虫眼鏡を覗きますが、これでは同じ様にしか見えない。
そこで、デジカメで撮った古い写真などもあらためて見比べてみると、
なんとなんと、額角の形状や長さがまるっきり違うではないですか!
画素数が低いので額角の棘の数までは判りませんが、
見ただけで判るような違いが・・・・・
鋸(ノコギリ)どころではない、鑿(ノミ)や彫刻刀、千枚通しみたいな額角が多数。
これは驚きです。
一種類だと思っていた「ミナミ」が、大きく分けて5タイプほどの額角の違いを見せてくれました。

額角⇒額(ひたい)に生えている角(つの)という意味でしょうか。
長さや棘の数でエビの種類の識別をするのに重視されている部分です。
第一触角・柄部⇒鼻先にあるから第一触角なのでしょう。グルグルと振り回す、よく動く長い方が「第二触角」。
鼻先の固定型アンテナ。柄部は第一触角の「柄」の部分という意味なのでしょう。
第一触角・鞭状部⇒柄から出た2本の細い鞭(ムチ)のような部分。

 

“ミナミヌマエビ”に含まれていた、額角のタイプ

ミナミヌマエビ水槽に居る、あるいは居た、代々のミナミ写真から、
額角の特徴が異なる個体を抜き取ってみました。
棘の数までは分かりませんが、ぱっと見て分かるくらい額角の長さや幅が違います。
(写真は全てメスの成熟個体)

額角がとても小さいタイプ

目の間の先にちょこっと有るか無いかくらいにしか額角が確認できないタイプ。
卵巣は発達していますから、こんな額角でも立派に大人です。

太くて短いタイプ

額角が有ることは容易に分かりますが、その長さが非常に短い。
幅はありますが、伸びが無いタイプ。
背中に枯草色の縦筋が出てますから、かなり高齢。なのに、この短さ。

幅や長さはあるが、吻が短いタイプ

額角の長さはまあまあ有り、幅も有りますから、鼻筋は通っていますが、
鼻先が短い印象を受けるタイプ、

比較的長いが、するどく尖っているタイプ

長さはそこそこ有りますが、幅が無く、
先の方は針のように細く鋭いタイプ。

額角が長いタイプ(1)

黒色の大型個体になった個体(3cm)。額角や吻が長い。

額角が長いタイプ(2)

熱帯魚混泳水槽で黒色化した個体。特に大型ではなく2cm程度。
黒色化するタイプは額角が長いようだ。

レッドチェリーシュリンプの額角

参考としてレッドチェリーのメスの頭部の写真。
額角は長過ぎもせず、太過ぎもせずといった感じでしょうか。
日本産の本物ミナミヌマエビの額角は第一触角柄部(目の前に突き出た二本のツノ)
と同じ長さくらいはあるようですから、
この額角の長さを見た限りでは「ミナミヌマエビの色彩変異」という話はなさそう。

 

なぜ、こうなったのか

同一店の同一水槽から11匹購入しただけなのに、
なぜ、これだけ多くのタイプが発生するのでしょう。
これは簡単に、小売される前の段階で各種のシナヌマエビの仲間が
“ミナミヌマエビ”として輸入され、卸されていると理解して良いように思えます。
中国産だったり、韓国産だったり、台湾産だったり、国産だったり。
小売店のミナミが品薄になり注文を受けた際に、
それらが時と場合によって入荷するのでしょう。

「ビーシュリンプ」と書かれた水槽に、元祖やニュービーが、
ごちゃごちゃと3、4種類混ざって売られているののミナミバージョン。
模様のある種類のエビでは比較的区別は楽ですが、
透明タイプのエビではほぼ不可能。
ビーシュリンプのようなエビよりも透明なエビの方が、
はるかに混ざりが多いだろうと云う事は想像しやすいです。
“東南アジアヌマエビ”や“スカンクシュリンプ(淡水の)”などの中が、
常に同一種であるとは、とても思えないのと一緒です。

ただ、小売店が一回に注文する量は限られ、
在庫が店頭から完全に消えてから入荷すれば、
その場合は入荷したエビは一種類になります。
とすると、各地のシナヌマエビが一堂に会する場所は、
小売店の「ミナミヌマエビ水槽」ではなくて、
その前の段階で大量にキープされている場所なのかもしれません。
つまり、最初からごっちゃになっているシナヌマエビ・ミックスを
小売店が買い、それを私が買ったのかもしれません。

様々な額角の長さの“ミナミヌマエビ”が混ざった水槽。
額角の形状だけで別亜種と判断するのは早急に思えますが、
いろんな出身地があるような気はします。
ツノナガカワリヌマエビ亜種群が一つの水槽に住み分けていたら、
それはそれで、また面白いですが。

 

雑種化しているのか、別種として存在しているのか

不思議なのは、この部分。
4年間も小さな水槽で交雑が繰り返されているわけですから、
中間的なサイズに統一されてしまっても良さそうに思いますが、
1年ほど前の写真でも、しっかり額角の太短いタイプと細長いタイプが存在しました。
黒化するタイプとしないタイプが居たり、あきらかに大型化するタイプも居ます。

どれか一種類が優勢遺伝子という事もなく、
小さな水槽の中で、各亜種が各自で形質を残し続けているように思えます。
とすると、案外シナヌマエビ同士の亜種は混ざりにくいのかな?という考えが浮かびます。
ミナミ水槽は30cm、45cm、36cmと変わってきました。
環境や季節が変わる度ごとに、その環境に合ったタイプが勢力を増したり、
その影で、個体数が減少していたタイプもあったかもしれません。
そんな事は全く想像もせずに一種類と思っていましたが、
各タイプがそれぞれ並行に子孫を残し続けているのかもしれません。

極端な考え方ですが、
11匹のうち、2匹ずつ同一タイプのペアであれば、
5タイプあってもおかしくないですね。(まず、有り得ないですが(^^;)

しかし、これだけ多くのタイプ違いが居るのを考えると、
実験のタイトル付けが難しくなります。
「ショップ出身の通称ミナミヌマエビ(シナヌマエビ類)とレッドチェリーシュリンプとの交雑実験」
で良いかもしれないですね。

「自然採集の国産ミナミヌマエビとレッドチェリーとの交雑実験」に対する比較実験の一つ、
という程度の「お話」になります。
どのタイプでもよいですから、レッドチェリーシュリンプとの間に子供が出来れば、
「購入ミナミヌマエビの中には、レッドチェリーと交雑するタイプがある」
という証明くらいには使えそうです。

 


おすすめ参考リンク

新たに琵琶湖へ侵入したシナヌマエビ?
http://www.lbri.go.jp/omia/80/omia80.htm
朝鮮半島に2亜種、中国に5亜種が報告されているようだ。
大陸は広大ですから、発見されていない亜種は、もっともっと居るでしょう。
分布図の台湾で「シナヌマエビ?」とされているものは「ノコギリヌマエビ」である可能性も大きい。
そうすると、チェリーもノコギリなのか?
一体、どこにこんな赤いエビが隔離されているのか不思議。

ノコギリヌマエビ(トロピカルシュリンプ)
http://www2u.biglobe.ne.jp/~niwasaki/department/toropikarusyurinnpu.htm【エビのデパート】
レッドチェリーシュリンプと同様「台湾産」と云われているノコギリヌマエビ。
チェリーは「ノコギリヌマエビ・レッド」で、我が家のミナミもノコギリヌマエビだったら、同種同士。
雄チェリーが何の躊躇もなくマウンティングを試みるのも当然の事になります。
ノコギリヌマエビの中身が一種類である保証も、これまた怪しいのかもしれませんが・・・

http://www.aurora.dti.ne.jp/~shrimp/eat.htm
韓国のミナミヌマエビ養殖池。
じつは韓国産だったり?
池が韓国にあるからと云って韓国原産種とも限らないか。
より丈夫で殖え易いものを導入するのが普通と思えるので。

 

●日本のミナミヌマエビと近縁外来種が交雑の可能性が大きい2009/03/16追加情報
http://www.esj.ne.jp/meeting/abst/56/L1-11.html
日本のミナミヌマエビとシナヌマエビ類は交雑しないという噂でしたが、
さすがに20種類以上も居ると、そうもいかないようです。
複数の地域で交雑の可能性が高いようです。
http://www.esj.ne.jp/meeting/abst/56/PA2-605.html
文中にあるheteropodaと、palmataは、見た事のあるエビの筈です。
学名で検索すると面白いです。

 


◆国産ミナミヌマエビの採集個体の写真が見られるサイト◆

国産ミナミヌマエビの特徴は、
額角の長さが、第一触角柄部(ヒゲが二本に分かれる前の太い部分)と
同じくらい長いこと↓
採集した“ミナミヌマエビ”を、しっかり同定している方。
http://blog.goo.ne.jp/catfishtail/e/bfb08e8b363b87c836538ac7cd80b66b

アクアリウムで御馴染みの“ミナミヌマエビ”には、
額角が長い個体は、まず見当たらないと思います。
釣り餌用“ブツエビ”も同様でしょう。
価格競争の問題で国産本物が出回ることはないと考えるのがふつう。(2007/02/23)

ミナミヌマエビの詳しい解説(写真は無し)
http://www.geocities.co.jp/Outdoors/7766/kawaebi/ebisyurui/N.denticulata.html【KenKen’s Home Page】

http://ki.itigo.jp/marli/water/ebi03.htm【川魚とエビの家】
純国産に間違いないと思われるミナミヌマエビ採集個体。
クリアブルーと書かれた写真には触角柄部とほぼ同長の額角があります。
しかし、下方にあるものは額角が短い。

http://www.geocities.co.jp/AnimalPark-Tama/2113/minani2.html
触角柄部とほぼ同長。(白いミナミヌマエビ)

http://stay0329.fc2web.com/【BREEDING LIFE】
こちらもほぼ同じ長さに見えます。

http://www7.plala.or.jp/uni2/awajiikimono/ebi.tansui.htm
額角の様子も分かり易い頭部の写真

比較⇒新たに琵琶湖へ侵入したシナヌマエビ?
http://www.lbri.go.jp/omia/80/omia80.htm
シナヌマエビの一種の額角写真があります。
雌の額角の長さは国産ミナミと同じ程度なのかもしれません。
雄の額角は雌より短いそうですが、
国産はどれくらい長いのかといった確かな情報が無いので比較のしようがないです(T.T)
(そう云えば、雄の額角は一切見ていなかった・・・・・)

鑑定結果
http://homepage1.nifty.com/~ayuayu/topics0528.html
一番下の顕微鏡写真の額角は柄部より短い。
これでは、「短ければ外国産」と云い切れない。
国産でも地域的な差があるのかもしれない。

http://normani.hp.infoseek.co.jp/11minami.htm
柄部を完全にオーバーしている個体もあれば、
柄部より短い個体もあるように見える。
地域的な差ではなく、個体差?

う〜ん、純国産と外国産を外見から識別する決定的な方法が無い感じ。
(と思っていましたが、前側角部の棘を見てみると、なんと!⇒続く 追記2006・01・14

 

2005/08/22

 


2007/02/23 更新


 交雑実験(2)〜産卵】 そんな正体不明の“シナヌマエビ・ミックス”がレッドチェリーとの間に卵を産みました。


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