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スジエビは二種類だった

河川の上流部に暮らす完全な淡水繁殖型(A型)と、
下流部に暮らす降海型(B型)があるようです。
互いに交配することはほぼないそうです。

http://ir.library.tohoku.ac.jp/re/bitstream/10097/16495/1/A1S600349.pdf

http://ir.library.tohoku.ac.jp/re/bitstream/10097/15940/1/A1H020426.pdf

今後の研究によっては、もっともっと増えるかもしれません。

 

スジエビの繁殖形態に関しては、
旧来からアクアリストに対しては「汽水が必要」と言われていました。
海とつながっていない池や湖に生息するスジエビはなぜ存在するのか不思議、
などと語られていたのですね。
しかし、それはアクアリストのみの世界の単なる誤解であって、
専門の研究機関からの情報では、淡水繁殖は常識。
卵の大きさが各地方・各水系で異なることから、
降海して各地のゾエアが混ざっている事はないと思うのが普通という印象でした。

個人的にも淡水繁殖が基本であろうという認識は同じでした。
どう考えても両側回遊型とは思えません。
池や用水路に居るエビは淡水繁殖だと思ったほうがむしろ普通です。
実際、淡水水槽で繁殖したという情報も何度か見掛けました。
塩分の多い湖や、大河川の下流部に棲む個体群などは、
それなりに塩分耐性があるのは当然としても、
身近に見かけるタイプの小型のスジエビは、
まず淡水繁殖だと思います。

しかし、それに対して、
明らかに巨大で、線の太く濃いタイプが存在するのも知っていました。
通常のヤリタナゴに見慣れた状態から東北ヤリタナゴを見た時の驚きと一緒の
驚愕するほどの巨大スジエビが存在します。
近所の淡水で採れるスジが細くて薄茶色だったりするのとは随分と違います。
相似型ではありますが、体格が全然違います。
テナガエビでも勝てないような頑丈そうなスジエビです。
実際に書物では、
頭胸甲(脱皮した殻は頭側と尻尾側に分かれますが、その頭側のみ)だけで
5cmの個体があるという話ですから、
全長では10cmを越えても普通となります。
おそらくこんな個体達が降海型のB型なのではないかと思いますが、
A型・B型の比較写真などは見たことはないので、
よく確認することはできません。

逆に、特に大きくない場合は、
この降海型が淡水型と区別されずに混ざっている場合も当然ありそうです。
遡上するスジエビとして紹介されるタイプがB型で、
これが「スジエビは全体に小卵型でゾエアは海に下る」とされる原因であった可能性もあります。
海水濃度を変えた塩分耐性実験でも、2種が混ざっていたら
混ざり具合で、結果が変わってしまいます。

淡水繁殖種として、海との関わりを断った者がほとんどの中、
こっそり、そのまま、降海型で居続けた個体群達が存在することが分かったという事ですが、
別種化するまで、どのように隔離されていったのか不思議です。

最近では、胸部が白くて、模様も「逆さハの字」ではない、
淡水繁殖が非常に楽な、C型とも言えるようなスジエビも定着しているようです。
近縁外来種と思われる商品名“ミナミヌマエビ”には、このような“スジエビ”もよく混ざっていて、
悪さをするので放流され易いと思えますし、
釣り餌として普通に「妙なスジエビ」や「妙なテナガエビ科」が見られますから、
今後放流されて定着すると思われる、これらとの競合も興味深い部分です。

 

2008/04/27


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