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スジエビの見分け方


ヌマエビ類を採集したり、買って来たりすると、混ざっている場合も多いというスジエビ。
肉食性が強く、攻撃的なこの種類は、他のエビや魚とのトラブル(捕食)が発生しやすいエビです。
そんなスジエビを、スジエビと間違われやすいヌマエビ類の代表ヌカエビ(ヌマエビ北部-中部群)と比較して、
簡単に出来る見分け方を作ってみました。

スジエビとヌカエビの見分け方

この二種に関しては、見分けは容易と思われますが、
web上に画像として載せられた場合には、相対的な大きさが分からずに
案外、見分けがあらぬ方向へ行ってしまっているのを良く見掛けます。
ヌカエビというエビがあまりよく知られていない為か、混同されて無意味に隔離されたり、
「魚を襲った」という、身に覚えのない冤罪を着せられたりする場合も多いようです。
肉食性の強いスジエビへの恐怖心が、
シルエットの似たヌカエビへの過剰な警戒を生んだり、
逆に、ヌカエビと思い込まれて混泳されたスジエビが魚を襲い、
犯人の名前が「ヌカエビ」とされてしまっていることもあるようです。

「おっとりエビ選手権」で優勝できそうな最弱級のエビが、
ずるがしこさ?1クラスのエビと混同されるとは、なんともやるせない話です。


スジエビをヌマエビ類から見分ける方法として定着している観のある
「腰が曲がっている」、「目が飛び出している」、「体が透明」などがあるようですが、
個人的には、これらで見分けるのは無理ではないか、という印象です。
(飛び出し具合、曲がり具合などの“具合”を見慣れている人なら一瞬でしょうけれど)

上の2枚の写真を見て頂けると分かると思いますが、どちらも、腰が曲がっていて、目が離れていて、体は半透明です。
これでは両種の見分けは、かえって混同してしまう場合が多いと思います。
腰が曲がっている・目が飛び出している・体が透明といった特徴は、
基本的に「エビの共通点」ですから、相違点として用いるには不適当に思えます。
参照⇒【「スジエビ」の範囲】 スジエビに似た種類を集めてみました。⇒【スジエビ?写真集】透明なエビ写真集
当然ながら、識別は相違点を重視するものなので、
見分けには、特徴が全く重ならない部分を探して使うのが妥当です。


1.長いハサミ脚があるかどうか

淡水のエビは、「テナガエビ類」と「ヌマエビ類」の二つに大きく分けられます。
スジエビはテナガエビの仲間になります。
本家のテナガエビほど長くはないですが、一応テナガエビの仲間ですから、手は若干長いです。
写真のような、鼻先を越える長いハサミ脚があればスジエビです。

スジエビの手は長い テナガエビ科ですから

手(ハサミ脚)は二対、計四本あります。
上の写真で一番前まで突き出ている、先の割れている二本が良く目立つと思います。
この二本がスジエビの仲間(というかテナガエビの仲間)の特徴的な部分で、
近付いてくる他のエビや小魚などには必ずこれでちょっかいを出します。
このエビに高い攻撃性を与える最も重要な部分で、第二胸脚と呼ばれています。
第一胸脚と共に餌探しなどにも良く使います。
餌を与えるとこのハサミで上手にキャッチします。
水面に浮く餌なども、逆さまに泳ぎながら、ハサミでかき集めます。
この第二胸脚のハサミ脚が太くて力強い印象のするタイプは、実際に攻撃性が高く、
かなり大きな魚でも捕らえて食べてしまう事があります。
混泳した小魚のヒレが裂かれる原因も、この長いハサミ脚です。


第一胸脚は細くて弱々しいですが、これで細かい餌を探したりつまんだりします。
餌を与えた時には、この手で地面の表面をまさぐって、
(ちょうど、漫才やコントで「メガネ、メガネ・・・」と探すような感じ)
餌のありかを確認していきます。
よく砂利の間に差し込んで、中に落ちている餌をつまんだりもします。
顔の手入れなどにも実に器用に、そして重宝に使いこなしています。


このような先が二つに割れたハサミのある長い脚を持っていれば「テナガエビ科」です。
この長いハサミ脚があればヌマエビ類ではありません。
逆に、この長いハサミ脚がなければ、目が横へ出っ張っていても、腰が曲がっていても、
スジエビではないと判断できます。


採集時でも、この手の長さで、スジエビと分かります。
・手が鼻先より長い。
・体に筋模様が多い。
・手足の間接がオレンジ色。
バケツの中でバンザイして泳いでいたら
スジエビかテナガエビ。

参照⇒【スジエビの混泳を考える
スジエビは肉食性の強いエビ

参照⇒【テナガエビの若い個体
スジエビとよく間違われているテナガエビの若い個体。
関節も黄色い。「m模様」が決め手。

 

要注意!
腕を曲げている状態もありますので注意が必要かもしれません。
飼っている飼育者ご自身ならば、
長時間観察できますから問題ありませんが、
一瞬を切り取られた他人の写真を判断する場合には要注意です。

腕を曲げている事もあります。
あくまでも「手を伸ばした場合」という条件での判断です。
他にも、折れていたり、取れていたり、
再生途中であれば、手が無かったり、短かったりします。


地面を探っている時も、短く見えるかもしれません。
いずれにせよ、一箇所のみでの判断では早急すぎですし、
目的に必要な精度には達し難いと思います。


スジエビの手(第二胸脚)。案外立派で長いです。⇒【スジエビの長いハサミ脚

ヌマエビ類の手は短い

一方、ヌカエビは「ヌマエビの仲間」に入ります。
ビーシュリンプ、ミナミヌマエビ、ヤマトヌマエビなどの「コケ取りエビ」と一緒のグループです。
豚足を思わせるような太くて短い手を使って、
せわしなく水草などの表面をつまんでは口に持って行くという
機械的な動作を延々と繰り返します。

上の写真の真ん中に写っている二本の脚がハサミ脚。
スジエビの物と違い、節間が詰まっていて、太くて短いのが分かると思います。
参照⇒“ミナミヌマエビ”の胸脚先端に毛が生えている為、攻撃力は低い。
参考⇒レッドビーシュリンプの顎脚・胸脚
右側に写っているのが歩くための脚(歩脚)ですが、
その半分の長さにも達しない程度。


長さは、手元のコケを摘んで口に持って行くだけの長さしかありません。
短時間で効率良く口に餌を運び続けるために、ぎりぎりの長さに削った長さです。
ヌカエビが含まれるヌマエビの仲間の特徴が、この短い手です。
口元で水草などの表面をツマツマツマツマと、ひっきりなしにつまんでいるエビであれば、
スジエビではなくヌマエビの仲間となります。


ハサミより前にある脚(顎脚)もヌマエビ類の特徴的な部分です。
コケなどの付着物を食べるタイプのヌマエビ類では、この顎脚が長く、
まるで一番目の歩脚のように発達しています。
ハサミ脚で付着物をつかんで引き抜く時に、自分が前のめりにならないように、
これをつっかえ棒として使い、うまくバランスを取るための脚です。
顎脚はスジエビにもありますが、地面に付くほどの長いものではありません。
このような、まるで歩脚のような長い顎脚があれば、ヌマエビの仲間になります。
参照⇒“ミナミヌマエビ”の顎脚


目が横へ飛び出しているので、スジエビと間違えられ易いヌカエビ(ヌマエビ北部-中部群)。
腰も曲がっていて、黒い筋模様がある個体も居ます。
しかし、手だけは明らかに短いです。
口元に丸みのあるハサミが一対。
その次のハサミは、それよりはやや長いですが、
他の脚とは比べられないほどの短さです。
“テナガエビ”を感じる部分はありません。
ヌカエビはヌマエビ科ヌマエビ属。
スジエビはテナガエビ科スジエビ属。


2.筋が有るか無いか

「スジエビ」というくらいですから、スジエビには体に黒っぽいスジが何本も走っています。
太い黒筋が体に三つ、四つ入っていて、その間にも細かい筋が入っています。

名前が「スジエビ」ですから、体じゅうスジだらけです。
こんな黒い線がたくさんあればスジエビです。

Web上で、まったくスジのない透明なヌマエビ類が、
「スジエビ」とされている場合が多いのですが、
もう少し標準和名の意味を汲み取っても問題ないです(^^;。

参照⇒【
スジエビのすじ模様
参照⇒【
スジエビ・ギャラリー
参照⇒【
スジエビのおすめす

ページ上の大きな写真の個体は、かなりスジが薄いタイプですが、
それでもスジが入っているのは判ります。
多くの個体に、胸の横に「逆さハの字」が書かれているのが特徴的です。
そして腰の一番出っ張った部分に一本。尾扇の付け根にもう一本入ります。

達筆な筆書きの「逆さハの字」

スジエビはほぼ日本全国にいて、河川ごとに若干の独自色があるようです。
スジの濃さ、太さ、色合い、位置などに少々の違いが見られます。
しかし、特徴的な模様配置に大きなずれは見たことがありません。
スジエビなのにスジのない個体は今のところ見た事が無いので、
上記の位置にスジが目立つエビであれば、スジエビであると思って間違いはないでしょう。

やや強引な感もありますが、頭胸甲側面の模様が漢字の「凶」に見える個体は多いです。
逆さハの字の間に×とまでは行きませんが、×に似た模様があります。
凶という他にも、「口の広いコップの真ん中にストローが一本刺さっている」と見做すのも面白い。

片や、ヌカエビですが、こちらは「特徴がないのが特徴」と云えてしまうほど
なんの変哲もない、薄いグレーや薄い茶色のエビです。
最大級に育った雌の個体は模様が濃くなったりはしますが、参照⇒【ヌカエビの模様の特徴
通常は黒コショウをふったような細かい点が散在する程度で、
体側に目立つ黒スジはありません。

ヌカエビは淡水エビ研究の聖地・沖縄〜九州に生息しないためか、研究が遅れている印象のあるエビです。
最近の研究で、旧ヌマエビ大卵型がヌカエビの地域変異であったことが判明し、
ヌカエビの生息範囲は、同じく陸封種のミナミヌマエビを凌ぐほどの一大勢力となっていますが、
淡水繁殖であることすら、専門的な人々にも知られていない傾向があります。
この「知られていない」ということが、混同を生む大きな原因ではあると思います。
ヌカエビの容姿に馴染みのない人にとっては、
最も近い形のエビはスジエビになってしまうのでしょう。
※追記。ヌカエビは生き物好きの方に、2011年、九州北西部でも発見されました。

 

「スジがあればスジエビ」ではありません!

意外と見掛ける事が多いのが、
ミナミヌマエビ(シナヌマエビ類)とスジエビの混同。
実物を見たら間違う事は無いのでしょうけれど、
大きさが分からないweb上の画像ではそういう事が起きます。
特に、ミナミヌマエビには背中に幾筋も黒い線が入っている場合があり、
そこだけを見て、スジエビとされてしまうようです。
ヌマエビ類にもスジがあるエビは多いですから、要注意です。
筋さえあればスジエビではなく、筋の形状や位置が重要。⇒【スジエビのすじ模様
筋の特徴が分からない場合も、
まずは、手の長さを先に見る事です。
それでテナガエビ科かヌマエビ科かは簡単に分かります。

ミナミヌマエビ(シナヌマエビ類)の線の入り方。
スジがあるからと云って早合点をしないのが肝心。
シマウマを見て「トラだ!」と言っているような感じになってしまいますので。


この個体は、
・体に黒いスジ模様がいっぱい入っている
・やや腰が曲がっている
・手足の関節が黄色い
・体もやや半透明
ですが、鼻先を越える長いハサミ脚がありません。
顎脚が長く(一番前の脚)、その顎脚より内側に小さなハサミがあります。
この、「長いハサミ脚がない」ということと「顎脚が長い」ということで、
上に並べた類似点は全て覆せます。
(このエビは商品名“ミナミヌマエビ”の一種です)
スジエビとの見分けは、まず「手の長さを見る事」です。
他の見分けポイントとは、見分けポイントが持つ力が圧倒的に違います。
手の長さを見ずに他の見分けポイントをいくら見ても、努力は無に帰します。
見分けが達成されることはないでしょう。


“ミゾレヌマエビ”として売られる為、
“ミゾレヌマエビ”としての知名度が高いヌマエビ(南部群)。
腰の盛り上がりも大きく、体も透明。
ですが、顔の先端を超えるような長いハサミは持っていません。
ヌマエビ南部群は黒いスジ模様も体に入っています。
参照⇒【
ヌマエビ南部群とミゾレヌマエビの見分け方
これは独特の模様なので、
スジエビと混同する可能性はないでしょう。
この模様のみでも本物のミゾレヌマエビとの見分けも容易。


3.関節が黄色いかどうか

スジエビの仲間は関節が黄色いものが多いです。
手足の曲がる部分が、各節ごとに黄色い点になっています。
これが長めの脚全てにありますから、かなり目立ちます。
中にはオレンジ色と云ってもよいくらい鮮やかな個体群もあります。

スジエビの手足。
関節部分が黄色い場合が多い。

ヌカエビに「関節が黄色い」という印象を持ったことはありません。
そもそも小さくて、手足も細く短いので、まずそう感じる事はないと思います。

参照⇒【スジエビの長いハサミ脚
参照⇒【スジエビの指節


4.「目が離れている」は使えない要注意!

スジエビをヌマエビ類から見分ける方法としてよく使われている
「目が離れていたらスジエビ」という一般論(?)があるようですが、
これはスジエビとヌカエビの区別には使うことはできないと思います。
両者とも実によく目が離れているからです。
二種が混同される最も大きな原因が、この見分け方の使用にあるとも云えます。

上の「長いハサミ脚があるかどうか」の項目のヌカエビの写真でも分かると思いますが、
目の部分だけを見たら、どちらのエビなのかの識別は難しいです。
どちらの種類も、長い石突きのマッシュルームのような目で、
体の側面をはるかに越えて飛び出しています。

「見分け方が混同の要因になる」という最悪のパターンを招き易いので、
“目の離れ具合”は使わないほうが賢明です。
他の相違点を打ち消したり、見分けを振り出しに戻すような力は全くありません。
これも離れ具合という“具合”の世界です。
“具合”は見慣れている人にしか使えない世界ですから、
へたに使用しないほうが賢明です。


スジエビのほうが、目も含めた顔のパーツが大きいので、
顔の大きさは印象的です。体付きも上から見ると、かなり逆三角形。
バケツに両種を採って見比べた場合は見分けは容易ですが、
あくまで“具合”の世界。
文字での説明には不適当でしょう。
この二種類は、どちらも「離れ目」傾向が強いエビですので、
「犯人は目が離れていました」では、冤罪は防げません。

※ちなみに、↑この写真の中心で餌をはさんでいる短い脚が、
スジエビの顎脚です。
餌の保持に使う程度で、地面にまで達する長さはありません。

「ひじ」を曲げて餌を触っていますが、
その曲げた脚に粗い毛が生えているのが第一胸脚。
黄色い関節なのが第二胸脚。
↓下のヌカエビのそれとの違いが良く分かると思います。

ヌカエビは同じハサミが4本です。


こちらはヌカエビ。
前から見た、目の出っ張り具合は、スジエビとそう大差ないのが分かると思います。
目は出っ張っていますが、短いハサミが四本です。(青い丸の中にほぼ同じ長さの4本)
真っ先に見るべきは手の長さで、目の離れ具合には意味がありません。
顎脚も太くて長いのが分かると思います。

参照⇒【ヌカエビの離れ眼、外肢、眼上棘
参照⇒【スジエビの離れ眼、長いハサミ脚


5.「腰が曲がっているかどうか」も使えない要注意!

目の離れ具合と同様に、この“腰の曲がり具合”という見分け方も、
スジエビとヌカエビの区別には使えません。
このページ一番上の二枚の写真を比べて頂けると分かると思いますが、
どちらの種類も腰はよく曲がっています。
シルエットだけでは、ほとんど同じ形です。

淡水エビは、全般に「腰が曲がっている」傾向が強い生き物なので、
これも見分け方が混同を生むことになりますから、
最初から使わない方が賢明です。
(曲がりが低いのはヤマト、ミナミ、トゲナシくらいで、むしろ少数派)
他の見分け方と肩を並べるだけの有効性は全く含んでいないのは明瞭です。


ヌカエビは腰の曲がりの強いエビです。
この部分だけでミナミヌマエビと区別できるほど。
仔エビ時代からクネクネとした背腸が特徴です。


同じく、腰がカクカクとよく曲がっているヌマエビ南部群(旧ヌマエビ小卵型)
「腰の曲がりの強さ」はスジエビだけが持つ特徴ではありません。
さらにこのエビの場合、体も透明で体側にはスジもあります。
「腰が出っ張っていて」「体が透明で」「黒いスジがある」という、
スジエビとの共通点が全て揃ってしまうエビ。(目も出ています)
ただ、鼻先を越えて前に突き出す長いハサミ脚はありません。
ハサミ脚の長さをまず見れば、混同されるはずのない種類です。
参照⇒【ヌマエビ南部群
販売名“ミゾレヌマエビ”のヌマエビ南部群は、“キャメルシュリンプ”の別名も持つほど
腰の曲がりが目立つ種類。おそらくcamel = ラクダの意。


ヌマエビ南部群と混同されている本物のミゾレヌマエビも
当然のように、よくスジエビと間違われています。
透明で、目も飛び出していて、腰も盛り上がり、くの字に曲がっているエビです。
模様が強く出ている時には胸の横に
「逆さハの字」に似た模様もあります。
ですが、手は長くありません。
これもヌマエビ類ですから、長いハサミ脚はないのです。
この一点のみで、テナガエビ科ではない事が分かります。
ハサミ脚を最初に見れば、混同に至る恐れは絶対にないはずの種類です。
※“ミゾレヌマエビ”は「買ったらヌマエビ南部群」。
本当のミゾレヌマエビはまず売られていません。
※リュウキュウミゾレヌマエビという赤味の強い個体群が売られることはあるようです。

参照⇒【「スジエビ」の範囲
淡水エビは、腰が曲がっていて透明な種類のエビがほとんどです。
全てのエビが体表面より眼が飛び出しています。
眼が埋もれていたり、窪んでいるエビは居ません。


6.「体が透明かどうか」も使わないほうがいい要注意!

上記にある各写真等で、御解かりになると思いますが、
淡水エビは透明感の高い生き物です。
特にミゾレヌマエビの若い個体とオス、ヌマエビ南部群、ヌカエビ(ヌマエビ北部-中部群)
は透明感が高い種類です。
これら3種は腰の出っ張りも顕著で、スジエビとの混同を受けやすい種類です。
・目が飛び出している⇒全てのエビが飛び出しています。「飛び出し具合」は比較の世界。
・腰が曲がっている⇒ほとんどのエビが腰曲がりです。
・体が透明⇒透明ではない種類を探すほうが難しい。
という訳で、この3点は見分けに用いるだけの意義を持っていません。
むしろ混同するほうが多いのです。
スジエビ(テナガエビ科)との見分けは、何はさて置き「手の長さ」です。
「手の長さ」からスタートして下さい。

・目が離れていて、
・腰が出っ張っていて、
・胸横に黒いスジもある
・透明な体の「ヌカエビ」です。
口元に小さく短いハサミ脚が四本あるだけです。
テナガエビ科が持つ長いハサミ脚はありません。
手=ハサミ脚(正式には第二胸脚)の長さだけを見れば
よく言われている見分けポイントは全て覆ってしまいます。


透明度で言ったら、右に並ぶものが無いくらいに透明なミゾレヌマエビ(本物)の♂。
参照⇒【透明なミゾレヌマエビの♂
腰もよく盛り上がっていて、胸の横には「逆さハの字」に似た模様もあります。
眼も出っ張っていると言えば、当然の如く、出っ張っています。参照⇒【ミゾレヌマエビの顔
ただ、鼻先(正確には第二触角鱗片とか第二触角葉状部と呼ばれる部分の先端)を
大きく越えてしまうような長いハサミ脚は持っていません。
物の表面をつまんでは口に運ぶという行動をせわしく続ける四本の短いハサミ脚のみです。


・目が飛び出していて、
・腰も曲がり、
・体も透明で、
・胸の横に黒いスジがある「テナガエビ」です。
胸の横に「m模様」。腰には黒い帯がありません。
額角も長大です。

淡水エビは、子エビ・若エビ時代は、ほとんどが透明です。
スジエビだけが透明の代表とはとても思えません。
「透明」という特徴は、淡水エビ全ての共通点と考えたほうが妥当です。

参照⇒【「スジエビ」の範囲
スジエビに間違われ易いエビ達の写真集

参照⇒【透明なエビ達
淡水エビは透明度の高い個体が多い生き物です。
透明=スジエビという事はありません。


見分け方のまとめ

1.まず、手が長いか短いかを確認します。
ハサミのついた手が、鼻先よりも長く前に突き出ていればスジエビ。
短い手が口元にあるだけならヌマエビ類。
これだけで、ヌマエビ科か、テナガエビ科かは分かります。
「スジエビはテナガエビの仲間」です。

2.次に、体にスジがあるかどうかを見ます。
体側に黒っぽい太いスジが数本入っていればスジエビ。
(特に頭胸甲の側面の「逆さハの字」と腰の一本)
目立つ太いスジがなければヌカエビ。

3.そして、関節が黄色いかどうかを見ます。
長い手足の節々が黄色ければスジエビ。
1と2で充分ですが、さらに確認の意味でこれを使用します。
(ちなみにテナガエビの子供もオレンジ色)

「目が離れているかどうか」、「腰が曲がっているかどうか」、「体が透明かどうか」などは、
かえって混同の原因になったり、見分けが振り出しに戻ってしまう場合が多いので
スジエビの見分け方としては使わないほうが良いと思います。
これらはエビの共通点・類似点の“具合”の比較であって、相違点・識別点ではありません。
他の相違点を覆せるほどの有効性がないどころか、
混同させる要因にしかなっていない場合がほとんどなのを感じます。

参照⇒【スジエビ 触角
スジエビの触角は三色に色分けされている場合が多いです。
触角の特徴も参考にすると良いかもしれません。(2006/09/14追記
参照⇒【シラガエビ(スジエビの白いヒゲ)
シラガエビという地方名があるようです。

 

追記(2009・09・15)

尻尾の先に四つの斑点がある

見分け箇所として、上から見た場合に有効な特徴です。

採集時にバケツなどで見る場合には大いに有効です。
水槽だと、横から見て平たい尻尾には見にくいです。⇒詳細は【スジエビの尻尾


 

スジエビと間違われるヌマエビ類の御三家

ミゾレヌマエビ(本当のミゾレヌマエビ。“ミゾレヌマエビ”として販売されるのはヌマエビ南部群)
ヌカエビ(ヌマエビ北部-中部群)
ヌマエビ小卵型(ヌマエビ南部群)ミゾレヌマエビとして販売されるのはこのエビ。

スジエビと混同されているのは、まずこの3種のうちのどれか。
どれも腰の曲がりなどがスジエビと共通のシルエット。
ハサミのついた「手」が長いかどうか、から見分けるのが一番です。

 

スジエビと間違われやすいテナガエビの若い個体

・テナガエビ
テナガエビの子供はスジエビとそっくり。
手足の関節も橙色。

見分けは胸横の「m模様」。参照⇒【テナガエビ・若い個体

鰓前棘に要注意!
よく、スジエビとテナガエビの違いとして、
“テナガエビには肝上棘があり、スジエビには肝上棘が無い”
と書かれているのを見掛けますが、
“スジエビには肝上棘の代わりに、すぐそばに鰓前棘が生えている”
ということわり書きが書かれているのは少ないです。
この棘の有無で見分けようとする場合は、
両方の棘の位置を正確に暗記してから挑まないと誤認の嵐になりそうです。
参照⇒【スジエビの鰓前棘
似たような位置に似たような棘が生えています。
上や下から見ただけではほとんど同じ棘でしょう。
(よほど詳しくない限りは見分けに使わないほうが賢明と思います)

※日本の本土に居る代表的な三種類のテナガエビの
特徴や見分け方を作ってみました。
テナガエビの子供はスジエビと混同される事が多いので
見分ける参考にしてみて下さい。

参照⇒【テナガエビの見分け方



100円ルーペ。
エビを飼うのと同時に持っておくと
エビの世界がより身近になります。

エビの各パーツの詳しい説明は、kenken’s Home Page川エビ雑話川エビの体、がオススメです。

エビギャラリーのヌカエビ、スジエビの写真も、ぜひ参考に。

参照⇒【マジックシュリンプ
観賞魚用のスジエビは性格が穏やかな外来種が多い印象です。

参照⇒【スジエビの範囲
誤認されたヌカエビから、巨大なスジエビの降海型まで、
「スジエビ」という言葉に含まれる情報には、
性格も大きさも全く違う多くのエビが含まれている可能性が大きいです。

参照⇒【スジエビとヌカエビ
両種の良く似た写真を並べてみました。比較にどうぞ。

参照⇒【スジエビとヌカエビを背腸の特徴で見分ける
食生活が違うので、腸管の特徴が違います。

 

※この見分け方は、個人的に活用している私見のみです。
ひとつの参考程度に御考え下さい。

2006/08/08


2006・08・14 書き足し
2006・09・14 追記
2006・09・18 写真追加
2006/11/03 書き足し・写真追加
2007/02/17 タイトル変更
2007/03/08 更新
2007/03/30 書き足し、ヌカ正面写真追加
2007/05/28 ミゾレヌマエビの写真追加
2007/06/12 ミゾレヌマエビ♂の写真追加
2007/06/14 透明テナガエビ追加
2008/03/14 見分け写真追加
2008/11/20 ヌカ写真追加
2008/12/18 更新
2009/06/05 更新
2009/09/16 スジエビの尻尾追加
2010/08/23 更新


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