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ヒラテテナガエビ(ヤマトテナガエビ)の
縞々シャツ



水槽の水草の茂みから、しましまシャツを着たダンディーなエビが現れました。
琉球列島周辺にはツブテナガエビというシマシマエビが生息する様ですが、
引けを取らない(?)、なかなかな着こなしです。
ツブテナガエビ【エビ図鑑】
http://homepage1.nifty.com/gebara/ebizukan/tsubutenaga.html
さすがに敵いませんね。
それにしても、姿かたちが良く似ています。かなり近縁な感じを持ちます。
アルコール瓶の色抜け標本になってしまったら“酷似していて見分けは困難”になりそうです。
世界中の淡水エビを相手にしている研究だとたいへんそうです。


こんな模様を持つ近縁の種類は、本州あたりには居ないのではないかと思います。
他のテナガエビ科と特に混同を考える必要が無いので楽です。
良く見ると黒い縞の間に白い縞があることが分かります。
エビの色素は黒と白が仲が悪く、互いを避けて配置されますが、
これも同じような傾向に思えます。
しましまの上に小さく「N」が書いてありますが、これは個体差かもしれません。


小さな時は、もっと透明で、平行線も薄いです。
そして大きくなると、平行線の間に縦線が入り、迷路のような模様、あるいは虫食い模様になって行きます。
最終的には、虫食い模様も埋まって、ほぼ真っ茶色に近くなる様です。
このシマシマ模様はヒラテテナガエビの若い一時期の特徴ということになります。
つまり、ヒラテテナガエビは大きくなるにつれて模様が変わって行きます。
変わって行く過程は同一の方向に向かっているだけですが、
途中の子エビ・若エビ・成エビをそれぞれ別に見たら、別種に思えてしまうかもしれません。

●幼エビ⇒“m”模様が無い。“凶”模様が無い。透明なだけの横胸。

●子エビ⇒“m”模様が無い。“凶”模様が無い。横胸に薄い三本の平行な横線。

●若エビ⇒“m”模様が無い。“凶”模様が無い。横胸に濃い平行な横線が3〜4本。

●成エビ⇒“m”模様が無い。“凶”模様が無い。横胸が虫食い模様・迷路模様。  

●老エビ⇒“m”模様が無い。“凶”模様が無い。虫食い模様も埋まって、ほぼ真っ茶色に近い印象。


本州周辺に生息するテナガエビ科4種の中で、
このヒラテテナガエビは最も異色な存在に思えます。
幼少期から大人までに模様の変化はありますが、
どの時期も、他のエビと重なる図形になることはないと思います。
淡水エビは、スジがあればスジエビではないですし、⇒【“スジエビ”の範囲
ミゾレ模様があればミゾレヌマエビではないですから、⇒【淡水エビの白点模様(みぞれ模様)
ある程度の慣れは要求されますが、
種類自体が少ないので、一定以上に見慣れれば、
よほどの透明個体でもない限りは、“見た目”で区別が付くと思います。
参照⇒【透明なエビ達
種類が分からない完全無模様・完全透明という個体には出会えていません。
淡水エビ界にはびこる「模様は使えない・参考にならない」は言葉の意味の誤解から生まれた「因習」であり、
生きたエビで本当に模様が使えなくて参考にならない個体がいたら、それはむしろ貴重だと思います。
見つけられたら、ちょっと嬉しいかもしれません。(稚エビ・仔エビでなく)。
本州近辺の淡水エビは多くてもわずか10種類前後。消去法でも簡単に種類が特定できてしまう数です。

他のテナガエビ科と模様を比較
ヒラテテナガエビの若エビの模様は、同程度の大きさの他のテナガエビ達と、
特徴が重なる部分はほとんど無いのではないかと思います


「逆さハの字」あるいは漢字の「凶」のような模様のスジエビ。参照⇒【スジエビの模様


太い「川」のような模様のミナミテナガエビ。
文字の周囲が抜けていて模様がクッキリ。
少し大きくなると「m」という文字そのものになります。参照⇒【ミナミテナガエビの模様
模様はマテナガと似ていますから、指節の短さをチェックすればOKです。
脚の爪を見れば一瞬で分かります。⇒【ミナミテナガエビの指節


崩し字の「m」模様のテナガエビ。
個体差が大きく、、「m」とは言い難い模様を持つ場合も多いですが、
このあたりは、人間の筆跡やサインと一緒。
ミナミテナガエビと思うようなきっちりした「m」だったり、
見様によっては「m」に見えなくもないといった場合まであります。
平均的な個体がこんな↑模様。参照⇒【テナガエビのm模様いろいろ】これらは個体ごとの個性として楽しめます。
この個体は額角が短め。額角は意外なほど個体差があります。
模様の似ているミナミテナガエビとは、指節の長さを確認すれば、より簡単に見分けられます。⇒【テナガエビの指節


どの種類とも酷似しておらず、見分けは簡単なヒラテテナガエビ。
模様は大いに参考になりますし、額角など見なくても種類は分かります。
琉球列島産を除いたテナガエビ科4種類は、模様を見るだけでも、ほぼ特定できると思います。
胸の横の模様は、気軽に使える識別箇所です。
淡水エビ界で常識として長い歴史を持っていると思われる「模様は種類の識別の参考にならない・使えない」は、
真っ白なアルコール浸け標本や模様の特徴の記載がない原記載論文等を基準とした分類研究での話。
生きたエビに関してまで「使えない」として初心者に教え諭し、自らも一切見ずに種類を間違えるといった例が多いですが、
一度、立ち止まって考え直してみる価値は充分にあります。(むしろ過去の膨大な損失が恐ろしいので見ないほうが幸せ?)
生きたエビの場合は、臆する事なく模様の違いを使って、どんどん見分けたら良いと思います。
琉球列島産や世界中のテナガエビを相手にしていない限りは、まず大丈夫だと思います。
どうあがいても,、まず4種類しか居ないと思います。(釣り餌出身などの外来個体を除き)
※コンジンテナガエビが死滅回遊で本州でも生息している可能性はあるようです。
4種類以外に出会えたら相当にラッキーだと思います。

 

おすすめリンク

番匠おさかな館の図鑑・エビ
http://rs-yayoi.com/osakanakan/zukan/shrimpcrub/shrimptop.htm
汽水産や海水産のテナガエビの近縁種はこちらで調べると良いと思います。
ユビナガスジエビはテナガエビにそっくりです。模様の違いなどを確認すると良いと思います。

琉球淡水エビ
http://www.h2.dion.ne.jp/~karo/
琉球列島産のテナガエビの仲間がたくさん載っています。
鹿児島以南の場合は、4種類というわけにはいきません。
コンジンテナガエビが本州で発見されることもあるようです。
黒潮にゾエアが運ばれて川で大きくなることがまれにあるようなので、
4種類以外なら、可能性がありそうです。

 

2009/06/27


2009/07/02 更新


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