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ミナミヌマエビ・ギャラリー08
黒色個体



ミナミヌマエビの♀の成熟個体には、背中を縦走する枯草色の線と、
黒味を帯びる
体色が出てくるものですが、
魚との混泳水槽では、この傾向がより顕著になります。
エビ類だけの水槽では、このような「黒」と云っても良いような濃い色にはなっていません。

エビ水槽で30mmに達したミナミの♀。
魚が居ない水槽では大きくなって“ゴールデン・バック”には成っても、
側面の体色は黒くは成らなかった。


オスのミナミヌマエビには、あまり模様の多い個体は見ませんでしたが、
この魚との混泳水槽に居る♂ミナミには、複雑な虎模様がハッキリ出ています。
ミナミヌマエビの旺盛な繁殖力は、魚からの捕食を上回る場合がほとんどですが、
その生存を可能にする条件の大部分は「水草の量」。
魚が泳ぎ難いくらいに目の細かい水草が茂っていると爆発的に殖え、
ほとんど取り去ると、簡単に減っていきます。(この水槽ではマツモの量で左右する)
水草が多かった状態では薄茶色の普通色も大量に居ました。
現在のほとんど水草のない状態で残った個体には、普通色は居らず、
黒色ゴールデン・バックか虎模様の個体のみ。
そうなると、水草の量+この模様も生存に関係しそう。
魚が嫌がる警戒色なのか、単純に迷彩効果の保護色なのか・・・・・。
食欲を失わせるような効果があるのは間違いなさそう。


同じく混泳水槽に居る若い♀。虎模様と無数の白点がびっしり。
薄茶色の透明な普通色の個体だけが食われて、
模様の多い個体だけが生き残ったのか、
あるいは、元々透明だった個体が、警戒と緊張にさらされ続けた揚げ句、
そのストレスが作用して、このような模様になっていったのか・・・
成熟サイズの♀個体を、魚のたくさん居る水槽に入れたら、
案外、ブラックミナミが大量に作れるのかも。

2005・05・26 


オイカワで真っ黒 (追記2006・04・18)

その後、別の小型水槽で、魚と混泳させて黒化を促す実験をしてみました。
しかし、使った魚種がピグミーグラミーとスカーレットジェムという小型魚だったので、
結果は今一つでした。【
ミナミ雌の最終形態
最も大きな個体は、かなり黒化しましたが、その他の個体は、薄黒くなる程度でした。
現在も、巨大な雌は数カ所の水槽に居ますが、
個体の大きさだけが、黒化に繋がることはなさそうです。
3cm近い大きな個体でも、エビだけであれば透明に近い薄茶色のままです。

そして今回、この60cm混泳水槽で、思いがけなく沢山の黒化個体を見ることが出来ました。
この水槽は、水草にカージナルテトラ、コリドラスなどが泳ぐ、
ごくごくありふれた平和的な水槽です。(
5年前から生きているヤマトヌマエビも一匹健在)
ミナミヌマエビ(シナヌマエビ類の雑種)も増減を繰り返しています。
ここに、採集したものの、他の水槽では食べられてしまいそうなオイカワの幼魚を二匹、一時的に入れました。
大きさはカージナルテトラのLサイズ以下でした。
敵の居ないオイカワはどんどん大きくなり、テトラ類は水草の陰に隠れ、
ミナミの稚エビはほとんど見なくなる状態になりました。
オイカワの投入当時はそれほど目立つ黒い個体は居ませんでした。
それが、オイカワが育ち、身に危険を感じるほどになってくると変化が表れてきました。
素早い動きで縦横無尽に泳ぎ回る6cm前後のコンビに絶えず脅かされたミナミ達の色は
見事に真っ黒になりました。
上記にあるように、これまでもここの水槽では黒化する個体は常時居ましたが、
今回は、軽く見回した程度でも、楽に4、5匹は真っ黒個体が確認できるほどの率になりました。
しかも、その黒の濃さが、今まで見たことのない“漆黒”といって良いほどの濃さです。
紫色を帯びた“からすの濡れ羽色”なのです。

“オイカワ効果”恐るべし。腹側まで余すことなく真っ黒になったメス達。(背中は枯草色)
ピグミーグラミー程度では、なめられていたようです。
背景がマツモの緑なのに、この色をキープしている事から、
黒化に関しては、周囲の色などへの“保護色”という考えは否定して良いのかも。

ちなみに、雄は虎模様程度のままでした。
抱卵すると身軽ではなくなる雌のみに起こる変化だと思います。

魚が食べたくない、あるいは近寄りたくない「何か」に擬態しているものと思うのですが、
黒くて黄色系の縞のあるもので、魚が嫌がるものはゲンゴロウくらいしか思い浮かびません。
http://homepage1.nifty.com/keichin/tadagen.htm
こんな模様に反射的に拒否反応が出るなら、有効な技かも。

あるいは、蛭(ひる)の一種にそんな縦縞模様の種類があったような。
http://w-mizu.nies.go.jp/suisei/chosa/bio/23/230.html
残念ながら「ヒル図鑑」といったものは無さそう。
http://www.gokuakuya-kouji.net/gallery/data/hiru2.htm
わざわざ近付きたくはないでしょう。(海産のヒル)
http://www.city.chitose.hokkaido.jp/tourist/salmon/samon/0105P4.html
黒くて黄色い縞の種類



オイカワ成魚。ヤマベ、ハエとも云う。(左手前はウグイ。ハヤとも云う)
黒化個体をここに投げ込んで食べられなかったら
黒化の有効性が確かめられそうですが、
これだけ大きいと、ためらいなく食べられてしまいそう。(やめときます(^^;)


魚が消えると黒色も消える(追記2006・05・14)

じつは前述の追加記事は、オイカワの行動が元気過ぎて、他の生き物への影響が大きくなりすぎたため、
そのオイカワを取り出す日の状況を書いたものなのですが、
オイカワを取り出してから一週間後、水槽を見ると、
なんと、あれだけたくさん目立っていた黒い雌達がまったく見当たらなくなってしまいました。
特に死ぬような変化は与えていませんし、死骸を発見するような事もありません。
5匹も6匹も一斉に黒い雌だけが死んでしまう筈もありませんし、
しかも捕食しそうなオイカワが居なくなっている後な訳ですから、おかしな話です。

あらためてよーく見てみると、マツモの中や、流木の上、富士砂の上に、
ごく普通の無色に近い“ミナミヌマエビ”の雌達が普通に歩いていました。
オイカワが居ない分、非常にのん気です。
何の事はない、単純に黒い色が褪せ、前の状態に戻っただけなのでした。

色素胞から色を伸ばして、からだ全体を黒く包み込むには大きなエネルギーを消費するのでしょう。
「やれやれ、敵はいなくなったわ」と、みんな一斉にそんな努力を終了させてしまっていたのでした。

人間の目からしたら、今の無色に近い状態のほうがはるかに保護色だと思いますが、
魚の目からすれば、あの真っ黒で背中黄色線の色彩のほうが食欲が湧かないようで、
ミナミのママさん達は懸命にあの色を維持していました。
迷彩効果というよりは、「何かへの擬態」という印象が、ますます強くなった、
そんな色彩変化でした。
少なくとも、黒化には「生命を脅かすような大きさの魚の有無」が大きな影響を与えているのは
間違いなさそうです。

オイカワが居る間は、こんな色彩の“ミナミ”が至る所にとまっていたものでしたが。

※ここで取り上げている“ミナミ”は、観賞魚店での購入もの(シナヌマエビ類のミックス)の子孫です。⇒【本当にミナミヌマエビ?


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