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ミナミテナガエビの模様(成エビ)
若い成エビ♂の模様



8cmに満たない程度の若い♂。
前回の記事よりも、ずいぶんと大きくなり、模様も濃くなっています。
一般的スジエビサイズ以下の大きさで採集してきてから、ほぼ一年です。
指節(脚の爪)の短さと、m模様の濃さ・太さで、まずミナミテナガに間違いないと思います(消去法)。


アルファベットの「m」に喩えられる胸の横の模様。
周囲がぐるりと抜けて、より太くはっきり見えてきました。


同じ個体ですが、左右で模様が違います。
「m」の真ん中の一本の先が4つに割れています。
恐竜の足跡のような形。


サカマキガイ(だったと思いました)をお食事中です。
茶色い珪藻がガラスを覆っていたので、非常食兼ガラス磨き係に投入しましたが、
少し後に見てみると、抱えて食べていました。
小さな頃にも、貝に興味を示して食べようとしていた事がありましたが、⇒こちら
この大きさだと、貝の吸着力など全く問題にしないようです。
貝が小さければ、そのままバリバリ。
ミナミテナガエビは、貝の剥がし方に慣れている印象が有ります。
手脚で探って歩き、貝に触れた瞬間、一瞬で剥がします。
スネール退治をしたことがある方は御存知と思いますが、
退治に手間取るほど、貝はギュッと身を縮めて吸着を増します。
こうなるとなかなか取れません。
油断して歩いている時はコロンと取れます。
これを本能的に知っている印象です。
一瞬の早業で、剥がした瞬間には口にくわえています。
スネール退治には有効だと思いますが、食べられそうなあらゆる生き物を退治してしまうと思います。
(右側の奥に見えている脚の爪の短さがよく分かります。ミナミテナガの顕著な特徴)


四つほど入れましたが、他のも既にカラでした。
この写真でも解かり易いですが、
指節(脚の爪)が非常に短いです。
この短さと、m模様の太さでテナガエビとは容易に区別できます。
テナガエビとミナミテナガエビの識別には、よく、
1.ハサミ脚のハサミの間に毛が密生しているかいないか
2.額角の違い
3.腕節や掌節などの比率のちがい
などが揚げられている事が多いですが、
ハサミ脚の毛は、大型の雄のみですし、
額角は似ている場合も多くて、参考にできるほどの違いを見出せるかが難しいですし、
腕の各節の長さの比較はもっと難しそうです。
個人的には「模様」と「指節」。これだけでほぼ完了なのではないかと思います。
この二点を確認すれば、不可能とか酷似といった言葉とは縁がない印象です。
眼の感じなどをプラスすると、より鮮明になるかもしれません(蛇足になるかもしれませんが)。⇒【テナガエビの眼
淡水エビには色柄学が無く、形態学だけで語られるので、
全ての種類が「酷似・不可能・識別困難」になってしまうようです。

これらは「白化死骸比較学」といった感じが分かり易い印象の学問に思えます。
日本の本土産を相手に「彩色生体比較学」といった感じにした場合は、どの種にも特に困難は感じない事になります。
(本来、両方あって初めて一つだと思います。「m模様」+「指節」は両方足したものになり、識別は格段に簡単になります。
淡水エビに「模様を見ない・参考にしない」という因習でも、まるで現在まで滞りなく過ぎているかのような印象ですが、
実際には“滞り”が多く存在します。
滞りが無いのと、滞りに気がついていないのは、全く違います。
額角の詳細が見えない小さな全身写真では“滞り”だらけになっていますが、
当事者が最初から気がつく術を捨てていますから、自身でも気がつきようが無いだけです。
「模様は見ない!参考にしない!」と決めている以上は、この手のエビの全身画像は永久に滞り続ける事になると思いますので、
情報の受け手側にも、それを見抜ける知識が大いに必要という事になりますし、成り続けると思います)
参照⇒テナガエビの指節
ミナミテナガエビとよく似ているテナガエビ。
テナガエビは指節が長い(長過ぎる気がする)ので、見分けは容易です。
同じく爪が短いヒラテテナガエビとは、模様の違いで見分けは容易です。
参照⇒スジエビの指節
ミナミテナガエビの幼エビは、一般的な【スジエビの範囲】に含まれる事が多いと思います。
スジエビの爪は長過ぎず短過ぎずです。
ミナミテナガエビに比べればやや長いかもしれません。
全国規模の陸封種なので、指節の長さも色々とあって不思議はないですが。


貝を食べ切っても、まだおなかが空いている様で、ボルビディスの根っこをつまみはじめました。
静止画では伝わりませんが、真ん中の黒い胃の部分がうねうねと動いています。
ヒラテテナガエビほどではないですが、草食的な餌も若干はつまむようです。
テナガエビ科は「肉食性の強い雑食」と書かれますが、
まさにその通りという印象です。
肉があれば肉しか食べませんが、草しかなければ草も食べます。
スジエビもテナガエビもヒラテテナガエビも皆一緒です。
このあたり、ザリガニも同じですし、各種カニも似たようなものですし、
ヌマエビ類も実は「草食性の強い雑食」ではなく、肉系が好きなのは明らかです。
どれも“仕方なく”草やコケを食べるだけで、本当はお肉大好き。

参照⇒ミナミテナガエビの若エビ
若い時期の模様。そう大きな違いはありません。

参照⇒【ミナミテナガエビ♀

 

●テナガエビ3種とスジエビの見分け方はこちら⇒【テナガエビの見分け方

 

おすすめリンク

ミナミテナガエビ【KENKEN’S HP
http://www.geocities.co.jp/Outdoors/7766/kawaebi/ebisyurui/M.formosense.html
形態や生態などがたいへん詳しく書かれています。
個人の感じた情報として、しっかりとした主語を持った情報が嬉しいサイトです。
ページの更新はされていませんが、
技量に合わせて、読み飛ばしていた部分が後々解かったりと、
何度でも読み返して参考になる、色褪せない魅力があります。
多くの生きたエビに直に触れている方々の情報には妙な虚勢や因習じみたものがないので安心。 

琉球淡水エビ
http://www.h2.dion.ne.jp/~karo/
琉球列島産の珍しいテナガエビがいっぱい載っています。
m模様を持つ種類が多いのが解かります。

番匠おさかな館の図鑑・エビ
http://rs-yayoi.com/osakanakan/zukan/shrimpcrub/shrimptop.htm
額角に頓着せず、「見た目」に重点を置いた掲載方式です。(水族館という視点ならでは)
淡水エビの「種類の違い」というものが、より身近に感じられる事、間違いなしです。
掲載されている写真と種名も一致していると思います。
(淡水エビは一致していない情報が多いジャンルなので、極めて希少価値が高いです。ここは安心してお薦めできます)
「淡水エビは額角でしか見分けられない」なんてことはありません。
むしろ、模様を一切見ないために種名を間違えている事が非常に多いです。
本土産は種類も10種類程度しかありませんから、「名もないエビ」が存在する余地はないでしょう。
こちらのサイトを参考にして、臆せずに、どんどん見分けると良いと思います。

 

2009/08/09


参照⇒ミナミテナガエビの隠遁の術
ミナミテナガエビを、大きな水草水槽に入れる時は要注意です。
穴を掘ってしまったり、隠れて捕まらなかったりで大変です。
スネール退治には良さそうですが、後々、ミナミテナガ捕獲に難儀しそうです。

参照⇒ミナミテナガエビの採餌行動
餌の探し方一つでも、テナガエビとは違います。
どの行動もアグレッシブです。
このような行動の違いでも、両種の識別は容易です。


 


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