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ミゾレヌマエビ(本物) 
大きな雌と小さな雄



ミゾレヌマエビに、たまに見掛ける面白い光景。
大きな雌に小さな雄が乗っかったままでいます。


雄を乗せている雌は、卵巣(背中の茶色い部分)が発達していて
次の脱皮で必ず産卵することが保証された雌です。
ヌカエビ(ヌマエビ北部-中部群)でも産卵前に
複数の雄が雌にしがみついたまま移動していく行動が見られましたが【参照⇒おんぶするヌカエビ
それと同じ目的と解釈して良さそうです。
雄は「早く脱皮しないかな」と背中の上で結婚の相手になれることを期待している訳です。

ミゾレヌマエビ(本物)の面白いところは、
雌が出すフェロモンの放出時間が極めて短い事。
雄がフェロモンに浮かされて狂喜乱舞する状態(いわゆる“抱卵の舞”)
は非常に激しいものがあり、その中で雄の追尾を振り切って飛び跳ねる雌は
よく観察されますが、
この時点での雌は、すでに一匹の王子様と結婚が済んでいるはずです。
ミゾレヌマエビの雌も他のエビと違わず、浮気性ではなく、
一匹の雄との交接のみでスイッチが切り替わるようです。
市販のミナミヌマエビ(シナヌマエビ類各亜種混合と推定される)やレッドビーシュリンプなどでは、
交接が終了した後もフェロモンの放出が長引き、過剰交接と云えそうな状態に巻き込まれて
死んでしまう雌も数知れないですが、
このミゾレヌマエビに関しては、激しい追尾行動が起こる水槽内でも、死亡事故は一回もありません。
その理由の一つが、あっという間に終わる抱卵の舞いにありそうです。
抱卵の舞に気付いて、随分舞っているなぁ、跳ね回っているなぁ、と心配して数分。
水槽を再び覗くと、そんなことありました?といった平穏の状態に戻っているのです。


体の大きさは違いますが、雄と雌の間に、大きな力関係はありません。
単純に大きいから独占傾向になるだけで、追い払うとか持ち去るとかいう行動は見られません。
ミゾレヌマエビは非常におとなしいエビで、ヌカエビと同様
彼らの辞書に「闘い」とか「争い」という文字は無さそうです。

この短時間で終わってしまう“抱卵の舞”のしくみは
やはり、雌の側のフェロモン放出の早い終息が大きいと思います。
この水槽には、詳細な種類が不明の“タイガーシュリンプ”が同居しています。
雄が数匹居るようですが、
このタイガーシュリンプの雄達が、ミゾレヌマエビの雌の脱皮で抱卵の舞いを舞うのです。
ミゾレヌマエビの雄達に混ざって必死にミゾレヌマエビの雌を追い、
なんとかしがみ付こうとするのです。
淡水エビに関しては、各種類ごとの別々のフェロモンが存在するとはとても思えない事が多いです。
ロックシュリンプの脱皮でヤマトヌマエビがしがみ付き、
ヤマトヌマエビの脱皮にはシナヌマエビが狂喜乱舞。
ヌカエビの脱皮ではレッドビーシュリンプが駆け回るという始末です。
話ではミゾレヌマエビを集団で抱き殺すミナミヌマエビの雄達の報告もありますし、
ロックシュリンプのフェロモンに完全に参っているレッドビーシュリンプの写真もあります。
参照⇒http://www.geocities.jp/polo6nhs/AZ/EBI9.htmWaterfield

このタイガーシュリンプですが、これはビーシュリンプやミナミヌマエビなどの
大卵型カワリヌマエビ属に含まれるエビだと思います。
先ほど述べたように、彼らの抱卵の舞いはなかなか収まらないものです。
ですから、一度始まったら雄は長い間泳ぎ続けるものなのです。
しかし、そんな彼らも、ミゾレヌマエビの雌の脱皮では、あっという間に終息します。
ミゾレヌマエビの雄達と一緒に極めて短い時間で平常に戻っています。

この雌のフェロモン放出時間は、単純に脱皮後数分限定と決まっているのか、
あるいは交接が終了したら、自らストップできるのかが謎です。
雄と雌を仕切りで分けて飼い、交接が完了できない状態にすると
長い間、仕切りの向こうで雄が舞い続けるのかもしれません。

2007/06/04


2007・06・24 追加情報

ガラスの側面に、オス達に囲まれているメスを発見。
(実際には写真左側が上になります)
体の一番大きなオスが雌の上に乗っています。
テナガエビやロックシュリンプだと、ここで雄同士の闘争が始まり、
巨大な雄が脱皮前の雌を独占する事になると思います。
独占する為の武器であるハサミ脚や第三胸脚が大きく発達しているのはその為です。
雌を力で独占しようとする方向へ進んだ種類の生物の雄達は
巨大化と武器所有へと行き着きます。
しかし、それとは別方向へ進んだのがこのミゾレヌマエビのようなエビ達。
「最初に交接する一匹」を目指しているのみです。
他の雄には全く興味がありません。
神経は雌の脱皮の瞬間に集中するのみです。

しかし、今回の観察ではそれも当てはまらない不思議なものになりました。

雌は脱皮前からすでに雄を呼び寄せるフェロモンを出している事は
間違いないと思います。
しかし、呼び寄せた後、そのまま雄達の前で脱皮をするかというと、違います。
突然、雄達を振り払い、別の場所へジャンプして移動。
雄が居ない場所で脱皮を開始します。
雌を見失い四散した雄達は大騒ぎで泳ぎ回ります。
そして脱皮を終えた雌を見つける度に跳び付こうとしますが
ことごとくかわされていました。
「最初の雄とのみ交尾」という個人的な常識に当てはまらない感じです。

ヌカエビの場合、やはり雄を集め、背中に乗せるのは一緒。
そして脱皮直前に振り払って別の場所で脱皮するのも一緒ですが、
最初に辿り着いた雄と確実に交接を行ないました。

雄のアタックをことごとくかわす雌のミゾレヌマエビ。
脱皮直後な為、やわらかい触角や触角鱗片が垂れ下がっています。
見ている間には交接は確認できませんでした。

しかし、ミゾレヌマエビに関しては、
結局、交接の確認は出来ませんでした。
この他にも脱皮前後の状況を観察しましたが、
その時も交接は観察されませんでした。
卵巣がまだ未発達だったなど、別の原因があるのかもしれませんが、
卵巣が小さかった為の少量の産卵をしているような抱卵雌も見掛けるので、
どこかで交接は完了されているはずなのですが、不思議な部分です。
しかも、抱卵の舞の終息は、他の事例と同様に早めなのです。
まだ雄達が泳いでいる状態でも、当の雌自身への興味は引いてしまっています。
これらの事柄をどう繋ぎ合せたらいいのか、悩み所です。

雌側のOKサインがいつ出るのか・・・・・
雄は雌の脱皮直後に最も興奮が高いですから、
脱皮した雌が捕縛を受ければそのまま交接してしまうのか・・・・・

あるいは雌の気紛れに最後まで付き合った雄と
物陰で、こっそり交接するとしたら、
雌側からの選択が行なわれていて、またそれはそれで面白いのですが。

 

参照リンク

◆雌雄
http://www.geocities.co.jp/AnimalPark/2778/ebizubuzubu.htm
雌雄の大きさの違いが良く分かります。

◆おんぶする雌雄
http://www.mtt.sytes.net/yuki/osakanasan/nittan/nittan.htm

◆ミゾレヌマエビ
http://www.interq.or.jp/jazz/rhinoda/aqua/ebi2.html
http://www.interq.or.jp/jazz/rhinoda/diary/06/o0605-3.html#23
脱皮前の雌に乗っている雄は観察される事が多いようです。

 

◆ミゾレヌマエビの詳しい解説kenken's HP
http://www.geocities.co.jp/Outdoors/7766/kawaebi/ebisyurui/C.leucosticta.html

◆ヌマエビ属とヒメヌマエビ属の区別点
http://www.interq.or.jp/jazz/rhinoda/aqua/ebi5.html

◆額角の様子
http://homepage1.nifty.com/gebara/ebizukan/mizorenuma.html

◆キャメルシュリンプ
http://www2u.biglobe.ne.jp/~niwasaki/department/kyamerusyurinnpu.htm
ミゾレヌマエビとして売られるのはヌマエビ南部群(別名キャメルシュリンプ)
<参考画像>の先に正式名称

◆市販のミゾレヌマエビはヌマエビ南部群
http://www.interq.or.jp/jazz/rhinoda/aqua/ebi2.html
商品名“ミゾレヌマエビ”はヌマエビ南部群である事が眼上棘で確認されています。

◆対馬のヌマエビ南部群
http://homepage3.nifty.com/sencyo/ebi/T1zoea.html
こちらも眼上棘で確認済み

 

 


2007・06・24 追加情報

ミゾレヌマエビの模様の特徴はこちら⇒【ミゾレヌマエビの模様の特徴2007・11・06追記


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