前回は、孵化した日が明確ではなく、
発見後の三日間程度の写真も含まれていますが、
今回は、確実に孵化当日のゾエアです。
相当に大きなゾエアですので、水槽を覗きさえすれば、
これを見逃す事はありません。
尾の先端は尾扇にはなっていません。
棘が数本生えているのが分かります。
手足の発達も未熟です。
孵化当日でアオミドロに着底している時が半分、
泳いでいる時が半分といった感じです。
尾の先が棘状である事が明確である以外には、
前回のものと大きな違いはありません。
比較的自由に泳ぐ事が出来ています。
どういう構造で泳いでいるのかをルーペで追ってみるのですが、
なかなか速い泳ぎで、着いて行くのが難しいです。
「浮遊ゾエア」という感覚はありません。
「遊泳ゾエア」です。
ヒーターのコードに降りているゾエア。
孵化当日ですが、アオミドロ以外の表面にも着底出来ています。
この翌日には、もうアオミドロの表面を齧りながら後ずさりして行くという
例の独特な行動が見られました。
アオミドロのあちこちに小さな細いウンチを引っ掛けていきます。
しかし、前回のゾエア達の生存率は極めて低いものでした。
1cm弱に成長した仔エビが一匹程度見られるだけです。
暑い日が続き、同水槽内のミゾレヌマエビが少々白濁し、
同じく同居のレッドビーシュリンプが数匹死亡してしまう時と重なってしまいました。
茶ゴケの発生もない状態です。
大食漢のミゾレヌマエビが多く居る為、ゾエアへの餌不足も充分に考えられます。
なんと言ってもケンミジンコが居ないというのが大きいかもしれません。
比較的長く維持している水槽なので、ケンミジンコの発生があって不思議はないのですが、
見渡した限りでは一匹も居ませんでした。
ゾエアよりも小さい甲殻類が育っていない事から、
育成に適した環境が整っていない事が疑われます。
ゾエアが大きいという事と、着底しているという事、
そして生息地が下流域であった事から、少々楽観し過ぎた嫌いがあります。
大きなゾエアだから体力もあって剛健だ、という事ではなさそうです。
2007/07/08 岩
(追記・2007・10・06)
その後のゾエアの状態ですが、わずか二匹のみしか残らないという惨憺たる結果でした。
ヌカエビの繁殖の成功には「ほぼ無給餌」という環境が
一番良かった証明になってしまいました。
最下流部の出身であることから、水の汚れ、高温に対する耐性は強いのではないかという楽観。
そして留まる所を知らない同居ミゾレヌマエビの食欲に押されてついつい給餌量が多くなっていましたが
それらが祟ってしまったように思います。
普通に“ヌカエビ”をしている若エビです。
同居のミゾレヌマエビの飼育感想は「暑さに強め」でした。
このヌカエビと同居している水槽では、やや濾過の状態が悪く、
白濁する大型個体がありましたが、
最下流部に住むエビだけはあるのか、
夏の日光が当たる他の水槽でもほとんど数を減らしませんでした。
それに対して、ヌカエビのほうは、普通にヌカエビとしての耐性で、
下流域に棲んでいたからといって、特に暑さに起因すると思われる
諸々の環境悪化に対して強いものは持っていませんでした。
孵化ゾエアが大きかった以外は
普通にヌカエビ(ヌマエビ北部-中部群)でした。
若エビは元気ですが、
この数からの再繁殖は少々難しいかもしれません。
参照リンク
◆なおとくんの自由研究
http://blogs.yahoo.co.jp/hiratamiyama/49541645.html
目が離れた稚ヌカがいっぱい!
かなりゾエア後期で生まれるタイプ。
◆かえるのNGN
http://ngn.cocolog-nifty.com/blog/2006/07/post_46ec.html
ふわふわ〜なゾエアを観察されています。
ひとことで「ヌカエビ」と言っても、ゾエアの大きさは個体群によって大きく違いそう。
◆ヌカエビ集団間の比較
http://www.city.yokohama.jp/me/kankyou/mamoru/kenkyu/pub/pub0148/summary1.html
地理的に近くても、卵径や遺伝子情報に差が見られるようです。
あらゆる生息地に、それぞれの地域変異集団が居そうです。
◆ヌカエビタンク
http://www.geocities.co.jp/AnimalPark/7630/tank/tank8.html
◆額角の比較図
http://www.najomon.com/page_tsunan/tsunan_shizen/shizen_4/03.html
現在では、
ヌマエビ大卵型とヌカエビで一種⇒ヌマエビ北部-中部群
ヌマエビ小卵型で一種⇒ヌマエビ南部群
となっています。
ヌマエビ北部-中部群の中には、
頭の後ろまで棘のあるもの・ないものがいる事になります。
◆ヌマエビ属とヒメヌマエビ属の区別点
http://www.interq.or.jp/jazz/rhinoda/aqua/ebi5.html
脱ぎたての脱皮殻があれば、
死なせずに専門的な同定が可能なようです。(顕微鏡があればですが)
◆ヌカエビ【エビずかん】
http://homepage1.nifty.com/gebara/ebizukan/nukaebi.html
ヌカエビは「ハゲ頭」。眼上棘が見えずともこれで容易。
◆ヌマエビ【エビずかん】
http://homepage1.nifty.com/gebara/ebizukan/numa.html
ここに書いてある分布には悩まされましたが、
“本州中部以南”はヌマエビ南部群(旧ヌマエビ小卵型)の分布。
“北海道を除く”はヌマエビ属全体の分布(旧ヌカエビ+旧ヌマエビ大卵型+旧ヌマエビ小卵型)。
で良さそうです。
現在は北海道にも南部群が移入中とのこと。
◆北海道のヌマエビ南部群
http://www.geocities.jp/polo6nhs/AZ/EBI01.html
完全に定着しているもよう。
ここまで大きな写真でも、眼上棘の確認は困難。
ゾエアの写真の中に、尾扇化を果たした稚エビらしきものが見えます。
ヌマエビ北部-中部群も含まれているのかも。
(ヌカエビも居ますという情報も頂いたことがあります)
※『ヌカエビ』に関しては、遺伝学的な距離によって、
以前の分類が大きく変更されているようです。
ヌカエビを含むヌマエビ属全体が見直され、
・ヌマエビ小卵型⇒ヌマエビ南部群
・ヌマエビ大卵型⇒ヌマエビ北部-中部群
・ヌカエビ⇒ヌマエビ北部-中部群
となり、南部群と北部-中部群は別種とされる方向です。
長く親しんだ名称なので、ヌカエビと呼んでいますが、
ヌカエビは正しくは「ヌマエビ北部-中部群」の一地域個体群となると思います。
参照⇒【ヌマエビ・ヌカエビの新事情】
ヌカエビの詳細は⇒こちら