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ヌカエビのクローズアップ



ヌカエビの名前の由来についてですが、
当然、「糠」というものが関係すると思います。
ぬか漬け、ぬか味噌のヌカです。米を精白する時に出る薄皮ですね。
捕まえる時に糠を撒いて集めたという説があるようですが、
これはやや共感を欠くかなという印象です。
テナガエビを捕る時にも糠を使う漁法があるようで、
このエビに特異な習性でもなさそうです。
エビに限らず、糠に集まる生き物は多そうなので、
それら全てにヌカ虫、ヌカ鳥といった名前が付けられてしまいそうです。

写真では、体表に細かい点が無数にあるのが分かると思いますが、
これがヌカをまぶしたようだから、というのはありそうです。
夜空の満点の星を“糠星”と呼ぶのに近い印象です。
ただこれは拡大した写真だからこそという気もします。
2センチ程度の実物にこの細かい模様を見付けるには相当凝視する必要があります。
昔の人が生活の中で、そこまでじっくり見て、共感していたかは少々疑問です。
体表の模様よりも、単純に“細かいエビ”のほうが共感し易いです。

「糠」には“はかない”といった意味合いもあるようです。
実際、か弱い生き物ですから、食料として採集された場合にも
すぐ死んでしまっているという共感は大きいでしょうから
こんな由来もあって良さそうです。

他に「糠に釘」、「糠喜び」、「糠働き」など、
ヌカは手応えのない物、無駄なものの例えにもよく用いられますから
小さくていくら食べても食べ応えがないエビといった意味はあるかもしれません。
川エビは食と深く結びついていると思うので、
食い応えのない細かいエビといった感覚に最も共感を覚えます。

いずれにしても生活の中であまり重きを置かれた生き物ではなかった感じが浮かびます。
現在でも積極的な飼育の表舞台に登場するようなエビではない部分は共通していて、
このあたりは、昔の人と共感する部分がありそうです。
そう云う意味では、実にぴったりな名前かもしれません。

その御陰?で、首都圏をも含む身近な生き物でありながら、
面白い性質や、まだまだ知られていない生態が残されているとも云えます。


目の離れ具合が非常に強いのが分かります。
よくスジエビをヌマエビ類から見分ける方法として
「目が出っ張っている」という観点で判断するというものを見掛けますが、
このヌカエビには、とても適用できそうにありません。

水道水の汲み置き伝説の「直射日光下に、一日汲み置く」の
前の部分が消えて、一日汲み置けば塩素は抜けるとなってしまっているように、
「比べた場合には、より出っ張っている」という前の部分が消えて
「目が出っ張っている」になってしまったものと思いますが、
こういう弊害が大きいものは積極的に見直して行くべきように思えます。

他にも「スジエビにはハサミが有り、ヌマエビには無い」とされる事もあります。
しかし、ヌマエビ類にも明らかにハサミは有ります.
これもやはり、「長いハサミ脚は無い」という意味で発せられた情報が
「ハサミは無い」という形で伝わってしまっているものと思います。

発信側の意図した意味とは違った形で受け取られたり、
省略されては意味が全く無くなる部分が、バッサリ省略されて伝わったりと、
言葉が伝わっていく事の難しさを感じてしまう部分です。

参照⇒【スジエビとヌカエビの見分け方
スジエビはテナガエビ科ですから、
「科」の違いを先に見たほうが得策です。
(間違えなく伝えようとすると、どんどん長くなるページ(^^;)


肉眼や虫眼鏡では分かりませんでしたが、
このように拡大すると、歩脚の先が面白い形状な事に気が付きました。
円筒形ではなくて、へら状に扁平した爪とその付け根部分です。

付け根部分には細かい毛が密生しているように見えます。
爪の部分にも付け根側に生えていますから、
この爪を曲げて何かをはさむと、しっかり食い込みそうです。
うすく扁平していますから、作用点が小さくなる為、
物に食い込んでしまうくらいの力が集中しそうです。
水草にしっかり体を固定するため、
あるいは小さな滝くらいは楽に遡上するため、
あるいは、オスの場合、産卵脱皮前の雌にしがみ付いて移動する時に落ちないため
などなど、いろいろな効果があると思います。
が、いずれにしても他のエビがこれほど扁平であるとは思えないので、
ちょっと不思議な部分です。

 

2007/04/05 

 

※『ヌカエビ』に関しては、遺伝学的な距離によって、
以前の分類が大きく変更されているようです。
ヌカエビを含むヌマエビ属全体が見直され、
・ヌマエビ小卵型⇒ヌマエビ南部群
・ヌマエビ大卵型⇒ヌマエビ北部-中部群
・ヌカエビ⇒ヌマエビ北部-中部群
となり、南部群と北部-中部群は別種とされる方向です。
長く親しんだ名称なので、ヌカエビと呼んでいますが、
ヌカエビは正しくは「ヌマエビ北部-中部群」の一地域変異となると思います。

参照⇒【ヌマエビ・ヌカエビの新事情

 

ヌカエビの詳細は⇒こちら


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