ヌマエビ属をヒメヌマエビ属と区別するのに使われる
「眼上棘」という棘がありますが、
水槽に居るエビにこれを見付けて、本当に見分けられるのかというと
かなり疑問です。
そもそも、この眼上棘はとても小さいものです。
小さなヌマエビの、小さな目の上の、小さな棘です。
エビの横から見た場合は、エビ自体の体表にある模様などに紛れてしまいますし
前から見ても、前向きに生えている棘は点と化し、発見するのは困難です。
おそらく肉眼では見付からないと思える小ささ。
やや高倍率のルーペがあれば、餌でガラス前面に誘えば
それらしき物が確認できるかも、くらいのものです。
上の写真は偶然に写ったものです。
左奥の目の右側に小さなトゲが見えると思いますが
これがおそらく眼上棘です。
ヌマエビ属(ヌマエビ南部群=旧ヌマエビ小卵型、
ヌマエビ北部-中部群=旧ヌマエビ大卵型および旧ヌカエビ)のみが持つ棘です。
見付けられれば、商品名の“ミゾレヌマエビ(正体はヌマエビ属のヌマエビ南部群)が、
ヒメヌマエビ属の本当のミゾレヌマエビではない事が分かったりするので
便利なものではあると思います。
ただ実際には生えているとしても、見付かる可能性が低いと思うので、
「見付からない=生えていない=ヒメヌマエビ属⇒本物のミゾレヌマエビ」という
間違えたパターンにも成り兼ねない大きな危険性もはらんでいます。
大きな力を持つ見分けポイントですが、その力を確実なものにするには、
それなりの装置が必要になると思います。
背景がたまたま明るいので確認できました。
これだけ大きくすれば見えるというレベルですから
一般的に肉眼で水槽のエビの目の上を見て
見付かるとは思えません。
斜め下から見上げるような感じでルーペを覗くと
比較的見付け易いかもしれません。
それでもこんな小さな棘です。
この写真では良く見えます。
しかし、見える条件というのが決まっていて、
必ず、シンプルな背景であることですね。
当然、向かって右の目の上にもあるはずですが
赤い点々に紛れて見つけられません。
この角度だと、奥の目の付け根やや左にあるのは確認できます。
が、手前は難しいです。
矢印をつけた部分にある茶褐色の斑紋部分が手前の眼上棘と思います。
現在、淡水エビの種類の見分け方として存在するのは「専門家が使う見分け方」です。
大学の研究者や博物館の方々用でしょうか。
同定に間違いの許されない専門職用ですね。
こういう方々は、顕微鏡で見たり、ホルマリン漬けの標本を見るわけです。
動かない状態のエビですから細かい部分が見えるわけですね。
しかし、個人的にはエビを死なせたりダメージを与えたくないので、
この方法は取れません。
水槽の前面に来たエビを凝視して、なんとか見つけようとするのがせいぜいです。
そして、同定には薄桃色に褪色してしまった標本を基準にしますから
色彩や模様の特徴には重きを置き様がないということになるのでしょう。
エビの種類識別に模様が使われることはないと思います。
しかし、一般飼育者としては模様が生き生きと出て、
種を主張しているとしか思えない情報をたっぷり持って生活しているエビが
目の前を歩いているわけで、ここには物足りなさを感じます。
モノクロの線のみで形成された検索表を見ると味気ないのです。
この間を埋めるような、一瞬で分かる簡単な見分け方があれば
「何エビなんだろう」という悩みは軽くなります。
一般エビ飼い向け、エビ好き向け見分け方ですね。
エビの種類の検索表など、万人が持っているはずがありませんしね。
(イイカゲンだと新たな弊害を作る事になりますから難しいですが)
前から見た状態。
額角が広がったちょうど端の部分にあるようです。
個体によって、
棘の形が若干変わります。
比較写真
これはヒメヌマエビ属のミゾレヌマエビ(本物)の目の周辺。
手前の目の周囲、奥の目の後ろ共に、
眼上棘は見当たりません。
参照⇒【本物ミゾレヌマエビの頭部】
追加情報(2007・06・27)
斜め後ろから見た眼上棘。
ハッキリと眼の上に棘があるのが分かります。
大型個体であれば、こんな100円の高倍率ルーペでも充分確認できると思います。
余程ガラス前面スレスレでないと、高倍率なほど焦点が合いませんが、
餌で集めて、あとは運と根気です。
上記の写真の角度と、背景の色の差を参考に、見てみると面白いかもしれません。
(ページ一番上の写真のような情景が整うと見え易いと思います。
頭の上に並ぶ棘とは別に、眼の後ろにピョコンと生えています)
商品名「ミゾレヌマエビ(正体はヌマエビ南部群)」の眼の上にも
確認できるかもしれません。
この棘があれば、間違いなくヌマエビ属。
(「確認できない」と「生えていない」は別次元ですから要注意ですが・・・・・(^^;
模様や額角の形の違いを確認した後で、さらなる確認に使う程度が賢明かも。
「あるに違いない」と思って探すのと、「あるわけない」と思って探すのとでは
結果が違ってしまいます。その程度の大きさです)
●ヌマエビ属・・・・・眼の上に眼上棘が生えている
・ヌマエビ南部群(旧ヌマエビ小卵型。商品名ミゾレヌマエビ、キャメルシュリンプ)
・ヌマエビ北部-中部群(旧ヌカエビ・旧ヌマエビ大卵型)
●ヒメヌマエビ属・・・・・眼の上に眼上棘は無い
・ヒメヌマエビ
・ミゾレヌマエビ(この名で売られるのは「ヌマエビ南部群」)
・ヤマトヌマエビ
・トゲナシヌマエビ
●カワリヌマエビ属・・・・・眼の上に眼上棘は無い
・ミナミヌマエビ(売っているのは外国産近似種と思ったほうが正解)
関連⇒【ヌカエビ(中・上流域産)の眼上棘】
参照リンク
◆市販のミゾレヌマエビはヌマエビ南部群
http://www.interq.or.jp/jazz/rhinoda/aqua/ebi2.html
商品名“ミゾレヌマエビ”はヌマエビ南部群である事が眼上棘で確認されています。
◆対馬のヌマエビ南部群
http://homepage3.nifty.com/sencyo/ebi/T1zoea.html
こちらも眼上棘で確認済み
◆ヌマエビ属とヒメヌマエビ属の区別点
http://www.interq.or.jp/jazz/rhinoda/aqua/ebi5.html
脱ぎたての脱皮殻があれば、
死なせずに専門的な同定が可能なようです。(顕微鏡があれば)
◆ヌカエビ【エビずかん】
http://homepage1.nifty.com/gebara/ebizukan/nukaebi.html
ヌカエビは「ハゲ頭」。眼上棘が見えずともこれで容易。
◆ヌマエビ【エビずかん】
http://homepage1.nifty.com/gebara/ebizukan/numa.html
ここに書いてある分布には悩まされましたが、
本州中部以南はヌマエビ南部群(旧ヌマエビ小卵型)。
“北海道を除く”はヌマエビ属全体の分布。
で良さそうです。
現在は北海道にも南部群が移入中とのこと。
◆北海道のヌマエビ南部群
http://www.geocities.jp/polo6nhs/AZ/EBI01.html
北の大地にも完全に定着しているもよう。
眼上棘の確認も出来たようです。
(ここまで大きな写真でも、眼上棘の確認は困難)。
ゾエアの写真の中に、尾扇化を果たしたような稚エビも見えます。
ヌマエビ北部-中部群も含まれているのかも?
2007/06/01 岩
※『ヌカエビ』に関しては、遺伝学的な距離によって、
以前の分類が大きく変更されているようです。
ヌカエビを含むヌマエビ属全体が見直され、
・ヌマエビ小卵型⇒ヌマエビ南部群
・ヌマエビ大卵型⇒ヌマエビ北部-中部群
・ヌカエビ⇒ヌマエビ北部-中部群
となり、南部群と北部-中部群は別種とされる方向です。
長く親しんだ名称なので、ヌカエビと呼んでいますが、
ヌカエビは正しくは「ヌマエビ北部-中部群」の一地域個体群となると思います。
参照⇒【ヌマエビ・ヌカエビの新事情】
ヌカエビの詳細は⇒こちら
2007/06/27 追加情報