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ヌカエビ
大きな卵



暑い夏が苦手で、例年、夏の死亡率が高いヌカエビですが、
秋になると調子が戻り、餌をよく食べ、産卵も多くなります。
北方系と云われるだけある気がします。
胸の横にブルドーザーのような模様があるのが解かるでしょうか?
ベルを手で摘み上げたようにも見える模様です。
これがあれば、まず間違いなくヌカエビです。
(雄や若エビだと、ちょっと見辛いですが、雌にはくっきりと有ります)


和菓子のような感じ。
発眼しているわけではなく、親の甲羅の模様です。


上手い具合に眼上棘が写っています。
眼上棘は余程運が良くないと見えません。
眼上棘が有って、こんな大きな卵なら間違いなくヌカエビ(旧ヌマエビ大卵型を含む)。
ミナミヌマエビやシナヌマエビには眼上棘は有りません。
大きいと云っても、大卵型というほどではありません。
目玉と比べると小さいです。
この大きさから解かると思いますが、
ヌカエビは中卵型と表現される産卵形態です。
よく、淡水エビは大卵型と小卵型の2つにのみ分類されますが、
これがヌカエビの誤解を招く大きな原因の一つです。(誤解したままのライターが非常に多い)
1.小卵型⇒粒が見えないほどの小さな卵を無数に産み、ゾエアは海に流れ下り、稚エビとなって遡上。
2.中卵型⇒やや大きめの卵を産み、ゾエアはしばらく浮遊生活を送り、親と同じ環境で稚エビとなる。
3.大卵型⇒数えられるほどの大きな卵を少なく産み、孵った時にはすでに稚エビとなっている。
淡水型スジエビや、湖沼・河川静水域テナガエビも中卵型に相当すると思います。
個人的には淡水エビの情報に「中卵型」という発想自体が無いような状況が非常に不思議です。
「淡水エビの産卵形態は3つ」と憶えたほうが明らかに賢明です。


こちらもおいしそう。
「ヌカエビは産卵を終えると死ぬ」と書かれている事がありますが、
これまでの観察では、そういう印象はありません。
卵巣に次々と卵の元が出来て、何度でも産卵を繰り返します。
明確な産卵期も感じません。
それに対して、産卵期を過ぎると極端に衰弱して死ぬのはテナガエビ。
テナガエビは5月頃から食欲と成長が増大し、2週に一度程度といった頻繁な産卵を繰り返します。
「産む事が決まっている」ため、交尾が完了せずとも無精卵を産んでしまい、
9月になると大型(おそらく2歳)の雌達はタイマーが切れたかのように揃って死にました。
体中のエネルギーを全て卵に換えてしまったかのような衰弱死です。
明確な産卵期を持ち、それ以外の時期には産卵しません。
しかし、ヌマエビ類は交尾が完了しなければ卵は次回の脱皮まで持ち越し、
自分自身が死ぬほどにまでは、産卵にエネルギーを注ぐ事はないようです。
テナガエビは鮭に近い劇的な印象を持ちますが、
ヌカエビは地味で堅実な印象です。

 

2008/11/30 


※ヌカエビは大変に誤解や誤認の多いエビです。
産卵形態や、分類、他種との混同などなど、
その情報の御粗末ぶりは痛々しい程です。
こちらにまとめてみました。⇒【ヌカエビ

※ヌカエビに関しては、近年「ヌマエビ北部−中部群」という呼び名が提唱されていますが、
それでなくとも、姿や生態が知られていないヌカエビが、さらに混乱に陥り、
存在すら知られなくなる危険を感じる名前と思います。
全く別種である事が確認されたヌマエビ南部群と、
別種同士が同一の名で呼ばれる違和感も大きいです。
今後も「ヌカエビ」と呼ぶ事のほうが、
ヌカエビの存在を鮮明にし、ヌカエビ自身やヌカエビを知る人、ヌカエビを知ろうとする人に、
大きな助けになると思います。
「ヌカエビはヌカエビであって欲しい」
個人的に強くそう願います。⇒【ヌカエビはヌカエビ


 

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