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シナヌマエビ類には眼上棘が生えていない

市販ミナミヌマエビ(シナヌマエビ類のミックス)と、レッドチェリーシュリンプ、
及び、その雑種に眼上棘を探してみる&他種との比較


“ミナミヌマエビ”として販売されているシナヌマエビ類に眼上棘が無いことを確認してみました。
若干古い写真で、意識して撮った訳ではないので、ピントが甘いですが、
一応、眼上棘が無いことだけは確認できました。

眼上棘は、ヌマエビ科の中でも、ヌマエビ属にしか生えていないそうなので、
カワリヌマエビ属のシナヌマエビ類や本物ミナミヌマエビ、そして、
ヒメヌマエビ属の、ヤマト、ミゾレ、ヒメ、トゲナシとの判別に極めて有効です。
ヌマエビ属・・・・・・・ヌカエビ、ヌマエビ――――――――――→ 眼上棘が有る
ヒメヌマエビ属・・・・ヤマト、ヒメ、トゲナシ、ミゾレ――――――→ 眼上棘が無い
カワリヌマエビ属・・ミナミヌマエビ、外来種シナヌマエビ類――→ 眼上棘が無い
見る場所は、目玉が出ている穴の縁の部分です。
眼の上から後ろにかけて、外周上に棘がないかを見るだけです。(↑の写真の緑色の部分)
種類ごとの眼上棘の有無は
外肢の有無と重なりますので、
比較的見易い外肢の方をチェックすれば出番は薄いのですが、
見て置いて損は有りません。(もちろん顔だけのアップだったら大いに威力を発揮します)
ただ、簡単に見られるものではありません。高倍率の拡大鏡でぎりぎりあるかないか程度。
デジカメのマクロ撮影でうまくピントが合えば写っているかもくらいです。
見付ける事の意義は外肢と一緒ですから、外肢の有無の確認のほうが10倍簡単で便利です。


ちなみにヌマエビ属ヌカエビには、この様に生えています⇒ヌカエビの眼上棘
ヌカエビの場合も、条件が整わないとなかなか御目に掛かれない「小さな存在」です。


これはヒメヌマエビ属ヤマトヌマエビ。
眼柄が極めて短い見事な寄り眼。
眼上棘はありません。
同じくヒメヌマエビ属の本物ミゾレヌマエビにも眼上棘はありません。
“ミゾレヌマエビ”として、よくヌマエビ(南部群)が古くから販売されていますが、
ヌマエビ(南部群)はヌマエビ属なので、眼上棘が生えています。(下記リンク参照)
つまり、古くから販売されている“ミゾレヌマエビ”には眼上棘が生えていたという矛盾が生じていた事になります。


“ミナミヌマエビ”として購入したエビには、様々な額角の長さの個体が入っていました。
世代交代を重ねていたので、原種とは思えないミックス状態です。
背中が白っぽい個体なので、眼上棘があるとするならという位置は、ちょうど黒い部分との接点になります。
これを見た限り、眼の外周の甲羅の縁の部分に棘らしきものは見当たらない印象です。
ヌカエビよりもシナヌマエビ類の岩窟の縁は見易い構造になっています。
ヌカエビの場合は、体の透明具合が災いして手前側の眼窟の縁すら発見出来ない事が多いです。
それに比べると眼窟自体が大きい感じで見易いです。
この写真では、眼の上の額角上にギザギザがたくさん並んでいます。
東北・関東のヌカエビには頭に及ぶほどのギザギザは無く、つるつるハゲ頭です。
頭部にまでこのように棘が並んでいたらヌカエビではないと判断できます。
眼上棘の確認と共に見ておくと良いと思います。
北陸・山陰・愛知・琵琶湖周辺の「ヌマエビ大卵型」と呼ばれていたヌカエビの集団には、
頭に棘を一本程度持つ個体も存在するようです。
それでも、外肢と眼上棘の存在確認と、眼の離れ具合や角度、模様の違いで充分に区別できると思います。


こちらにも眼上棘は無い印象。
これも額角上の棘が眼の後ろにも達しているのが分かります。
そして前側角部が棘状になっています。
この前側角部の棘は、ミナミヌマエビを見分けるのに極めて有効です。
ヌマエビ属・・・・・・・ヌカエビ、ヌマエビ――――――→ 前側角部にトゲが無い
ヒメヌマエビ属・・・・ヤマト、ヒメ、トゲナシ、ミゾレ――→ 前側角部にトゲが無い
カワリヌマエビ属・・ミナミヌマエビ――――――――→ 前側角部にトゲが有る
大型の本物ミゾレヌマエビがよく本物ミナミヌマエビと混同される例がありますが、
この前側角部棘の有無は比較的簡単に見る事が出来るので、確認すれば混同は容易に防げると思います。

前側角部に棘があるかのような本物ミゾレヌマエビ(ヒメヌマエビ属)の写真。
前側角部は真横から見ないと、
このように棘っぽく見える事はエビの常です。
本物ミナミヌマエビと、この本物ミゾレヌマエビは、
・額角が長い
・頭の後ろまでギザギザが並ぶ
・眼上棘がない
・外肢がない
・眼が斜め前を向いている(ミゾレは開きがやや強いですが)
・眼柄が太め
まで一緒ですから、前側角部の棘が要になります。
(模様の特徴は全然ちがいますが)


シナヌマエビ類もカワリヌマエビ属のミナミヌマエビの近縁種ですが、
前側角部棘が生えているものと生えていないものがあるようです。
“アルジーライムシュリンプ”と呼ばれる集団には生えているようです。(この写真の個体にもトゲはある)
“レッドチェリーシュリンプ”と呼ばれる集団には生えていません(痕跡程度の個体は居る)。
このページの個体達は、レッドチェリーと容易に交雑し、前側角部に棘の有る赤い個体が生まれました。


眼窟自体が他の個体よりも丸くて大きい印象。
眼上棘は見当たりません。
眼の生えている穴の周囲がぐるりと円いだけです。
有ると思って見るのと、無いと思って見るのでは結果は違うものですが、
無いという感じのほうがかなり強いです。
ヌカエビは眼柄が細いのに合わせてか、この眼窟の穴自体の直径も小さい印象です。
シナヌマエビ類は、眼の周囲の空間が随分と大きい気がします。
眼柄の太さが太いので必然だとは思いますが、
それ以上に余裕を持っている造りです。


シナヌマエビ類の岩窟の円周は、白い縁になっていて一周がハッキリしています。
この感じは目の周囲を非常に判り易い印象にしてくれています。
つまり、眼の付け根と眼窟周縁をはっきりと分けてくれるので、
確認がし易いのではないかと思います。
ヌカエビの場合、手前側の眼よりも、奥側の眼の上、つまり背景に眼上棘が飛び出る印象であって、
なかなか手前の眼の周囲の解析が難しいのですが、
シナヌマエビは眼の周囲がくるりとしています。
この眼の外周の縁の白さは、見分けに使える箇所かもしれません。


こちらはヌカエビの眼上棘。
ヌカエビの場合も、こんな感じで、後ろ側から見ると良く見えます。
ヌマエビ属を「眼上棘がある」として、識別ポイントに眼上棘が掲げられている事は多いですが、
この小さくて探し辛い眼上棘を見るくらいなら、外肢を探したほうが10倍楽でしょう。
有無が重なっているので代用できます。

眼上棘は無理に探そうとして諦める結果に成りやすいと思うので、外肢を見る事が御薦めです。
「眼上棘は無い」と判断したのに、外肢がひらひらしているという羽目に陥らずに済みます。


本物ミゾレヌマエビ(ヒメヌマエビ属)の眼の周囲。
眼上棘は無く、眼の周りの甲羅の縁周が素直に丸い。
眼の感じは、眼柄が太いことと、やや斜め前向きなので、
シナヌマエビ類とよく似ています。
額角が長いので、本物ミナミヌマエビと混同されることも多いようです。
本物ミナミヌマエビには前側角部棘が有るので、それを見ると確実に識別できます。

ミゾレヌマエビは模様が独特なので、特に見分けに困らないことが多いですが、
ミゾレヌマエビ特有の模様にもかかわらず「ミナミヌマエビ」と題されていた情報も見掛けた事があります。

 


レッドチェリーシュリンプにも眼上棘は無し


レッドチェリーシュリンプとして購入したシナヌマエビ類の赤色変異個体。
ヌカエビの場合だと、この角度から見ると、
眼柄に突き刺さりそうな鋭利な眼上棘が見えるものですが、
それらしいものは見えません。
この種類には前側角部に棘がほとんど見当たらないという特徴があります。
眼上棘も無いですし、前側角部の棘もありません。

前側角部。
痕跡程度に棘が出ている個体もあります。かなり下の部分です。


レッドチェリーもシナヌマエビ類と同様に、大きくなると
背中の白い帯が太くなります。
白くて見にくいですが、棘は見当たりません。
シナヌマエビ、ミナミヌマエビは意外と眼が出っ張っています。
やや斜め前向きに生えていて、眼柄も太いので、
眼の特徴を見れば、ヌカエビやヌマエビ南部群と混同する事はありません。
ヌマエビ属の両種(ヌカ、ヌマ)は真横に眼が出ています。

比較参照・ヌカエビの眼。
眼があまりに真横に出っ張っているので「スジエビだ!」とされてしまうことも多い。
頭を下向きにしている時は、180°以上に広がっている事もあります。
腰も曲がっていて、透明度が高い事もスジエビと共通します。
写真が付属されていないエビ情報は、本当にその種類についてきちんと語られているのか極めて怪しく、
種名だけでの情報交換が出来る段階に達していない世界なのが「淡水エビの世界」という印象です。
肩書き付きの種類間違い情報や出版物もよく見掛ける世界です。
「スジエビ」という文字だけの情報には多くのヌマエビ類が含まれているものと思います。
特にヌカエビは混同が激しい印象です。
スジエビとヌカエビの見分けは本来なら簡単な筈と思います
⇒【スジエビとヌカエビの見分け方
テナガエビ科スジエビにも外肢や眼上棘は無いので、そこを見るとより確実です。
「透明で、腰が曲がっていて、眼が飛び出しているからスジエビ」と言うのは、
ドバトを見て、「黒くて、二本脚で歩いて、翼で空を飛ぶからカラス」と言っているようなものです(^^;。
両種の共通点を使って、その度合いで見分けるのは、かなりキビシイです。


シナヌマエビ類のミックスとレッドチェリーの雑種


“ミナミヌマエビ”として市販されていたエビの子孫達と、レッドチェリーシュリンプを交雑させて得た個体です。
この写真は写りが良いので眼上棘は無いと云えそうです。
眼の周囲はくるりと円いです。
交配したシナヌマエビ類が前側角部棘を持った個体達だった為、
レッドチェリー風で前側角部に棘のある個体になっています。


こちらも綺麗に眼上棘が無いことが分かる写真です。
奥側の目にもそれらしいものは見えません。
眼柄の太い眼が、棘の無い眼窟から、にょっきりと斜め前に生えています。

シナヌマエビ類は、今後の日本の各地で、どんどん発見されていく事になるエビだと思います。
http://www.esj.ne.jp/meeting/abst/56/L1-11.html

関東あたりでは古来からミナミヌマエビが生息しなかった為、
シナヌマエビ類が「ヌカエビ」や「ヌマエビ」として紹介される事が非常に多くなっています。
過去の図鑑には載っていないエビですから、採集地域に生息しているはずの種類の中から、
最も似ている種類として、見当で掲載されているようです。
web上のサイトでも「ヌカエビ」と題されたページ上の多くにシナヌマエビ類の写真が掲載されています。
ミナミヌマエビやシナヌマエビ類には、このように眼上棘も無いですし、外肢もありません。
一方、ヌカエビとヌマエビ(南部群)には必ず眼上棘があり、外肢も生えていますので、
見分ける際には、必ず外肢や眼上棘の有無を確認するようにしたほうが堅実です。
特に外肢は倍率の高いルーペがあればすぐにでも見える程度の大きさがあります。
デジカメでマクロ撮影して見れば確実に見る事が出来ると思います。
額角のギザギザの数を数えるまでの精査は出来なくとも、
外肢の確認くらいは最低でも行なったほうが賢明です。
見つけ易くて、便利で、しかも確実ですから、判別の強い味方になってくれると思います。

比較参照ページ⇒【ヌカエビの眼上棘】【ヌカエビの眼上棘2】【ヌカエビの離れ眼、外肢、眼上棘

ヌカエビ(ヌマエビ北部−中部群)に、シナヌマエビ類との相違点を見てみます。

1.眼が真横に生えている
ヌマエビ属のヌマエビ、ヌカエビは、眼が真横180°に開いています。
ヒメヌマエビ属は斜め前を向いて生えています。(ミゾレはやや開きが強いので注意)
カワリヌマエビ属は斜め前です。
2.眼が離れている(眼柄が長くて細い)
眼が真横である事にプラスして、眼の柄が長いので、目玉が横にかなり飛び出します。
スジエビと間違えられる事が非常に多い部分です。
シナヌマエビ類に比べて柄が細いのも分かります。
3.眼上棘がある
黄色の矢印にあるのが眼上棘。
斑点と同じ色なため、手前側が極めて見にくいです。
奥側で、目に刺さりそうな感じでよく見えます。
4.外肢が生えている
水色の矢印で示したものが外肢。歩脚の付け根から分岐しています。
長さもそこそこあるので、ルーペで発見するのが簡単です。
右下の白い矢印の外肢は、腹節の中から伸びた腹肢(泳ぐ脚)の外肢です。
これは他の属のエビにも生えていますので、要注意です。
5.独特の「波裏富士模様」
胸の横に、富士山と、それに迫る大波のような模様があります。⇒
こちら
写真上で、右側の水色の矢印のすぐ右に富士山。その富士山に右から迫っているのが大波です。
大型の雌には特に顕著。オスや若いエビではやや不鮮明です。
この単純な模様は、エビの体表に発見し易いので重宝です。
6.頭がつるつるハゲ頭(とも限りません)
東北、関東に生息するヌカエビは眼の付け根より前にしか額角上にギザギザがありません。
山陰、北陸、琵琶湖周辺、愛知あたりの「旧ヌマエビ大卵型」には一本程度トゲがある個体も存在するようです。
どちらにしても、シナヌマエビ類に比べて頭のトゲの数が少ないのは間違いなさそうです。

日本産淡水エビの中には情報としての成立が極めて低い2種があります。
このヌカエビと、本当のミゾレヌマエビです。
ヌカエビに関しては、ヌマエビと亜種とされて来た関係で、
「大差ないだろう」「同じようなものだろう」といった軽い扱いを感じます。
その為に、小卵型で降海するであるとか、スジエビだけが眼が出っ張っているエビであるといった、
ヌカエビが知られていないからこその誤まった情報が多いのだと考える事が出来ます。
ヌマエビ(南部群)との取り違えが長く続いて来た
本物のミゾレヌマエビに関しては、
姿すら知られていないといった、存在そのものまでが危ういほどの危機的な情報水準です。
(そのヌマエビ南部群も専門機関に準ずるような世界にまで“ミゾレヌマエビ”として浸食しつつある・・・)
この2種類(3種類)については、エビに携わる方に「新種」だと思って一から学び直してもらう、
それくらいの意識が欲しい部分です。(間違いが占める率が高過ぎる)


根元に近いほど眼柄が細いヌカエビの眼。
眼と額角との間に、下向きに眼上棘が見えます。
左右の眼の付け根の内側すぐの所、
眼柄の付け根に刺さってしまいそうな印象を持つ棘です。
肉眼での確認はまず無理と思います。
牛乳瓶の底のような分厚い拡大鏡で、見えるか見えないか程度。
これをわざわざ探すよりは、外肢を見つけたほうが楽です。
「外肢」と「真横の離れ眼」と「特有の模様」で事足りると思います。

 

参照⇒【シナヌマエビ類とヌカエビの見分け方

参照⇒【“ミナミヌマエビ”とレッドチェリーシュリンプの交雑実験

参照⇒【レッドチェリーシュリンプの頭部

参照⇒【額角より便利な外肢。外肢のチェックは欠かさずに!「謎のヌマエビ」を採ったら必ず確認。

 

おすすめ参照リンク

ヌマエビ(南部群)の眼上棘リンク集
シナヌマエビ類ではないですが、眼上棘が良く写っています。
(シナヌマエビやミナミヌマエビの眼窟周辺を拡大した写真というのは、
「無い」を撮影することになるので、あまり存在しない印象)
専門的な情報の経由からなのか、外肢より眼上棘の方を見ようとする傾向が強い気がします。
しかし、この棘は小さいので、外肢を確認するほうを強力にお薦めしたいところです。
ミナミテナガエビをハサミの毛で確認するより、指節(脚の爪)の長さで簡単に分かるのと同様、
見易い順、使い易い順、便利な順に見たほうがお得です。
(眼上棘を探すのは本当に大変なので、完全に代用できる外肢を見ればOKです。呆れるほど簡単)

http://mushinavi.com/navi-ebi/data-numa_nanbu.htm虫ナビ
眼上棘や外肢が写っている写真があります。
http://www2s.biglobe.ne.jp/~palaemon/paratyac.htmlこうらもん
眼上棘の写真
http://www.geocities.jp/tansuigyo_ofi_kke/KoukakuNumaebi.html日本産淡水魚の世界へようこそ!
眼上棘の写真
http://www.interq.or.jp/jazz/rhinoda/aqua/ebi5.html
ヌマエビ属とヒメヌマエビ属の区別点

 

2009/03/09 


2009/03/15 更新


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