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スジエビのすじ模様



スジエビは正に“筋蝦”で、体中が筋だらけ。(正しくは条蝦、条海老と書くようです)
名前そのもののエビです。
そのスジで胸の横に「逆さハの字」が形作られ、
腰のように見える盛り上がった部分にも長い筋が入ります。
この模様配列は概ね何処のスジエビでも共通のようです。
若干の地域差は見られますが、
別種と思う程の違いは感じません。


胸の横の模様は「逆さハの字」と、その中の模様とで漢字の“凶”に近い印象があります。
やや無理があるかもしれませんが、そんな印象を持って見てみると区別に便利です。
テナガエビとミナミテナガエビでは、この部分に「m模様」があります。
ヒラテテナガエビでは幼少時には斜めの平行の横縞。成体では迷路状の模様があります。
本州付近で見られるテナガエビ科4種類は、この胸横の模様だけでも、
ほとんど区別が付いてしまうので、見分けにたいへん便利な部分です。
釣り餌として輸入されると思われる外来のスジエビには、
この部分の模様が、漁師が魚を突くのに使うモリやヤスの先のような、
3本に分かれた模様の個体が多く含まれているようです。
他にも中腸腺付近が随分と白い個体もあるようです。
これらは淡水での繁殖が容易で、某河川の一部には定着して殖えている印象もあります。


手が長くて、「逆さハの字」であればスジエビでしたが、
最近は、観賞魚店などでも違和感の大きい“スジエビ”が売っています。
“モリ模様”とでも呼べる模様の、スジエビ風のエビや、
なんとなく形がおかしい白っぽい種類などが多い印象。
地域変異を大きく越えている印象の個体たちです。
スジエビも国際化しているのかもしれません。
(釣り餌屋さんの生きたスジエビの中には、以前から妙なエビがいっぱい居ますが)


腰の一番高い部分を上から下まで通る筋。
この長い一本のスジ模様もスジエビの大きな特徴です。
この腰の出っ張った部分には、多くの(というかほとんどの)エビに濃い模様が入りますが、
背中側のみで途切れ、ここまで長く腹へ達する事はありません。
達しているのは、スジエビだけではないかと思います。
シルエットがスジエビと似ているエビは多いですが、
・ヌカエビ
・ミゾレヌマエビ(本物)
・ヌマエビ(ミゾレヌマエビとして有名)
・テナガエビ3種類の仔エビ
どれも、下まで達しません。
ヒラテテナガエビの幼エビは、この腰の模様が濃く、
白と黒のツートンで良く目立ちますが、やはり背中側のみで、
腹の下には達しません。
他の種類でも模様の濃い個性のある個体には、背中側にスジが出ることがありますが、
腹側には達せず、ほとんどの場合は不鮮明です。
特に良く似たテナガエビの仔エビとの見分けにも有効な部分です。⇒【テナガエビの模様
(画面一番左の尻尾の細い部分にも黒い輪になって太い模様があるのも特徴です)


ヒラテテナガエビ(ヤマトテナガエビ)の若エビの腰のすじ。
他に目立つスジ模様はありません。
「m模様」も「逆さハの字」も無いので見分けは容易。


・胸の横に逆さハの字模様(凶模様)。
・腰の一番盛り上がった部分に、背中から腹まで達するスジ。
・額角のギザギザが5個程度と粗く数が少ない。
・脚の関節が黄色。
・ハサミ脚が細くて長い(テナガエビ科の特徴)。
・顎脚は短く、地面に届かない。
・第一触角鞭状部(鼻先の4本のヒゲ)の上2本が白。下2本が黒である場合が多い。
・鰓前棘が生えている(肉眼では無理。肝上棘と混同しかねません)。
・外肢が生えていない。
・眼上棘が生えていない(肉眼では無理)。
などなど、見分けるポイントには事欠きません。

スジエビと混同され易い種類はこちらで⇒【スジエビの離れ眼、長いハサミ脚
「スジエビ」という呼び名には、『透明で腰が曲がって眼の出たエビの総称』といった印象もあります。
似た印象の多くの種類を含んで語られてしまっている感じです。
“透きエビ”ではなく“筋エビ”ですから、まず筋をよく見て、
そして、手の長さを見れば、混同に陥る筈のない種類です。
日本産淡水エビは、どの種類も出目ですし、透明な種類がほとんど。
“海老”というくらいですから、腰も曲がっているのが普通です。
出っ張り具合、透明度、曲がり具合といった“具合”は、
各種を良く知った上での比較の世界であって、特徴ではありません。


あまり知られていない為か、
「眼が出っ張っていて、腰も曲がっているからスジエビ!」なヌカエビ。
同種と見なされている場合も多く、「魚を襲う」という冤罪も多い。
エビの中では最弱のおとなしさです。


これまた、本物の知名度が極端に低いミゾレヌマエビ。
透明で腰が曲がっているエビとしてはスジエビより上です。
“商品名のミゾレヌマエビ”であるヌマエビ南部群とは属違いの別種です。
ヌマエビ南部群とスジエビは、たまに区別されずに“ミゾレヌマエビ”で売られる場合もあります。
“ミゾレヌマエビ”の正体がスジエビだった場合は魚が捕食されかねませんから要注意です。
ヌカエビもミゾレヌマエビもヌマエビ科。
テナガエビ科のスジエビとは手の長さや食性が大きく違います。

参照⇒【スジエビの見分け方
ヌカエビとスジエビは同種だと思っている例も多い印象です。
性格はカラスとハトぐらいの違いがあります。

参照⇒【テナガエビの見分け方
スジエビの含まれるテナガエビ科4種類は、案外簡単に見分けられます。

参照⇒【「スジエビ」の範囲
スジエビに似たエビの比較写真集

 

おすすめリンク

番匠おさかな館の図鑑・エビ
http://rs-yayoi.com/osakanakan/zukan/shrimpcrub/shrimptop.htm
スジエビの近縁種各種が載っています。
頭胸甲側面の模様の違いで見分けるのが比較的簡単です。
他のエビも綺麗な写真でたくさん掲載されています。
※ヌカエビが生息していない為、掲載されないので、比較し難いのが残念。
ヌカエビの認知が遅れている原因の一つは、
エビに詳しい人が多い九州や沖縄に生息しない事が大きいと思います。

オウミアNo.6 滋賀県琵琶湖環境科学研究センター
http://www.lberi.jp/root/jp/05seika/omia/06/bkjhOmia6-4.htm
各地のスジエビの卵の大きさの違いなどが詳しく書かれています。

 

2008/12/16


 


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