エビギャラリー目次へ戻る】 【総合目次へ戻る


スジエビの鰓前棘(2) 〜肝上棘の代わりのトゲ〜



顕微鏡を用いた、スジエビの専門的な同定に使われるという鰓前棘ですが、
この大きさでも発見するのは、ちょっと無理かと思います。
一般的には出番の無さそうな見分けポイントになりそうです。
眼の直下、やや後方に見えては居ます。


毛だらけの顎脚の「ヘ」のてっぺん付近にあるのが鰓前棘と思われる棘です。
確かに、肝上棘に相当する棘は発見できません。


第二触角の付け根の節にまぎれて見にくいですが、
その節の下側と前側角部の接点に生えています。
(額角の棘の少なさもよく分かります。
テナガエビの場合は、もっと数多く、細かくギザギザになっています)


前側角部のやや上、あごの甲羅の輪郭が少し凹んだ部分に生えています。
スジエビと間違われる事が多い、ヌマエビ属のヌカエビやヒメヌマエビ属のミゾレヌマエビには、
絶対に生えていないと思われますので、より確実に識別したい場合には、
極めて有効な棘だと思います。
他の淡水エビには無い特徴ですから、
これさえ見付かれば、「スジエビで間違いない」という事になると思います。

参照⇒【スジエビの鰓前棘(1)

参照⇒【ミゾレヌマエビの顔・額角
スジエビと間違われる事の多い本物ミゾレ。
額角上のギザギザの数も全然ちがいます。

 

 

●スジエビの情報に関しては、
・透明で腰が曲がっているのでスジエビだと思っているエビ
・本当のスジエビ

の2種類がある印象です。
ヌカエビやミゾレヌマエビなどのヌマエビ類からテナガエビの子供までが、
「スジエビ」と呼ばれている事が多いです。
文字のみの情報の「スジエビ」とは、透明で腰の曲がったエビの総称に近い印象ですから、
きちんとスジエビである事を確かめた「本当のスジエビ」とは別種である可能性も大きいです。
ミゾレヌマエビと本当のスジエビ、そしてテナガエビでは性格がかなり違って来ますが、
それらが同じ「スジエビ」という一言で呼ばれ、
各人がそれぞれのスジエビ像を描いて語り合っている可能性もあるのではないかと思います。
(全く魚にちょっかいを出さず、コケが大好きという、およそスジエビらしからぬ情報も見掛けます)
そういった意味では、こういう鰓前棘まで確かめる事は重要とも思えます。
スジエビに関しては、はなから「見分けは簡単」と決めつけずに、
むしろ、鰓前棘まで確認したほうが良いのではないかとも思います。

●スジエビは仕草や離れ眼が可愛いからか、
偏執的に愛される状態になることもある生き物のようです(溺愛といった感じ)。
「こんなにカワイイのだから、皆にも飼って欲しい、愛して欲しい」という思いからか、
・共食いなんて絶対しません
・魚なんて全く襲いません
・そんな乱暴な生き物じゃありませ〜ん
なんて感じの、
まるで『偏見に苛まれる生物の為に戦う勇者』かのような記述に出くわす事があります。
まあ、このエビのみを見れば、それだけの魅力はあるとは思いますが、
実際にスジエビの被害に遭って大切な魚を失う人の声も多い訳で、
「等身大の情報」にして頂きたいなと思います。

真っ暗な狭い水槽内で、一晩中、ハサミで切られ続け、
はさまれ続ける魚の身になって考える事も大切でしょう。
照明スイッチを切ったらそれで「おやすみー」ではなく、
突然に照明を消された魚がパニックになっていないか、
光の方に向かってガラスに鼻をこすって暴れていないかなど、
スジエビの狩りに有利になる状況が多いと感じたら、
混泳は避けたほうが賢明です。
スジエビとの混泳は、夜に目が見えなくなる魚への配慮は大事です。
朝になって鰭が裂かれていたり、鱗が剥がれていたり、ストレスで痩せたりしていたら、
もうその時点であきらめた方が良いです。

スジエビの混泳に関しては、
安易に「安心・安全」を説く向きがあって、
個人的には、逆にスジエビが必要以上に嫌われてしまうのではないかと危惧します。
・大事にしていた魚が食べられてしまったじゃないか!
・お気に入りのエビが食べられてしまったじゃないか!
安心だと信じていた生き物の裏切りや反逆は、
心に大きな傷となり、憎しみの記憶は倍化しますね。
店に引き取ってもらってくれれば良いのですが、
憎たらしい生き物に面倒なやりとりなどせずに、エアーポンプもない小さな容器に隔離。
嫌いになった生き物を、自ら処分して更に悪い気分になるのもいやですから、
近所の川や池に放流するという事も多いと想像できます。
●必要以上に嫌悪される
●小さな容器に隔離されて、不幸な最期を遂げる
●産地不明の外来スジエビが各地で川や池に密放流され、
在来の地域個体群の交雑、淘汰、消滅などの被害が出る

歪めた情報は結局スジエビを不幸にするだけだと思うのです。
良い所も悪い所も全部知った上で付き合って欲しいと思います。

 

2008/12/04


2008/12/05 更新


エビギャラリー目次へ

総合目次へ戻る

inserted by FC2 system