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テナガエビ
青色の強い雄個体



テナガエビの子エビを複数飼っていた水槽に、
日増しに青味を強くしてきた個体がいました。
元から青かったわけではなく、徐々に勝手に青くなって来ました。
「青」と言っても、青緑が正解かもしれない色です。
川底を歩いている大きな雄もこんな色で歩いていますが、
捕まえると意外と青味が薄かったりします。
バケツの中では、ただの透明に近い灰色になってがっかりしますが、
この個体は「青い」と普通に感じます。(真っ青ではないですが)


主に腕と腹節が青いです。
まだまだ若エビです。中型でもありません。
写真だと大きさが分かりませんが、大磯砂が大きく見えます。
早熟な少年といった感じでしょうか。
去年は完全にスジエビ以下の大きさの子エビでした。現在も大型のスジエビ程度です。
雌達の卵を受精させていますので、繁殖にはきちんと参加できています。
(テナガエビやミナミテナガエビは交尾せずとも無精卵を産み、しばらく抱卵しますが、数日で脱卵しますので受精の区別は容易)
もっとも、テナガエビはスジエビの相似形程度の腕の小型個体でも、大きな雌に交尾を挑んでいたりしますから、
外見的な二次性徴がないからといって、内部的に性が発達していないとは限らない印象です。
雄エビなど居たの?といった小さなエビだけの水槽でも受精卵を抱えた雌が居るのを見ます。


テナガエビは格好が良いのですが、なかなか腕全体までをフレームに納めるのが大変。
腕だけだと味気ない写真ですし、体だけだとテナガエビらしさに欠けてしまいます。
こうやって見るとかなり大きな個体に見えますが、測ってみると、額角先端から尾肢末端で5cmしかありませんでした。
とても5cmの個体の貫禄ではないですが、事実わずか5cmの個体です。
色や形の完成度が早く、末が楽しみな個体です。


こうして見ると、なんとなく幼い感じです。
この個体、それほど大きくもないのに「m模様」がほぼありません。
個人的な経験からすると、汽水に近い感潮域で採集した個体には、大きくなってもm模様が残る率が高い印象です。
逆に、湖沼の排水路で暮らす個体は、かなり模様の消失が早い印象です。
簡単に交配しましたので、種類として分かれている訳ではなさそうですが、
見た目にもなんとなく違います。
特にこの個体にはm模様が微塵も見当たらないのがすごいです。(後縁は残りますが)
感潮域系には「m」の縦線2本が逆さハの字的に濃く残ったり、
ミナミテナガエビかと思うほど「m」がはっきりした個体も居ます。
それが、この湖沼系(湖沼内ではなく排水路ですから淡水繁殖とは限らない)は見事な消え方です。5cmで早々と消えています。
単純に今まで捕ってきた個体がそんな傾向だっただけなのか、
全国的にもそうなのかは分かりませんが、
徐々に種類として分かれている過程にある感じがして面白い部分です。
同水系の中流域(ウグイ、オイカワ域ですがシマドジョウではなくマドジョウが居るような砂泥的な場所)にも多く棲んでいたので、
模様を中心に見てみたいところですが、川の流れの変化で捕獲できずにいます。
エビは底質の変化や流れの変化で簡単に何処かへ消えてしまいます。
逆に、今まで居なかった場所にウジャウジャ居るようになったりもします。
自由に住み心地の良い場所に移動しているようです。

※ちなみに、これらの写真でも第一胸脚が細く長く写っています。
大きな第二胸脚を失っても、テナガエビ科は第一胸脚も長いので、
長い手が欠落したテナガエビやスジエビもヌマエビ類とは区別が簡単に出来ます。
腕のとれたテナガエビ類とヌマエビ類の見分け
大小4本とも失うことはほとんどない確率だと思います。
これら手の長さなどに、各種の模様の特徴を足して総合判断すれば、種類間違いは簡単に防げます。
淡水エビの半専門的な世界(簡易同定界)では、特に各種の模様配置をやたらと敵視・軽視する風潮が強いですが、⇒
淡水エビの因習
根拠のない端折りを行なってしまっているため、自虐的に種類を間違えた情報になっていることが非常に多いです。
(そもそも「自然現象を敵視する自然科学」というのは存在そのものに矛盾がある)⇒【「模様は使えない」の違和感
「模様は使えない」を誤解したままの例では、実際に自らの種類間違えに気が付けていません。
これらの多くの実例からは、何が足らないから見分けを失敗するのかという事をよく学ばせてもらえます。
逆説的に、模様配列は種類間違いを無くす為の、かなり重要な指標になることが解かります。
模様は必ず見るようにしておくと、科や属まで跨ぐトンチンカンな種類間違い情報の流布や発表を未然に防げます。
(例えば、額角の折れたヌカエビをトゲナシヌマエビと誤認してしまうといったような単純ミスが簡単に防げます)
こういう模様の無い個体も、「無い」ことでミナミテナガエビやヒラテテナガエビとの識別率大幅アップです。
形体的な特徴に色柄的な特徴を足すと、相互的な補完が大きく働き、識別は格段に向上します。

「m」模様が濃いミナミテナガエビ。
ミナミテナガエビのm模様は、滅多に消えることはなさそうです。
大きくなってもクッキリな事が極めて多そうです。
良く似た二種類ですが、模様の方向性だけでも知っていれば、ぐんと区別し易くなります。
まず「見た目」。そして「詳細」へと進んで行けば無駄がありません。(「模様」⇒「指節の短さ」の確認で完了)
額角が折れた個体に対して、途端にあたふたすることもありません。
模様の特徴の把握は大事です。

 

参照⇒【感潮域系テナガエビ雄
河川下流域産は大きくなっても模様が濃い印象。
細いですが、ぼやけずにハッキリ残る感じが強い気がします。

参照⇒【感潮域系テナガエビ雌
雌の模様も黒が濃く、腹節下部には白い模様が入っています。
種類が違うことが判明したスジエビ下流型も黒いスジが太く濃いようですから、
模様が濃い事には何らかの意味がありそうに思えます。

参照⇒【純淡水域(?)系テナガエビ雄(1)
ややボケた感じ。
大きさの割りには残っている印象です。

参照⇒【純淡水域(?)系テナガエビ雄(2)
この個体はかなり薄い。
準大型で夏を越し、翌年の春以降に急速な腕の伸長を見せましたが、繁殖期前半で死亡。

参照⇒【純淡水域(?)系テナガエビ雌
淡水系は雌も「m」が薄い印象

参照⇒【テナガエビのm模様の色々
小さな頃はどれもクッキリ。

参照⇒【ヒラテテナガエビの縞模様
模様が無いと思われがちなヒラテテナガエビも、実は模様が変化して細かくなって行く為に、
模様が無いように見えて行くだけです。
若いうちは模様が良く目立つエビです。

 

 

おすすめリンク

青いミナミテナガエビ
http://sakefuru-hitorigoto.seesaa.net/article/103462360.html

番匠おさかな館の図鑑・エビ おすすめ!
http://rs-yayoi.com/osakanakan/zukan/shrimpcrub/shrimptop.htm
模様を敵視していないのでおすすめなサイト。
模様を馬鹿にすると逆に馬鹿にされかねないのが淡水エビ。
エビ情報の正確性は「模様の軽視ぶり」と反比例します。
正式な模様学は存在しないような印象ですが、
各種が個性的な模様を所持しています。
見るだけで見分けられることも多いですし、
そもそも、「模様は使えない」は誤解から生まれた因習です。
自然現象は敵視せずに、味方として、しっかり取り入れたほうが賢明です。
※このサイトに感じた要注意点
1、あくまでも九州大分県に生息するエビの情報です。
2.ヌマエビと書かれているのは、現在のヌマエビ南部群(旧ヌマエビ小卵型)。
3.ヌマエビ北部−中部群(旧ヌカエビ、旧ヌマエビ大卵型)は載っていません。
4.全国に定着しつつある外来シナヌマエビ類も載っていません。

 

2009/08/01


 


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