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テナガエビの眼
スジエビに次ぐ離れ眼(眼柄の長さ)



若いテナガエビです。
胸の横の模様が「逆さハの字」に見えるかもしれませんが、
「m」の上側が切れていて、しかも、ややイレギュラーな模様の持ち主なので、
斜めから見ると特にそう見えてしまいそうです。
テナガエビは眼が離れているところも、スジエビに似ていると思います。
テナガエビの子エビ・若エビとスジエビとの混同は日常的とも云えるくらいによくあることではないかと思います。
腹節(エビフライの部分)に筋模様が全くないのも有効な識別ポイントです。
スジエビだと腰の一番出っ張った部分に背中から腹の下までグイッと一本、黒い筋模様が入ります。

スジエビ。
腰の様に見える出っ張った部分に、
腹の下まで黒線が長く入ります。
この線はテナガエビにはありません。
(背中の上に、ちょこっとある個体が居る程度で、背中から腹の下まで通らないです)


ミナミテナガエビやヒラテテナガエビを見慣れた目で、テナガエビを見ると、
随分と横向きに倒れて離れた眼である事に気付かされます。
ミナミテナガエビやヒラテテナガエビは、眼がかなり上向きに立っています。
「吊り目」と云って良いくらいで、ちょっと怒ったような顔です。
体を上から見ると、眼が上に立っている分、横への張り出しが少なく、
テナガエビよりも、かなり寄り目に見えます。
目の感じで云うと、ミナミテナガとヒラテテナガが「吊り目」で「寄り眼」で似ていて、
テナガとスジエビが「離れ目」で似ています。
この眼の張り出し具合は、上から見た体の形にも影響していて、
スジエビやテナガエビは全体的に逆三角形的。
そして、ミナミテナガやヒラテテナガは流線型的です。
参照ミナミテナガエビの吊り眼の写真

ちなみに、スジエビかテナガエビかを模様その他でも決めかねた場合には、
肝上棘という、バラの棘のような棘を上から見て探したり(似た場所に生える鰓前棘に要注意ですが)、
額角のギザギザの数を数えてもOKです。
この上にある写真にも後頭部から眼の間を通って額角上のギザギザが並んでいます。
「歯」というそうですが、
この歯の数が軽く10本以上も細かく数えられれば、
もうそれだけでテナガエビ。
スジエビは5個前後の粗いギザギザです。
この上の写真では黒いギザギザなのでちょうど数え易いですから数えてみてください。
13〜14本くらい数えられます。

一方、スジエビの額角のギザギザは5個程度。
眼と眼の間の額角と呼ばれるツノの上に並ぶ棘の数がとても少ないです。
胸の横の「逆さハの字」模様とプラスすれば、テナガエビとはまず混同しません。
※ヌマエビ科の旧ヌカエビおよび旧ヌマエビ大卵型、
あるいはミゾレヌマエビとの混同にも役に立ちます。
旧ヌカエビは額角上に棘がほとんどありません。
ミゾレヌマエビ(本物)は、逆に数え切れないほどに細かくあります。
スジエビの額角の歯は、他のエビと比べて極端に粗いので分かり易いです。

参照⇒【スジエビの見分け方
テナガエビ科のスジエビは、手の長さで最初に分かるものですし、
模様も分かり易さナンバーワンですから、そこまで見る必要性は感じませんが。(勿論、見て損は無いです)


水草に留まっているテナガエビの若エビ。
前側から見ても、あまり目が立っていません。
横へ離れている眼です。
この眼の角度は、姿勢や居る場所にけっこう左右されます。
水草に掴まっている場合には、上下を警戒している必要がありますから、
真横に開いている場合が多いようです。
上から来る魚や、下から襲ってくる魚などにも警戒が出来ます。
スジエビほどではないですが、眼の出っ張りは強いです。
眼の柄が長いです。

スジエビの眼。
飛び出し具合ではテナガエビよりは一歩リードしている様です。


感潮域産のテナガエビの若エビ。
眼だけ見るとスジエビとかなり似ています。
それでも飛び出しはやや負ける印象。

スジエビの眼。
このスジエビの眼はかなり立っています。
底に降りると、下への警戒は随分減るという事なのかもしれません。

おまけに旧ヌカエビの眼。

このヌカエビも含めた3種類が淡水エビの三大離れ眼と思います。
1.テナガエビ(テナガエビ科)
2.スジエビ(テナガエビ科)
3.旧ヌカエビ及び旧ヌマエビ大卵型(ヌマエビ科)
テナガエビとスジエビ、そしてスジエビとヌカエビがよく混同されますが、
この眼の離れ具合も混同に大きく関わっていると思います。
眼が離れているのは、スジエビだけの特徴ではありません。


旧ヌカエビはヌマエビ科なので、第一・第二胸脚は短いです。
離れ眼で腰が曲がっているのでスジエビと間違われ易いエビです。
参照⇒【長い手がとれてしまったテナガエビ科とヌマエビ科の見分け


妙な糸クズに絡まっているテナガエビの若エビ。
この個体の姿勢と、眼の角度の関係性が面白いです。
体が斜めでも、眼は水平を保とうとしています。
この性質はヌカエビでも見られました。⇒こちら(デメヌマエビの特技)
眼柄が長い種類だと、こういう性質がよく目立つようです。
テナガエビやスジエビ、ミナミテナガエビもそうですが、
脱皮して歩けるようになった個体が、眼の下の部分に、さかんに砂粒を運び込む行動が見られます。
ザリガニの行動として有名で、“すなかぶり”という名前が付いた作業です。⇒【テナガエビの砂かぶり
砂を敷いていない水槽でも、特に上下を判断できなくなる事はないようです。


これは随分と吊り目です。(テナガエビの若い♂)
個人的な認識を変えてくれる写真です。
テナガエビも結構吊るものです。
地面に居ると、案外吊り目気味ですが、これは45°ですね。
それでも、なにか「キツイ」イメージになりません。
「精悍」という印象は少なく、とぼけた印象を持たせる眼です。
どういう訳か、眼が飛び出したおもしろい顔であって、きつい感じがしません。


これは以前に撮った感潮域型の雌です。中型の個体でした。
眼をかなり立てていますが、とくに「怒っている」といった感じはしません。(主観的ですが)
こんな仕草も加わると「カワイイ」に近い印象です。
眼と眼の距離、そして、柄の長さ、立つ角度の若干の違いで、
テナガエビには、なんとなくおっとりした、とぼけた感じを受けます。
ミナミテナガエビとの違いは、
●胸横の「m」模様の細さ・崩れ方
●指節(脚の爪)の長さ
●そして、眼の柄の長さと、眼の立つ角度も加えると、見分けがより進歩しそうに思います。

比較参照画像「ミナミテナガエビ」

なぜか怒っているような印象になるミナミテナガエビ。
目玉が大きくて、やや短めの眼柄で、吊りが強くて、両目の幅が寄っているから、
眼の吊り上がったキツイ印象になる感じがします。
顔も上下に長い感じ。テナガエビはやや丸顔。
そういった微妙な違いが重なって、違う表情に思えるようです。
参照⇒【ミナミテナガエビの若エビの眼
若い頃から眼が立っています。その分、横への張り出しが弱いので見分けに使えます。
参照⇒【ミナミテナガエビの眼
上に立っているので、離れ眼な印象が弱いです。(多数の個体をバケツで上から見ても分かってしまう)

比較参照画像「ヒラテテナガエビ」

ヒラテテナガエビの眼。
眼の柄が短いです。急流に対応している印象です。
子供の頃から「黒豆」のような大きな眼です。
参照⇒【ヒラテテナガエビ(ヤマトテナガエビ)の成体♂

参照⇒【テナガエビ科の見分け方
日本の本土には、まず4種類しか居ませんし、比較的どれも見分け易いです。
模様でほぼ分かりますし、指節を足せば済んでしまいそうです。
(九州南部や、まれに黒潮があたる本州でコンジンテナガエビが捕れるそうです)

 

おすすめリンク

番匠おさかな館の図鑑・エビ おすすめ!
http://rs-yayoi.com/osakanakan/zukan/shrimpcrub/shrimptop.htm
テナガエビとミナミテナガエビの見分け方が分かり易く出来ています。
見た目にも、飼ってみても、全く違う別種。

琉球淡水エビ
http://www.h2.dion.ne.jp/~karo/
琉球列島にはたくさんの種類のテナガエビが居ます。

 

2009/08/05


2009/08/06 更新
2009/08/07 写真追加・更新


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