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エビ飼育に欠かせないアイテム「スポンジ片」


“必須”とするにはやや不足ですが、
脱走を得意とするエビの飼育には、“あった方が良い”以上の物です。
せっかく馴染んだ、順調な飼育をしていた個体を、一晩で失う事になる「脱走」。
エビの個体の命をつないで行くのに欠かせないアイテムとするならば、
“必須”と言っても過言ではないかもしれません。

すきまに合わせて切って差し込むだけですが、
これだけで、脱走による死亡が防げます。
エビ全体で、年間に相当な数の死亡事故が起きていると思います。
「干しエビ」にはあまり悲しみは感じられないものなのかもしれませんが、
身が乾いていく過程は、おそらく苦しいものでしょう。

エビは魚と同様に考えてしまうと、この脱走の部分で命を落とさせる事が多くなります。
魚にはない“脚”をもっていますので、
昆虫を逃がさないようなつもりの隙間対策を施したほうが安全です。
特に脱走が得意なのがロックシュリンプ。
次いでヤマトヌマエビ。ビーシュリンプも案外頑張ります。


ロックシュリンプには必須アイテムと考えてしまって良いでしょう。
鉄砲水や崖崩れなどに頻繁に遭遇する上流域に生息する種類は、
川の様相の変化に合わせて気軽に陸上を歩き、
棲み易い場所への移動を行なっていると想像できます。
大水で川床が変貌し、小さな水たまりに取り残されてしまった場合も、
少々湿った水辺を歩けば、生息に適した環境に戻れます。
「今棲んでいる水たまりは、ちょっと棲みにくいな。移動するか」
といった程度でしょう。
そこを出たら水が一滴もない世界だとは思っていないわけですね。

自然下で脱走に近い「上陸」を行なった場合、
万が一、次の水溜りや流れに辿り着けなかった時には
とりあえず元居た場所には戻れます。
水は上陸した地面よりは下にあります。
しかし、水槽から脱走した場合はどうでしょう。
水槽の縁から落下します。
そのあとはもう戻れません。
水は乾いたつるつるの垂直な高い壁の上です。
こういう事態に遭遇するということは、
彼らの常識としてはまず有り得ないと思います。
気軽に隣りの水溜りや流れに移動できるからこそ、
あるいはとりあえず戻れる場所があるからこそ安心して行なっている行動であって、
二度と戻れない、そんなナンセンスな構造の世界に住んでいたとは思っていません。
水槽から落下したエビ達は、
延々と自分の歩いている地面よりは下にあるはずの「水」を求めてさまよい歩く、
あるいは跳ね続けることになります。
こういう、彼らが対処できない状態に陥る事は、未然に防ぐ必要があります。


水槽では10年以上も生きた報告例が多いヤマトヌマエビ。
脱走で命を絶たせるのは避けたいところです。


清流に多いヒラテテナガエビも脱走が得意。
手脚が短く、爪も強いタイプは要注意です。


スジエビも案外脱走します。
網で陸上に上げた時に、歩く種類であれば、脱走の危険は高いです。
キリギリスの飼育容器の角を空けておくのと大差ありません。

 

◆使い方

水槽の蓋の角の部分にある隙間を埋めるだけです。
有害な薬品などが含まれていないスポンジならなんでもOKです。
未使用の食器洗い用のものが身近かもしれません。
使い古したスポンジフィルターを再利用しても良いでしょう。

これを隙間に差し込んで、中に落ちない程度、そして抜き差しに支障がない程度に切ります。
餌やりに必要な隙間くらいなら最小限で残しても良いかもしれません。
(餌やりの度に毎回抜き差ししても良いのですが、つい差し忘れると、その一回の忘れで
事故が起きる場合があります。エビは真夜中に毎晩チャレンジしている場合があるのですね)
ヒーターコードやエアーチューブなども考慮しますが、
スポンジですから、負担をかけずに隙間は埋まると思います。

これで、とりあえず脱走は防げますが、
脱走をしたがる素振りは防げません。
何が気に入らないのかを詰めていく必要は残ります。
水面に向かって泳ぎ続ける、陸上部分に乗り上がる、
あるいは流れに遡ろうとする行動が延々と続くようだと
その体力消耗が心配されます。

 

2008/01/19 


 

 


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