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エビの水温


エビは暑さに弱い生き物です。
水温28℃を超えるあたりから変調を来たして死亡するものが出て来ます。
その一方で、寒さには強いものが多いです。
ロックシュリンプなどの熱帯性のエビでなければ9℃になっても平気です。
だいたい22℃〜24℃くらいの、熱帯魚に比べて「やや低め」くらいが適温だと思います。

ミナミヌマエビ(観賞魚店で市販されるシナヌマエビ類)や、
レッドチェリーシュリンプは比較的高温に強く、30℃くらいなら繁殖もするほど。
ロックシュリンプは、やや強めで、29℃くらいなら、なんとか過ごせます。
それに対して、ヌカエビや元祖ビーシュリンプ・レッドビー(CRS)は暑さに弱い。
27℃以上にならないように管理しないと、繁殖は停止し、
大型個体の相当数が死亡、という事に成り易いです。

比較的、高水温にも強いレッドチェリーシュリンプ

 

水温に伴うエビの状態の変化

水に溶け込んでいる酸素の量や、濾過の状態、エビの種類、体力や若さなどで
上下するかもしれませんが、概ね、以下のような感じになりました。
(表示してある温度は最高温度。明け方には2℃前後低くなります)

32℃
エビ全般に生存不可能な領域に。
これが連日続くと、ロックシュリンプの体も濁ってきます。
置き餌飼育が基本のロックシュリンプは、
その置き餌が腐って水質悪化が起きやすいのもプラスされます。
購入物のミナミヌマエビは、一時的な上昇なら繁殖を続けてしまう場合もあります。

観賞魚店での購入物ミナミ(シナヌマエビ類)は30℃前後でも、いたって元気。
近似種の台湾産ノコギリヌマエビ(トロピカルシュリンプ)は、
日本のミナミよりも暑さに強いらしい。
とすると、日本産のミナミヌマエビが30℃で平気な保証はないかも。

30℃
エビ全般に相当危険な水温です。
食欲が減り、白濁したり、赤っぽくなるエビが続出。
そんなエビは数日後に死亡。
死亡したエビは共食いされずに残って腐り、
さらなる環境悪化の原因に。
こんな状況が連続して起こります。

ロックシュリンプにもキビシイです。
水換えもなく餌をあげ続けていた場合、急に食べなくなって水質が悪化し、
脱走や死亡が起こり易くなります。

レッドチェリーやミナミヌマエビ(市販物)は、
この程度の暑さではヘコタレナイ者が多く、抱卵も続き、稚エビも良く育ちます。
ただ、ミナミヌマエビの大きな個体には少々きびしいようで、
たまに死んでしまう個体も見られました。
なかには白濁する個体も出てきます。
しかし、ミナミヌマエビは白濁しても、
平気でエビ団子に加わって元気に餌の取り合いをする個体がいるのは常。

ロックシュリンプは、
上流に生息するといわれる割りには高水温に強めなエビ。
逆に、寒さには弱く、16℃で身動き取れなくなります。


ロックシュリンプと同居しているヌマエビ(南部群?)も暑さに強い。
二度目の夏を簡単に越してしまいました。
ヌカエビの弱さから考えると“亜種”とされているのが信じ難い丈夫さと長寿命。

27℃〜29℃
エビには高過ぎる温度です。
ヌカエビ、レッドビー(CRS)の大型の個体が死に易くなります。
白濁した個体もちらほら見られるようになります。
雑菌類の活動も旺盛になるためか、エビの体力の消耗がはげしい。
ロックシュリンプの食欲は増進しますが、
その分、水の汚れや、置き餌の管理にも同量の注意が必要。
ミナミヌマエビ(購入物)やレッドチェリーは、まだまだ元気。

ビーシュリンプ、CRSは高水温に弱い。
25度以下に保つつもりのほうが安全。

25℃から26℃
「適温」といえば「適温」の範囲なのでしょうけれども、
水槽内全体の活性が上がるので、どっちにも転ぶ微妙な温度。
エビの餌の要求も多く、共食い、水換え、底床掃除など管理はたいへん。
どれかを怠ると、すぐに影響が出て来ます。
繁殖が容易に楽しめる温度でもありますが、危険もはらんで来ます。
ロックシュリンプには適温。

22℃〜24℃
多くのエビにとって最も理想と思われるのが、こんなやや低めの水温。
病気の心配も無く、繁殖も滞り無く行なわれる。
水草も元気に育ち、濾過も順調。
この位の温度は不具合が非常に発生しにくい。
(ロックシュリンプには、やや低いですが)

暑さに弱いヌカエビやレッドビーは、
こんなやや低めの温度だと調子が良いです。
ヌカエビとレッドビーの大型の成熟個体は、
毎年、高温期に子エビを残して死んでしまう事が多いです。
夏になる前にたくさんの稚エビを孵化させて置かないと、
累代維持が途切れてしまいかねません。
両種とも仔エビ・若エビは暑さに強い。

17℃〜21℃
特に問題なく産卵・孵化・成長はみられますが、
産卵周期や孵化までの時間がやや長い。
少々「つまらない温度」と云ってもよいかもしれません。
濾過バクテリアの活性が下がってしまうので、
その面から管理がやや難しくなる場合も。
積極的にこの温度を維持する理由は無いように思います。

16℃
「16℃の壁」
多くの熱帯魚もそうだと思いますが、
16℃を下回っても元気な種類の生物は、低温にやや強い生き物である事が多い。
逆に、16℃で動けなくなってしまう種類の生き物は、
低温で飼育していくのは不可能でしょう。
体内の酵素だか何かの反応が、その温度では進まなくなる、
といった話を聞いた事がありますが、詳しい話は失念。
熱帯産のエビの場合も、この公式に当てはまる種類は多いと思います。
ロックシュリンプは当てはまっているようで、
東南アジア産ロックシュリンプ、アフリカンロックシュリンプ共に、
16℃で固まってしまいました。
熱帯産のエビにはヒーターは必須です。

レッドビー(CRS)は、この温度に下がっても生死には全く問題ありません。
ただ、寒い状態に長く置かれると、
体力を消耗して産卵モードから遠ざかってしまい、
水温が上がってきて体力が回復しても、なかなか卵巣の大きさが戻らず、
もたもたしている間に、最も危険な夏がやって来てしまう、なんて事も多いです。

15℃
元祖極似ニュービーは、これより下がると早々に姿を隠してしまいます。
水温が上がるとひょっこり出て来ます。
(軽く土に潜って冬眠する技を持っているようだ。冬の供えが良いのは元祖より北方系な証拠?)
CRSは産卵が停止してしまいます。
購入物のミナミヌマエビでは、この温度でも抱卵しているものがいました。

物陰(おそらく砂利の下)に潜り込んで越冬する術を持つ元祖極似ニュービー。
CRSや元祖ビーには、そんな技は観察していません。


10℃に迫るとヌカエビはナゼか水温計に集まってきます。
シナヌマエビ達も吸盤などに綺麗に並んでじっとしている事が多くなります。

9℃
レッドビー(CRS)も水槽の角やスポンジフィルターの裏に集まって寒さを凌ぐようになります。
全体に活動は鈍くなりますが、網から逃げる瞬発力などが衰えることはありません。
日本の温帯域産のエビ(ヒラテテナガ、スジエビ、ヌカエビ、テナガエビなど)も
問題無く過ごす温度です。
レッドチェリーはヒーターを入れていたので確認はしていませんが、
寒さには強いという話は何回か聞きました。

水槽の隅(スポンジフィルターの裏)に集まって越冬状態のCRS

氷が張る温度
屋外の薄氷が張るようなプラケースでも、
ミナミヌマエビ(購入もの)やヌカエビは冬を越せます。
日本の温帯域に棲むエビは屋外で冬を越す事は可能なはずですが、
餌を食べられないほど寒い状態が続くと体力の消耗が心配されます。
せっかく冬は越せたのに、春先にヘロヘロになって死んでしまう事も多いので、
長期間低温にするのは控えたほうがいいかもしれません。

自然界に暮らすエビは、少しでも暖かい場所に自由に移動できるわけで、
「野生のエビは、ここの寒さに耐えられるはず」というのは一概に言えないと思います。
毎年エビが越冬しているような場所の水温は案外あたたかいのかもしれません。
寒い場所から移動できない飼育下のエビには、低温対策が必要な場合もあると思います。
野生のエビより、飼育下のエビの方が、
寒い冬を過ごしている場合も多いのかもしれません。

熱帯魚水槽で購入後4年経過したヤマトヌマエビ。
「寒さ」という過酷さが無いことで、長生きが出来ているのかも。

ヤマトヌマエビは高水温にも強い種類のエビ。

 

エビと水温の関係について参考になるページ

http://www2u.biglobe.ne.jp/~niwasaki/department/jikkenn2.htmアクアインテリア・ニワサキ
短期間での高温耐性実験があります。
実験結果一覧
その他の実験も非常に面白いです。

 

2005/09/30 


 


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