水質管理に対する考え方


水質管理と一口に言っても、まさに人それぞれ。水槽の水質管理方法は、
ぬか漬けの樽が各人・各家庭で違うのと同じように管理者によって全く違います。
さらに同じ管理者が管理しても水槽一つ一つで違ってきます。
醤油造りや味噌造り、酒造りの樽が、同じ蔵のすぐ隣りの樽で違うのと同じかもしれません。
その一つ一つの水槽に暮らす細菌類のバランスが一つ一つで違う事が関係するのだと思います。
この細菌類を操る事ができれば「水の達人」になれるのでしょうが、なかなかうまくはいきません。
水質管理の要はその飼育生物の水質許容範囲内に水質を維持できればいいという事なので、
方法ではなく結果オーライの世界です。
各種様々な方法でうまくいっている人もおられるでしょうが、飼うものは命ある生き物ですから、
ある時は大成功でも、ある時は全滅といったような、たまたまとか偶然に頼った飼育管理にならないよう、
水槽器具会社や熱帯魚関係のホームページ、あるいは書籍を多数参考にして経験を積み、
自分に合った各人それぞれの水質管理方法を確立して頂きたいと思います。

私は上面、底面、外部、外掛け、投げ込み、壁付けと各種の濾過装置を使ってきました。
そして騒音、費用、手間などの負荷をどんどん取り除いていった結果、現在はスポンジフィルターで落ち着いています。
このスポンジは小さい割に濾過細菌が住める空間が大量に存在し、
均質性に優れていて濾材のムラが生じないため、手入れが楽な割に濾過能力が高く、
一年中水槽の水を生物濾過し続けてくれます。
これをダブルで投入し、目詰まりを防ぐ程度の洗浄を交互にすることにより、濾過細菌の急激な減少を抑え、
ひいては水質の安定につなげています。

私は水槽で生物を上手に飼えるかどうかは、濾過細菌をしっかり維持できるかどうかに掛かっていると思っています。
良い細菌バランスを維持できれば、中に入れる主役の生物は比較的容易に飼う事ができます。
濾過細菌を飼い、水を飼う事が出来て、はじめて本来の主役をいきいき飼うことができるのだと考えています。
主役が光り輝くにはその裏で大勢の「裏方」が働いていてくれなければなりません。
真新しい樽に真新しいぬかと水を混ぜて入れ、その中にキュウリやナスをいきなりねじ込んでも、
美味しいぬか漬けは一朝一夕で出来ないのと同じです。
優れた細菌バランスを持ったスポンジや飼育水は、何十年も使い込まれた「ぬか床」にも匹敵するものだと思います。
長い間安定し続けている水槽があれば、新しく水槽を増やしても、その安定した水と濾材を半分ほど使う事によって、
短期で安定した水槽に仕上げることができますが、水道水とまっさらな濾材ではなかなか安定しません。
調子を崩している水槽に、安定した濾材を洗浄した後の濾過細菌のたっぷり入った水を入れることによって、
水質の安定を取り戻させることもできます。
良いぬか床を分けてもらうのと一緒のような行為です。
安定した古い水、古い濾材であればあるほど細菌類の種類が増し、
特定の種類のみが爆発的に増殖するのが妨げられるからなのだろうと思います。
それだけ貴重で価値あるものを、一気に全部流したり、水道で簡単に洗い流したりせず、
引越しの際は魚やエビと同じように酸素パックにして持ち運ぶくらい大切にして頂きたいと思います。
飼育する魚やエビはショップでまたすぐ手に入りますが、一度下水に流れてしまった濾過細菌は、
そう簡単には元には戻りません。
本当の水槽の主役は、実は濾過細菌なのかもしれませんね。

2002年9月9日 


このホームページでは私の水質管理方法のみで説明してあります。
そのままの方法を実行なされてもうまくいかない場合があるのを前提に、参考の一つとしてお読みください。


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