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ヌカエビとスジエビを背腸の特徴で見分ける

テナガエビ科スジエビ属スジエビと、ヌマエビ科ヌマエビ属ヌカエビ。
およそ掛け離れた種類のエビですが、Web上で切り取られた画像として登場すると、
実物の大きさやツマツマ行動等も見えないためか、混同が著しくなります。
透明・腰曲がり・出眼の3点が共通なのが、まず第一に災いします。
参照⇒【ヌカエビとスジエビ←似た写真を並べてあります。かなりな似方でおもしろいです。
スジエビは多くの方に知られています。その一方で、ヌカエビはあまり知られていません。
同じ特徴だと、知っているほうの種類として多数決で処理されてしまいます。
「第二胸脚が両腕とも欠落したスジエビが、さらに黒スジも全部消え去ってしまった個体」
という、成立がおそろしく低いであろう確率で、強引にスジエビで決着される事も伝統行事級です。

淡水エビには「模様は種類識別の参考にならない⇒使えない⇒使うと間違える」という因習が根深く覆っており、
当然、ヌカエビとスジエビという、模様でも簡単に見分けられる両種でも、模様は一切見ない習慣にさらされます。
ですから、上記の3点を比較しているのだと思いますが、全部共通ですから知名度でスジエビになる訳です。

では、絶対に無い訳ではない「両腕が欠落した完全に透明なスジエビとヌカエビ」の画像を見分けるとしたら、
はたしてどうしたら良いのでしょうか?
額角の詳細も見えず、外肢や毛束も見えない画像だったら、残るは背腸です。

 

スジエビの背腸


スジエビを採集したり、水槽で観察しても、腸管は腰の頂点に達しない部分までで消滅します。
背中に黒い背腸が見えていますが、この程度が普通です。
腰の太い黒筋に達しない辺りで消えてしまいます。
このあたりは、スジエビの食性と関わっていると思います。
小さな生き物などを好む肉食性の強いエビなので、
糞となるカスがあまり生じないのではないかと考えられます。
実際、スジエビの排便シーンに遭遇した経験は記憶にありません。


背中に白くて細い背腸が見えていますが、やはり、腰の頂点に達する前で消えます。
この腸管の細さも、肉食性の強さならではと思います。
ヌカエビが含まれるヌマエビ類は、それこそ泥や堆積物、腐った水草、付着藻類など、
およそ栄養など無さそうな物を延々と食べ続けます。
含まれる僅かな栄養を得るために大量に食べ、大量に糞をします。
ですから腸管は糞でいつも満たされていますから太いです。
スジエビは栄養価の高いおいしい物を食べますから、糞の量は少なそうです。


昔撮影した写真から、現在飼育中の個体まで観察しましたが、
やはり、スジエビの腸管はこんな位置で黒く細くある程度でした。


この腸管の細さは、テナガエビでも共通な印象です。
実際、テナガエビ科の写真を獲っている時に、糞をしている状態に遭遇した験しはありません。
「いつウンコしてるの?」といった感じです。


こうして見ると、腸管は通っています。しかし、細くて目立ちません。
腰の一本筋以降にまで黒く太い腸管が存在する個体は発見できませんでした。


これはテナガエビ。腸管が細いです。
スジエビよりも肉食ですから、当然なのかもしれません。


スジエビは、おいしい栄養価の高い肉系の餌を、胃をぐねぐね動かしながら一気に食べます。
あっという間に胃袋が餌と同じ色に膨らみます。食後は体の掃除などをして過ごします。
腸は細く、背中に短く透けて見える程度が普通。尾の先まで太く見えている事はまず無いと思います。

 

ヌカエビの背腸


一方、ヌカエビの背腸はどれもウンコが詰まっています。
いかにもスジエビと間違われそうなスタイルですが、尾の付け根まで糞が詰まった太い腸管です。


実際、ヌカエビの写真を撮っていると、脱糞現場を回避するのが不可能なほどで、
常に肛門から出ている状態が普通。
床にもウンチが散乱していて、あまり美しい画像にはなりません。


朝もウンコ、昼もウンコ、夜も太いウンコです。
ウンコ製造マシーンの様な存在です。


ママもウンコ。


みんなもウンコ。


浮遊幼生にもウンコが詰まっています。


四六時中食べているのがヌカエビですから、常に腸管には食べた物が詰まっています。
腰の頂点から後ろにも途切れなく詰まっているのが普通です。
まあ、もちろん、強制的に餌を与えない、あるいは脱皮直前で絶食していれば詰まっていないでしょうけれども、
基本的には詰まっているわけです。
おいしいお肉を食べられる時に、んぐんぐ食べるスジエビと、
あまりおいしそうには見えないコケや汚れをはがして食べ続けるヌカエビ。
2種の腸管には、食性から来る違いが明確に表れています。

スジエビとヌカエビの見分けは、ハサミ脚や模様で普通は簡単ですが、
ハサミ脚が全く無くて、完全に模様が消失しきっていて、
どうしても見分けられない時には(そんな事あるのだろうか^^;)、
腸管の特徴を見てみると面白いかもしれません。

 

おまけ ミゾレヌマエビ(本物)の背腸

この背腸での見分けは、同じく「スジエビだ!」とされてしまう率の高いミゾレヌマエビ(本物)にも有効です。
腰の曲がりが強く、眼が飛び出していて、透明で、逆さハの字まである四重苦のエビです。
しかも、ヌカエビよりもさらに知られていませんから、スジエビ度に対する抵抗はほぼゼロです。
瞬時に「スジエビ!」と断定されるエビです。ですが、背腸は御覧の通り。


説明、要りませんね。

 

念の為ですが、
背腸(消化管)が細かったり見えないからといって、テナガエビ科とも限らない
です。当然ですが、ヌマエビ達にも食べたくない時はありますので。

 

 

2010/09/17 


2010/09/18 更新・ミゾレ追加


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