ビーシュリンプの生息環境の推測

ビーシュリンプの原産地は「香港」といわれますが、いったいどんな所に棲んでいるのでしょう?
水槽内でのビーシュリンプ(CRS)の行動や形態、体色などからいろいろ推測して、
ビーシュリンプの故郷の生息環境やそこでの生活ぶりを逆に辿ってみようと思います(地名の特定ではありません)。

香港マップ
http://www.geocities.co.jp/SilkRoad-Ocean/3793/hongkong-map.html
う〜む。こんなにも広いとは。どの島に居るのでしょう???
香港ビーと元祖ビーでは生息する島が違う可能性もあるかも???
むか〜し飼ってたビーシュリンプって、もっとまるっこかったからなあ。

香港の気候
その前に香港の気候ですが、ざっと調べたかぎりでは下記のとおりでした。

亜熱帯性気候の温暖多湿。日本よりも比較的暖かい。
年間を通して温暖だが、不明瞭な四季が一応ある。

・温度
冬は14度〜20度くらい。10度を下回ることはあまりない。
夏は28度くらい。最高でも33度くらいまで。


室内で無加温で飼える理由は、現地の温度から分かります。
我が家のヒーター無し水槽だと冬場は水温9度になる事があります。
餌を食べる手は鈍りますが、特に死ぬような気配はありませんでした。
最低で4度でも生きていたという情報もありました。
水が凍らなければ平気という話もあります。

日本の夏は香港よりも暑いかもしれないですね。
香港は、なにしろ台風の通り道だそうです。
ビーシュリンプ(CRS)が水質の変化に敏感な事と、この台風が多い事は密接と考えてよいと思います。
つまり増水初期の水の変化にいち早く反応しないと、小さな体ですから流されてしまうわけです。
特に死ぬわけでもないのに、水が少し変わっただけで大騒ぎする理由のひとつかもしれません。
日本の川でもそうですが、水質変化に弱いエビが、濁流の中でどう過ごしているのか・・・エビ最大の謎。


台風で増水した濁流の中で、
どのように過ごしているのでしょう。

【水槽内での彼等の行動パターンや嗜好性から、いろいろな推測をしてみます】
(新しい発見があり次第、随時変更していきます)

●体の太さ、遊泳能力等から見た場合に、最初は、日本に生息するヒメヌマエビのような、
流れの緩やかな、中流からやや下流域に生息していると思ったのですが、
かなり水の汚染に弱いので、上流に近い流れの緩やかな細流とする方が良いかもしれません。
ミナミヌマエビのように止水域にも居るというエビではなさそうです。
遡上する機動力はそれほど高くないので、ヤマトヌマエビが棲むような渓流域には居ないとは思いますが、
本流に注ぐ支流の、さらにその先の細流。
魚が入り込めない小さな滝の上の水溜りなどが「BEEの楽園」になっているのではと思っています。

●底砂は元祖ビーの体色が有効な保護色となる白黒の小石。大磯の小粒くらい。
ビーやニュービーのように中国産のヌマエビ類に白黒模様の種類が多い理由は、
現地の川床の組成が大きく関わっていると思います。


ビーシュリンプの白黒模様は黒いソイル上では目立ちますが、
大磯砂のような砂利の上では、効果的な迷彩色となるでしょう。

●顎肢に小石をはさみ、器用に回して表面の付着微生物を食べる行動が通常状態であることからも、
そのような大きさの小石が堆積するような流れの場所。
彼等はそんな場所で、日がな一日、小石をコロコロころがして、
その表面に付着している微生物を食べているのではないでしょうか。
ちょうど、干潟のシオマネキやチゴガニのように(こちらは砂や泥ですが)。

●浮泥が堆積した歩き辛そうな場所は好まない。
稚エビが底床の汚れに弱いことから、あまり泥っぽい所には生息していないでしょう。
底砂は絶えず流れによって適度に洗われている状態で、泥などで目詰まりしている場所とは考えにくいです。

●十分に自分自身が乗っかれてしまうような大きな石がゴロゴロあるところでは、
独特の保護色は逆に目立ってしまいます。
一方、粒が細か過ぎる場所も一個一個の砂粒を扱うのに骨が折れますので、そのような無駄は避けるでしょう。
当然背中の白黒模様も、その大きさ以下の細かい砂の上では目立ち過ぎます。

●遊泳能力の低い稚エビであればあるほど流れの緩やかな場所に居るでしょう。
そこにはやはり緩やかな流れで沈殿する砂利が溜まります。
ちょうどエビの大きさとエビが顎肢で扱い易い砂粒のサイズが比例している事でしょう。
そしてこの一つ一つの粒の大きさは彼等の白黒模様の大きさとも一致していると考えられます。
体が大きくなり遊泳能力が増すにつれ流れの速い場所にも移動しますが、
そこには見事にその個体が転がすのに適し、尚且つ保護色に合った粒が揃っているという事になります。

●水草に居るよりは、底に居る事を好む。
ヌカエビやミナミヌマエビに比べると、肢が短く、体も寸胴で重たい印象がします。
その体で水草の上を歩く姿は実に歩き難そうです。
さらに水草に留まっていると、やはりあの特異な体色は目立ち過ぎます。
ただ、生まれたばかりで遊泳能力の低い稚エビは水草を拠り所としている可能性はあります。
この時期の稚エビはやや透明で水草の中でもそれほど目立ちません。
白黒模様がはっきりしてくる頃に川底に降りてくるのでしょう。
流れの緩やかな場所は水草が生える藻場となり、
川床に降りた場合にも、ちょうど稚エビの体色や扱いに合った
細かい粒の砂が堆積しているという事になります。

●産卵をひかえた♀や抱卵した♀は藻場に移動すると思われます。
遊泳脚にたくさんの卵を付ける訳ですから、遊泳能力に大きな負荷が生じます。
緩やかな流れの場所ですし、鳥や魚などからの攻撃も防ぎやすいでしょう。
さらにそこで稚エビを放出すれば、稚エビが危険な水中空間を移動する事無く
すぐに周囲の水草に付着し、中に隠れられます。

●彼等の特異な白黒模様は昼間の明るい時間帯でも行動できるよう、迷彩色として機能していると思います。
水面上から見た場合、水面の反射や水の揺らぎで攪乱され、
川床上のビーシュリンプを判別することは到底不可能と思われます。
この迷彩は水面上からついばもうとする鳥類に対して絶大な効果があると思います。


ガラス越しの日光に当てた水槽では、直射の当たらない陰に移動します。
直射日光が当たる浅瀬の完全にひらけた場所は避けるようです。


水面には日光が降り注ぎ、水草がまばらに生え、その水草の木漏れ日を受けて
白い粒や黒い粒の混ざった川床が、さらに光と陰で白い世界と黒い世界に分けられる。
ビーシュリンプはその保護色をフルに活かして、水槽内同様に明るい昼間も平気で活動しているものと思います。
室内の水槽内では、彼等を「夜行性」と判断できるほどの、明確な昼夜の行動の違いは見られません。
日光と蛍光灯では比較になりませんが、まぶしい程の明かりでも活動を停止する事はありません。


きっとこんな川砂の上に住んでいるはず。
レッドはすぐ分かりますが、黒BEEは見分けにくい。



●夜間の水槽の観察では、水草や水槽の壁のかなり上の方にまで移動している個体が多いことから、
自然界でも夜間は水面付近まで活発に大胆に行動することが考えられます。
夜行性と判断するほどではないですが、敵に見つかりにくい夜間は、びっくりするような場所にも居る事があり、
水面にハサミを出すほどの摂餌行動も平気で取ります。
昼間は明る過ぎて、大胆な行動は出来なかったビーシュリンプ達も、
鳥の居ない夜中の行動は大胆でしょう。
夜行性ではなく、一定の明るさ以下である事が、行動の制限を大きく解放するという形で、
明る過ぎなければ、24時間行動し続ける生き物と思えます。





以上、思いつくままにざっと書いてみましたが、
どうでしょう、生息地の風景や生活が思い浮かびますでしょうか?
はたして、ビーシュリンプは、実際にはどんな場所に住んでいるんでしょうね。興味は尽きません。


2003・04・01 岩


2004・12・22 最終更新


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