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コンテナ・アクアリウム(container aquarium)

「ビオトープ」という言葉。
誰もが違和感なく受け入れているのだそうです。
http://www.biotope.gr.jp/info/04.htm

いろいろあって、逆にわざとこのような表記をしているのかもしれませんが、
個人的には違和感だらけです。
ビオトープは人間の都合だけで自然を破壊しすぎたというところから産まれたものでしょう。
目指すものは地域の自然の回復や復元だと思います。
つまり、底辺に必要な精神は「反省」だと思うのです。
反省のないところにビオトープは存在しないと思うのです。

一般的にアクアリストに「ビオトープ」と呼ばれているものは、
睡蓮鉢のような水を入れる容器に水草を植えて、メダカを入れて、
ミナミヌマエビを入れるといったものでしょう。
これはアクアリウム用品メーカーが商品名「ビオトープ」として
セットで販売したものがきっかけなのではないかと思います。

この商品名的ビオトープに入れる水草は、産地も分からない種類でしょう。
まず、お住まいの地域に自生する種類ではないでしょう。
外国産のカタカナ名のものかもしれません。

メダカもヒメダカではないでしょうか。
売る側がヒメダカでは売れないと知っている場合はクロメダカかもしれません。
高尚な価値を付けるにはクロメダカにこだわって売るというのはありそうです。
しかし御存知の通り、クロメダカだから良いというものでもありません。
クロメダカは各地域で遺伝子が違う事が分かっている、地域的な差が高い生き物です。
ですから、多様性の観点から、
地域の在来の野性メダカと混ぜてはいけないクロメダカであることはまず間違いありません。
「クロメダカ」という商品として、どこかで繁殖させたもので、
これも産地不明のものですし、どんな遺伝子が混ざっているかも分からない種類です。

そしてミナミヌマエビ。
“ミナミヌマエビ”という名で販売されている小エビは、
まず外国産のシナヌマエビの仲間と思ってよいと思います。
WEB上のミナミヌマエビと付いているエビを見て回ったことがありますが、
まず額角が短く体が丸いという特徴のものばかりで、
日本の在来種ミナミヌマエビに見られる額角が突き抜けるほど長く狐顔の写真には
お目に掛かれませんでした。
これは熱帯魚屋さんの水槽でも一緒です。
“ミナミヌマエビ”という値札を見るたびに水槽を覗きますが、
一瞬で額角が短い事が分かります。
まず本当のミナミヌマエビは売っていないと判断できます。
ミナミヌマエビは名前に南と付くくらいですから、
本州の南西部に棲むエビです。関東や東北や北海道には棲みません。
しかも、とうぜん地域性が高い遺伝子を持っていると推測できます。
商品名的ビオトープではポピュラーな“ミナミヌマエビ”も、
実は本当のミナミヌマエビではないですし、地域にもともと棲んでいない確率は高いですし、
たとえ本物であっても出身地不明の得体の知れないエビです。

これらの生き物。
「ビオトープ」という同じ言葉の中に入っていますが、
地域の自然とのつながりに加えたら、そのまま外来種となります。
地域の自然の復元や回復をむしろ抑え、破壊する可能性が高い生き物達です。
つまり地域の自然からの「隔離」が必要な“ビオトープ”です。
ここで大きな違和感に気付くと思います。

 

 

コンテナ・アクアリウムという呼び名はいかがでしょう?

個人的にはビオトープではないものに「ビオトープ」という呼び名を使うのは
さっさとやめるべきと思います。
・屋外アクアリウム
・屋外飼育水槽
・屋外飼育槽
・屋外容器飼育
・水がめアクア
・睡蓮鉢アクア



などなど、何か代わりになる、格好の良い呼び名はないかと思っていましたが、
いいものを思いつきました。

容器で飼う屋外アクアリウムですから、
「コンテナ・アクアリウム」という呼び名がふさわしい気がします。
園芸の世界にコンテナ・ガーデンなんていうものがありますが、
土が水に代わった程度で、それとほぼ同質の行為でしょうから、これなら違和感ありません。
ビオトープという言葉からも完全に離れますし、
その精神に縛られる事なく好き放題に外来種が栽培・飼育できます。
蚊が湧いたら殺せますし、恐いハチが水を飲みに来たり、
勝手に湧いたヤゴがメダカを食べたら退治できます。
地球環境に貢献しているなどという変に矛盾した美徳意識も含まれません。
ヒメダカや金魚、アマゾンフロッグピットなども気軽に育成できます。
堂々と外来種満載ですから、「放流=環境に優しい自分」なんていう酔いしれも防げます。
幸いなことに、「コンテナ・アクアリウム」で検索をしてもそれらしい別の意味はありません。
そっくりそのまま移行できそうです。
(略称も「コンテナアクア」で良さそうです)

個人的にもコンテナ・アクアリウムは結構持っています。
古いガラス水槽には、
どこで栽培されたのか分からない睡蓮が毎年花を咲かせ、
その下には採集したオオカナダモや買って来たマツモが茂っています。
中には採集してきたモツゴやギンブナ、ドジョウが入っています。
壁面にはタニシも這っています。
レッドチェリーシュリンプを一匹だけ入れてみたところ、
随分と大きくなり、見応え充分な個体となっています。

綺麗に咲いた産地不明スイレン。
買ってきたスイレンが咲いている容器が「ビオトープ」はさすがにあり得ないです。
ただの屋外栽培です。

どうも皆さん「水生生物の屋外飼育栽培の総称が欲しいだけ」という印象。
良い呼び名がないので、仕方なく仮に「ビオトープ」と呼んでいるといった雰囲気。

発泡スチロールのトロ箱には、アオミドロが茂り、採ってきたクロメダカが泳いでいます。
小さな子メダカがたくさん孵化して、アオミドロの隙間の水面を、何かをつまみつまみ泳いでいます。
深い発泡スチロールの容器には、
一時期、底の泥の中にアカトンボと思われるヤゴがたくさん発生しました。
採集してきたホテイアオイが花を咲かせ、
根っこに付いていたヨコエビがしばらく繁殖していました。

もう太陽光線でだいぶ傷んでいるプラケースには毎年ミジンコが湧いています。
元は田んぼから採ってきたミジンコです。
完全に乾燥させてしまうこともあるのですが、
休眠卵という状態で堪えているのか、
水を注ぐと元のように賑やかに泳ぎ回る姿が見られます。

これらはいずれもビオトープではないと思います。
採集してきた生き物を入れていますし、
購入した外来植物や、外来生物も入っています。
太陽光線でないと、なかなか維持や栽培がむずかしいものを
屋外で育てているといった程度です。
しかし、なぜか一般には水生生物を屋外で栽培飼育すると、
それだけで途端に「ビオトープ」と呼ばれる事が多いようです。
ただの屋外飼育容器ですから、
屋内の水槽などと同様の意義です。
外にあるか中にあるか程度の違いで、
自然を回復するとか復元するとかという意識は含まれていません。
コンテナ・アクアリウムと呼ぶ程度が妥当のものです。

エビの周辺には「商品名のミゾレヌマエビ」や「商品名のミナミヌマエビ」、
そして「商品名のビオトープ」といった、
なにかと「商品名の・・・」と書かなければならないものが多い印象です。
全く違う種類や、混ぜたら問題な種類、完全に逆向きの意味を持つものなどが、
同じ一つの名前というのは困りものだと思います。
水草と生き物をセットにして、屋外に置く容器を、
商品として構成した時に、うまい相応しい呼び名が無かったので、
ちょうど流行り始めていた思想の名前を拝借して、
臨時で商品名として付けたのではないかといった感じですが、
元の思想が高尚過ぎる為に、
命名の悪い例の代表として語り継がれそうな印象です。

一般的にも、共有できるピッタリな名前がないから、
見た目が似ていて、一部は重なっている部分もある「ビオトープ」という言葉を使っているという雰囲気で、
もっとピッタリな名前があれば、別に深い思想があるわけではないので、
簡単に呼び名など変えられると思います。
水遊びや土遊び、植物栽培や水生生物飼育がしたいだけ、だと思います。
「したい!」という欲求があるのに、その行為に的確な名前がない。
だから、意義は正反対だが似ている「ビオトープ」が使われ続けているだけ。
ふさわしい名前を付けさえすれば、それで解決と思います。

外来植物満載のコンテナ・ガーデンと似たように、
外来植物・外来生物満載で、
それらを中心に、害虫を駆除しつつ楽しむわけですから、
最初からコンテナ・アクアリウムという感じがふさわしいものだと思います。

 

【ビオトープではなくコンテナアクアだと思うあれこれ】

●ビオトープは地域の自然の復元や回復ですから、
沼や池ではなかった土地に小さな人工池を作ってもビオトープではない印象。
丘であったなら丘の生態系、森であったなら森の生態系、草地だったら草地のビオトープ。
●ビオトープは生き物に自由に住んでもらう、利用してもらうだけですから、
強制的に採集してきたメダカやエビやタニシを放したら、その時点でただの飼育槽な印象。
●蚊やヤゴを殺してしまったら、ビオトープではない印象。
●植物につく害虫を殺虫スプレーで殺したらビオトープではない印象。
●ミナミヌマエビなど、買って来た生き物を入れたらビオトープではない印象。
●買って来たスイレンなどを植えたらビオトープではない印象。
●メダカに餌をあげてしまったらビオトープではない印象。
●水を飲みに来るハチを追い払ったらビオトープではない印象。
●得体の知れない雑草を抜いたらビオトープではない印象。
などなどなど・・・・・

それぞれの異なる行為は、それぞれのふさわしい名前で呼んだほうがいいですね。

 

2008/07/23


2008/07/24 更新

 


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