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ミナミヌマエビとシナヌマエビ類は交雑しないのでは?

【まさに今絶滅の危機に瀕している日本固有種ミナミヌマエビを救え!!】
http://kaken.nii.ac.jp/en/p/18922035/2006/1/ja2006年

という、研究活動?があるようですが、以下のPDFを読んだ限りにおいては、
交雑実験を繰り返したといった部分はありません。

http://phytosoc.h.kobe-u.ac.jp/~hyogobio/summary09.pdf(PDFファイル。2009/11/22付
"カワリヌマエビ属の外来種(Neocaridina sp p.)が日本に侵入して定着している可能性が高い。
日本で『ミナミヌマエビ』と呼ばれるエビは中国の複数のエビが混在して
『日本固有亜種ミナミヌマエビが絶滅の危機に瀕している事』が危惧される。
菅生川ではカワリヌマエビ属の外来種とその交雑種が混在している。
『ミナミヌマエビ』は分布域が日本の南半分であるが、
本来の生息域以外の東北や関東でも採集されており、
現在、標本に基いたNeocaridina sp p.の国内分布図が出来つつある。"

"カワリヌマエビ属の外来種とその交雑種が混在している"
という部分。
交雑しているのは、中国の複数の外来種同士と考えるのが妥当に思えます。
各外来種の原種と、それら原種同士の交雑種が棲んでいるのみ。
ミナミヌマエビはそこに入っていない可能性が高い印象。
ミナミヌマエビとの交雑種とは書いてありません。
以下にある各情報においても、交雑実験は一切なく、危惧や可能性のみ。
遺伝子を比較して系統(クレード)が確認された個体同士による、
単純な交配実験が行われたとは、どこにも書いてありません。

 

●外来個体群の侵入・分散に伴う淡水エビ類の遺伝子汚染と共生システムの撹乱(2007〜2009
http://kaken.nii.ac.jp/ja/p/19310150
雄の歩脚の湾曲が有効な相違点。

●外来カワリヌマエビ属の侵入・分布拡大プロセスと在来種との関係(2009年3月
http://www.esj.ne.jp/meeting/abst/56/L1-11.html
"mtDNAの解析からは、日本国内の複数の地域で、在来亜種との交雑の可能性が高い地域もみつかった"

●mtDNA分析により検討した中国産カワリヌマエビ属の侵入(2009年3月)
http://www.esj.ne.jp/meeting/abst/56/PA2-605.html

●外来個体群の侵入・分散に伴う淡水エビ類の遺伝子汚染と共生システムの撹乱に関する研究(2008年)
http://kaken.nii.ac.jp/ja/p/19310150/2008/3/ja

●外来個体群の侵入・分散に伴う淡水エビ類の遺伝子汚染と共生システムの攪乱に関する研究(2007年)
http://kaken.nii.ac.jp/en/p/19310150/2007/3/ja
"ミナミヌマエビの自然分布域内では18個体群中7個体群は在来クレード、7個体群で外来クレードが検出、
また4個体群で両クレードが混在し、在来ミナミヌマエビとの交雑による遺伝子汚染の可能性が示された。
一方、分布域外の個体群はすべて外来クレードだった"

●オウミア No.80 琵琶湖研究所ニュース (2004年6月
http://www.lberi.jp/root/jp/05seika/omia/80/bkjhOmia80.htm
シナヌマエビについて

 

多くの集団の中に、2つの系統が含まれているという感じで、
肝心の、一匹の中に、外来種と在来種の遺伝子が入っていたといった、単純明解な部分がありません。
常識的に考えれば、
簡単に交雑して雑種が出来てしまうのであれば、より衝撃は強いわけで、
保護したいのであれば、その部分は強調されて然るべきです。
「それは一大事だ!早急に保護しなくては!」となる気運が高まるわけです。
しかし、歯切れが悪くて、曖昧で、どっちとも取れるようなボヤ〜ンとした内容です。
このあたりを読んだ限りでは、

実は、交雑しないのでは?

という感じがします。

 

イシガキヌマエビ
http://www.pref.okinawa.jp/okinawa_kankyo/shizen_hogo/rdb/sp_data/k-01069.html
イシガキヌマエビと台湾産シナヌマエビは交接して、2世代まで出来る、という単純な結果。
こういうのは非常に分かり易いです。

遺伝子比較の為の「筋肉」を採取すると死んでしまうのであれば、
触角や脚から採ることは出来ないのでしょうか?
再生できる部品から採れば、その個体を死なせないまま、交配実験にまで使えそうに思えます。
すぐさま標本にしてしまい、交配実験は出来ないという感じに思えますが、
そのあたりを工夫しないのでしょうか?
なんとも歯がゆい印象です。

今現在、日本本土に生息しているのは、
1.日本固有亜種ミナミヌマエビ
2.中国の複数のカワリヌマエビ属の各原種(heteropodaやpalmata)
3.その中国の原種同士が混ざった交雑種
という3つがあるだけなのかもしれません。

日本固有亜種ミナミヌマエビが交雑したという、はっきりとした情報が今一つ伝わって来ません。
いつまで経っても交雑実験すらしないみたいです。
「南、なんだか最近イライラする」という感じ。
提示された危惧や危険性の割りに、その後の速報は無し。


商品名“ミナミヌマエビ”に含まれる各亜種同士が水槽内で交雑するのは、
多かれ少なかれ、一般でも経験できるものであって、これは改めて知りたい事柄ではありません。
知りたいと思うのは、遺伝子解析で確実に純粋な日本固有亜種ミナミヌマエビが、
交配実験によって、外来カワリヌマエビ属の各亜種群と交接し、交雑した子孫が誕生した、といった部分のみです。
Web上の情報では、この単純で確実な情報は無い印象。
持って回った遠回しの「危惧」や「可能性」のみ。
上記のPDFによると、中国固有のヒルミミズを付けたカワリヌマエビ属が発見されたのは2003年の夏
水槽でのヒルミミズの観察に重点が置かれているようで、エビの交雑実験には興味はないのかもしれません。


この驚異的な爆殖生物を7年放置するという事は、逆に考えると、「交雑の可能性は低いから」と取る事も出来ます。
(実際には1969年頃から韓国から輸入され始め、1994年から中国から大量に輸入され始めたらしい)
実は交雑実験は済んでいて、慌てるほどの危険性はないと捉える事も可能に思います。
「危惧」が緊急性を要するものであれば、初動が肝心な事柄です。
それを特に必要としている印象はないですから、
逆に、「交雑しない安心な生物」と考えて良いのかもしれません。
遺伝子解析のない時代からオオサンショウウオの交雑を38年間放置したのと、
それがある最近の7年間の放置では、重さの違いは感じません。
むしろ世代交代の早さでは、断然エビのほうが緊急です。
寿命が短いですから、短期間、わずか数年で全個体が入れ替わる可能性がある生き物です。
それを解かっていない筈も無いですから、「交雑しない」という言葉が浮かんできます。
漏れ聞こえてくる量程度の、極めて少ない危険性という認識が妥当という感じです。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20101018/t10014644721000.html
※オオサンショウウオの寿命は100年以上とも云われています。
つまり、38年前の個体が生きていても普通。
そして、産卵期は年1回らしく、夏の終わり頃のみらしい。
38年経っても、交配回数は38回。
対する、ミナミヌマエビ・シナヌマエビ類は、寿命は3年未満と考えるのが普通。
7年前の個体は居ません。
産卵期は、厳冬期以外、常に繁殖し続ける。
毎月産卵するのが普通で、
産まれて3ヶ月と待たずに繁殖に加わります。
つまり交雑機会は、物凄い頻度で、
交雑しているのであれば、侵入を受けた水系では、蔓延は簡単と考えられます。
事実なら一刻を争うどころか、1分でも早いほうが良いことになりますが、
そういう危機意識を持った感じもありません。
(あきらめているのか、歓迎しているのか、安心しているのか、さっぱりわかりません)

 
良く似た同じ中国産でも、交雑しない種類同士はある訳で、
酷似しているから、交雑の可能性が高いとは言い切れません。
※この2種類に関しては、タマゾン川にも定着のニュースは聞きません。
当初、紅白エビで埋まる川や池が出来るのでは?という話題がありましたが、
さすがに弱過ぎるのでしょうか?
外来エビの大発生は、シナヌマ系のみの様に思います。(スジ系も見掛けますが)

これが大量に湧く河川や池沼の噂は聞きません。
一匹も逃がされていないとは、およそ思えませんが、
簡単に見付かって餌になってしまうのかも。

 

2010/10/23


2010/10/23 更新


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