無給餌飼育で真っ赤っか


「CRSを無給餌飼育にすると発色が良くなる」という話があります。
(詳しくは「★かつかつワールド★http://park6.wakwak.com/~katsu2/」、
アクアリウムワールド〜がんばれクリスタルレッド!http://park6.wakwak.com/~katsu2/aquarium/ebi/ebi.htmで)



私の所でも、たまたまですが、無給餌だった水槽で同じ効果が見られました。
エビは水槽内の個体数が少なく、水草がジャングル状態であれば、
食べて欲しくても与えた餌を食べてくれない事の方が多いくらいですから、
無給餌飼育自体は、エビの飼い方としては特に珍しい飼い方ではないでしょう。
水槽内では自然発生した微生物がエビの餌となるため、それらが豊富なら、エビは人工飼料などプイッなのです。
自然発生した餌で賄えてもらえるのが一番楽な方法なので、これはエビの手抜き飼いの常套手段でもあります。
ところがこの無給餌飼育をCRSに当てはめると、とても素晴らしい二次的な効用があるのですね。

底床掃除の際に吸い込んでしまった稚エビを排水前にポイッと入れておく30cm水槽があるのですが、
ここで育った仔エビは、どういう訳か皆、見事に色が濃いのです。
入れる個体はプロホースに吸われるくらいですから、生まれたてに近い大きさのものばかりです。
使い込んだ小粒の富士砂の底面濾過で、中にはマツモとウィローモスがコケやアオミドロと絡み合って
巨大マリモのような状態になっています。
私の管理がウィローモスに合っていないのか、たいがいウィローモスは「苔ローモス」と化してしまうので、
ここはその「苔ローモス」の隠居先でも有ります。
この水草群が少なかった頃は、忘れた頃に与える程度のプレコタブレットのカケラに
5ミリを超えたほどの稚エビが集まりましたが、
水草(コケ)が茂った現在では誰も集まらず、そのまま何日でも置いてある状態になり、やがてカビてしまうので、
人工飼料に関しては、現在、完全に無給餌になっています。
生まれたばかりの稚エビは人工飼料に噛り付きませんから特に問題はありませんが、
1cmを過ぎた個体には、やや餌不足な様で、採餌活動はせわしいです。
しかし、野生の個体と似たような食性に馴染んでしまっているためか、
ヌカエビの採集個体に餌を与えた時に人工飼料には見向きもしないのと同じような嗜好になっているようです。

人工飼料の投入が無いと、5ミリから先の成長は、ひじょうに悪いです。
2ヶ月近く経っても1cmに到達した者がほとんど居ないといった有様です。
正直なところ、いつ見ても同じ大きさ。「仔エビのまま」といった感じです。
しかし、その体色は、ワインレッドとピンクを足したような赤で、濃さも素晴らしく「濃い」です。
白も「漆喰」のような厚みを感じます。
甲羅自体にも「照り」があるんですね。斜めからの光に輝いています。
給餌飼育の水槽の同サイズの個体は、ちょっとオレンジっぽい赤なのですが、
これと全く同じ血なのに、プロホースに吸われた事がきっかけで、こうも変わるとは驚きです。

給餌飼育との違いを最も感じさせられるのが、真っ暗にしていた水槽の明かりを急に点けた時です。
普通、点灯直後は薄い桃色だったり、白の部分が半透明になってしまったりしているものですが、
この水槽の個体は、濃い赤は濃いまんま。白い部分も白いまんまなのです。
明るい状態の時の体色と全く差がありません。
(ちなみに、この水槽に普段は照明を使用していません。ガラス越しの太陽光の直射or間接光です)
ここの水槽だけ、初めてCRSを水槽に入れた時の感動を、そのまま味合わせてくれているという状態です。

暗い状態でも赤の濃さ、白の輝きに変化が無いです。

熱帯魚ショップの水槽でも、CRS販売用の水槽に入っているものより、
水草コーナーのディスプレイ用水槽に居るCRSの方が格段に色が濃いです。
水草販売の看板水槽ですから、おそらく苔が生えないように、そして生えた苔も食べてくれるように、
餌は控え目か、ほとんど与えていないと思われますが、CRS販売水槽より明らかに「真っ赤っか」です。


なぜなんでしょう?

1.ゆっくり成長する事によって、体表に色素細胞が十分につくられ、緻密に配置される?
栄養満点の人工飼料だと体自体の大きさは短期間で大きくなりますが、
あまりに体が促成されると色素細胞が体の表面積の広がりに追いつけないのかもしれません。

2.発色に必要な成分を含んだ微生物を取る頻度が多くなる?
人工飼料を与えないと、水草の先の方まで実に丹念にツマツマするようになります。
こうして食べている微生物の中に、色素に変化させやすい成分を多く含んだ種類があるのかもしれません。
猛毒で知られるフグがありますが、このフグを養殖すると毒が出来ないそうです。
フグは毒を自分でつくる訳ではなく、天然の食べ物から取って蓄積しているからだそうです。
人工飼料には発色に必要な微量成分が少なくて、これだけで満腹してしまうとそれが摂取不足になり、
発色に影響するのかもしれません。
あるいは人工飼料を消化するのに特定のビタミン等が消費され、色の方へ回らないとかでしょうか?


まるで、サンタさんの衣装。

あと他の水槽と違う所というと、ウィローモスの有無です。
昔、元祖ビーシュリンプを無闇に殖やしていた頃にウィローモスを入れていた記憶はありませんでした。
最近になってCRS飼育にウィローモスは必須という話を多く聞き、入れてみたという感じです。
しかし、魚水槽で綺麗に育てた経験はあるのですが、
エビ水槽だと前述の「苔ローモス」と化してしまうので、ほとんどの水槽から撤去。
エビに、アゲハチョウやモンシロチョウのような「食草」が決まっている訳でもないでしょうから、
エビを育てる分には、似たような効用さえあれば、オオカナダモでもアオミドロでも良いと思っています。
しかし、無給餌にした場合は、ウィローモスはやや有利かもしれません。
微生物が住み着き易そうな重なりを多く持つ緻密な葉の構造や、それぞれの葉が折り重なる多層構造で、
水槽内に膨大な表面積が産み出されるのは事実でしょう。
この表面積のすべてに、余す所無く、なんらかの微生物がぎっしり住み付いていると思うので、
付着微生物が主食のCRSに有益であることは間違いないと思います。
しかもCRSは小さな葉に包まれた空間の中にまでは手を突っ込まないでしょうから、
たとえウィローモスの表面全ての微生物が食べられても、
折り重なった葉の中に居る者が殖えて、また外に出て来ます。
これが微生物の安定供給の役割を継続的に果たし、
それがCRSの色揚げ効果にまで結び付いているとすれば、
無給餌で楽に色揚げが行なえるアイテムとして、ウィローモスの使用は合理的かもしれません。

他にもほぼ無給餌の水槽はあるのですが、こちらの水草はマツモとアナカリスがほとんどです。
葉っぱの総表面積では、そんなに差は無いのでは?と思うくらいに水草豊富な水槽ですが、
ここのCRSの色は他の水槽の平均的な色合いのままです。
「ウィローモスで無給餌」であることがグレードアップの本命なのでしょうか?
(しかし、前述のショップの水草水槽にはウィローモスは入っていなかったですが・・・水草の種類の豊富さかも)
富士砂の効用も疑いましたが、白線部分の色がもっとも薄い個体が多い上面濾過水槽の底床が、
実は同じ富士砂なので、富士砂の影響ではないようです。

水質や光量にもよると思いますし、各々の水槽内に自然発生する微生物の種類にも影響されるでしょう。
しかし、稚エビの時期から完全に無給餌だと色揚げ(グレードアップ?)に効果があることは確かなようです。
「幼少期に水槽内の微生物のみを食べて、ゆっくりじっくり成長する事が有効」なようで、
この水槽に、すでに色(特に白線)の落ちた1.5cmくらいの個体を入れてみても、
全く色は揚がりませんでした。
白が眩しい。
赤白くっきりなのが稚エビからずっとほぼ完全無給餌だった個体。
あとから入れてみた半給餌飼育の個体との色の差は歴然。
この半給餌飼育個体の同サイズだった時期に、ここまでの輝きはありませんでした。
無給餌の成長は著しく遅いので、小さくても、おそらく年上です。


発色の劣化は代を重ねた為?

この無給餌飼育で色が揚がる現象から、代を重ねる事による発色の劣化と思われているものが、
実は、水槽内で自然発生する微生物の種類や量の減少との関係である可能性も出てきます。

最初、1桁程度の数を購入して水槽に入れた場合、エビの数に比べて環境がとても広大ですから、
この状態だと水槽に自然発生する微生物が豊富なため、餌を与えても食べない事の方が多いでしょう。

やがて二世代目が誕生します。
二世代目の最初の頃の稚エビ達は、人工飼料には見向きもせず、豊富な微生物を食べ、良い発色をします。
しかし、二世代目も後半になると、生まれた時には、水槽内に兄や姉がたくさん住んでいます。
微生物は彼等に四六時中食べ続けられ、僅かな量しかありません。
この頃には、親エビも仔エビも人工飼料にしがみ付いて食べていることでしょう。
稚エビの色も、全体に何となく薄くなったような・・・

順調に三世代目が生まれるようになると、いわゆる爆殖という状態になります。
水質を維持するための頻繁な水換えによって絶えず水は薄まり、貧相な生態系となっているでしょう。
人工飼料の投入を欠かす事が出来ないほど個体数が増え、水草は穴があくほどツマツマされる。
水草の表面に付着するような種類の微生物は、かなり減るでしょう。
こうなると稚エビの口に入る微生物は、食べ残された人工飼料や親の糞などを分解する種類などばかり。
この頃から、さらに色の宜しくない個体が多く出始める・・・

つまり、二世代目が誕生した頃の環境が「無給餌飼育」に近い環境だと思います。
個体数の多い水槽で代を重ねて発色が落ちてきたエビ達に、
この頃の水槽を再現した環境を与えてみて、生まれてきた稚エビ達に色が戻るのであれば、
それは、血の劣化ではなくて、水槽内の微生物群の劣化なのかもしれません。


残念ながら太い白線にはなりません

このたまたま無給餌になっていた水槽ですが、吸い込んだ時期が同じだったのか同腹の仔が多いようで、
育っている個体の模様には、似たような白色部分の「飛び」が見られます。
白色部分の質自体は良いのですが、残念ながら無給餌でも面積が増える事はなく、そのままです。
血によって決まっている面積は、変え様がない感じです。
しかし、筋の良い稚エビであれば、さらに白味を増す効果は期待できるかもしれません。
この無給餌飼育作戦。前述の様に、似た環境を若エビや親エビにも与えてみましたが、
目立った効果はない感じです。
稚エビの初期の段階から1cmくらいまでの間、無給餌で育つ環境である事が一番重要なようです。


発色は良くても、白線の面積は増えませんでした。


あまり餌が少ないと

水槽内に自然環境に類似した生態系があれば、
エビが餓死することはあまり無いとは思いますが、
成長が遅いと云う事は、餌が足りていない事に近いものでもあり、
その先に餓死がないとも限りません。
餓死までいかなくとも、体力・免疫力の低下によって死亡する可能性もあります。
先の30cm水槽ですが、元々一時的な投入場所目的だったため、
餌の充足には程遠かった様で、1cmから先の成長には支障があり、死亡率も高めでした。
栄養価の高い餌で、やたらと促成させないという事は、この色揚げの重要な要素のひとつだと思いますが、
水槽が小さすぎると生育に支障を来たすほど餌が足りなくなる場合もあるようです。
無給餌と云っても、それは飼育者が特に飼料を与えないというだけで、
エビ自身は必要量の最低限は食べなければなりませんので、
成長や体力維持に必要な量の食べ物が、水槽内で自然に生産されている事が前提となります。
できるだけ大きな水槽で余裕を持った環境にした方が、成長スピード、死亡率ともに向上すると思います。
(無給餌でも充足した食事ができて、成長スピードも速かった場合にも色が濃いのかは分かりませんが)

あと、個体数が多い水槽で、いきなり餌をあげないようにすると、
空腹になりすぎて共食いが起きる危険性もあります。
餌を与えても見向きもされない程度の飼育密度や自然度の濃さであることが大切でしょう。


2003・09・23 


2003/10/01 UP


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