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末永くエビ飼育が楽しまれる為のたった一つのルール

エビを飼う上で守るべきルールは一つだけ。「放流しない」です。

エビを放流すると、

・外来種が河川・池沼に棲みついて増えてしまう可能性があります。
・陸封種の地域性が乱されます。国内の在来種だからといってあちこちに移植するのは御法度。
・そこに存在しなかった病原菌、寄生虫、共生生物を放す事になります。⇒【エビの寄生虫色々
・水槽内で近親交配した弱い集団が大量に放たれて、川に居たエビ達が弱体化してしまいます。

「飼育水槽に一度でも入れたら放さない」と思っておけば楽で安全です。
特に、世界各地のエビが飼育対象で、混育をしている場合ほど当然です。
放そうと思ったエビだけと思ったら、外来種の稚エビが袋の飼育水にたくさん入っていたとかは普通でしょう。
各国由来の寄生虫や病原菌の危険性は当然です。
(直接エビとは関係ありませんが、外来の水草の切れ端や、そこに付いた外来魚の卵、巻貝などもあります)
持ち帰ったエビ専用に新規に水槽を設置したというのであれば、まだ放してOKかもしれません。
それは個々の良識の判断です。
様々なリスクを考える必要がなくて、最も楽で安全なのが、やはり、
「水槽の中のものは一切放流しない」と決めてしまう事です。

採集した場合はバケツの中で、何匹まで飼えるのか、どれを持ち帰るかを吟味検討して、
終生飼える事を決断してから持ち帰るしかありません。
持ち帰って水槽に入れてからではなく、採集現場で選別して、残りは川へ戻せば極力問題なしです。
一度水槽で飼ったら、もう戻せないと思って決断して下さい。
(川で採集したエビなんか水槽に入れたら、妙な寄生虫や病気を持ち込みそうで心配と思う方は多いと思いますが、
逆に、水槽の中の寄生虫や病気を自然界に持ち出す心配をする例を見たことがありません。
世界各地からの寄生虫や病気の集積場のような水槽から出されるほうが断然恐いと思います)

エビは大昔から人間に獲られて来た生き物ですが、採集によって絶滅することはなく現在まで来ました。
しかし、世界じゅうから様々な種類が輸入されている現在では、放流という行為で絶滅をする可能性があります。
エビは様々な生き物の餌になって食べられる事には、ある意味慣れているといえますが、
新しい外来種や、未知なる寄生虫、病原菌には慣れていません。
獲ることでは絶滅しなくても、放されることで絶滅する可能性は大きいです。
エビは「自然⇒水槽」への一方通行のみ。
そうであれば、特に問題はありません。
子の世代、孫の世代と、末永くエビ飼育は続けていけるはずです。

 

飼えなくなったら(飼う前に考えておいて下さい。出来ないなら飼わないのが無難です。他人の迷惑になります)

・同じ趣味の方にもらってもらう。(リスクを知らない人に押しつけたら逃がされます。自分が逃がしたのと一緒です)
・観賞魚店に引き取ってもらう。
・魚などの餌にする。
・調理して食べてしまう。(氷水に入れると気絶して調理は簡単)
などなど、放流しない方法を選択して下さい。

エビは、万が一水槽から逃げ出しても、
自然界に到達する前に干乾びてしまう、という生き物ですから、
ふつうに室内で飼っている分には、生態系への定着などを考えなくて済む、きわめて安心なペットといえます。
逃げ出してすぐ空中を飛んで行くこともなければ、土にもぐって隠れることもありません。
室内の壁を伝い歩いて小窓から逃げ出す事もありません。
小さな干しエビとして、発見されるだけです。
つまり、エビを飼育環境から生態系に一匹も出さないことは特に難しくなく、
室内でごく普通に飼っていれば、100%の達成率でしょう。

逆に言うと、生態系に棲み付いている外来種は、100%人為的な放流。
一般的な「逃げ出したペット」ではなく、「故意の放流」。
わざわざ水辺に持って行き、逃がしたということになります。

河川や池沼の生態系は、共有の財産。
・外来種が居て欲しくない人
・採集も一切して欲しくない人
・エビを含めた生き物に全然興味のない人
などなど、様々な考えの方々がいらっしゃる事を御忘れなく。
自分の物であるという意識で大切にするのも当然ですし、
ほかの人の物でもあるという認識は欠かせません。
(まだ産まれて来ていない人達との平等も大切です)

室内の水槽で爆殖させようが、交雑させようが、餌にしようが、死なそうが、
他人が関知するところではありません。
しかし、「放流」だけは、他人への不利益、生態系への負荷満載の行為です。

 

2006/10/01


実際に放流による絶滅が危惧されているようです。

http://kaken.nii.ac.jp/ja/p/19310150参照

日本各地に大量の“ミナミヌマエビ”が増殖中。
エビは販売名がイイカゲンな生き物ですから、こういう事が起こり得ます。
【まさに今絶滅の危機に瀕している日本固有種ミナミヌマエビを救え!!】
http://kaken.nii.ac.jp/en/p/18922035/2006/1/ja(活動内容は書いてありません)


2006/10/04 更新
2010/10/21 更新


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