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ツノナガヌマエビとミゾレヌマエビの見分け方は?

九州鹿児島以南にはツノナガヌマエビという、ミゾレヌマエビと良く似たエビが居るようです。
額角がミゾレヌマエビより長くて、反り上がっているのが特徴のようです。

採集した“ミゾレヌマエビ”の中にも、かなり額角が長い個体があって、
「もしかしたら、死滅回遊のツノナガヌマエビかもしれない」と思ったりもします。
しかし、この2種の明確な見分け方というものが分かりません。


なかなかに額角が長い個体。第一触角柄部よりも三分の一が抜けています。
定義的にはツノナガヌマエビと呼んでも不思議はなさそうですが・・・・・
卵巣があるので雌です。

ツノナガヌマエビの写真があるページ
ツノナガヌマエビの情報の中には、額角が短いものから、おそろしく長いものまであります。
ミゾレヌマエビとの区別は難しいそうで、写真を見ただけでは、個人的にも全く分かりません。
明確な相違点が見出せません。

琉球淡水エビ
http://www.h2.dion.ne.jp/~karo/new_page_21.htm
1.5cmということなので、子供なのかもしれません。
この長さだと、ツノナガヌマエビという感じは特にしません。
http://www.h2.dion.ne.jp/~karo/new_page_18.htm
ミゾレヌマエビのほうが、むしろ長く感じます。

エビ図鑑
http://homepage1.nifty.com/gebara/ebizukan/tunonaganuma.html
このくらいだと、普通に「ミゾレヌマエビの♂」といった印象です。

エビ御殿
http://www.geocities.jp/go_ue/tinnebi/tinebigoten.htm
これは明らかに長い感じがします。

ツドイカンパニー
http://www.tsudoi-company.com/photogallery/crustacea/tsunonaganumaebi.htm
ここまで来ると、もはやここにミゾレヌマエビは感じません。
模様的には一緒なのですが、額角が明らかに長いです。


雄と思われる個体。反り上がっていると言えば反り上がっています。


奇妙な印象を持つほどに長いです。

 

両種の見分け方についてですが、

川エビ雑話
http://www.geocities.co.jp/Outdoors/7766/kawaebi/ebisyurui/C.leucosticta.html
ミゾレヌマエビについては、こちらに額角の歯の個数が書かれています。

ヌマエビ類-5
http://www.interq.or.jp/jazz/rhinoda/aqua/ebi5.html
こちらには、ツノナガヌマエビとミゾレヌマエビの見分け方が少し掲載されています。
第一触角柄部先端をかろうじて越えるのがミゾレヌマエビ。
2分の1から3分の1で越えるのがツノナガヌマエビのようです。

 

しかし、おもしろいのが、と言うか困ったのが、額角の歯の数。

ミゾレヌマエビの額角の歯の数ですが、情報ごとに違います。
額角上縁⇒12〜30個、15〜20個、12〜30個、9〜28個、17〜25個
額角下縁⇒03〜22個、08〜12個、03〜20個、0〜16個、06〜14個

ツノナガヌマエビは、
額角上縁⇒14〜23
額角下縁⇒10〜20

つまり、
額角上縁⇒ 9〜14〜23〜30個
額角下縁⇒ 0〜10〜20〜22個
となって、ツノナガヌマエビの個数が、ミゾレヌマエビの中に入ってしまいます。
あれだけ長いのですから、もっと歯数があって欲しいものですが、数的には差がありません。
間を置いてまばらに生えているなら分かり易いですが、まとまって生えているそうなので、
この部分でも似ていそうで、単純に前の方の歯のない部分だけが長そうに感じます。

あとは、
「雄の第一腹肢内肢には内突起があるかないか」
「肛門前方の隆起に棘を持つか持たないか」
だそうですから、これは無理です。(ここまでは調べようと思えないです)

それにしても額角の歯数の個体差の幅には驚きます。
上縁でも2倍以上もあり、下縁に至っては全くない個体や3個程度があり、
多い個体では20個以上も並ぶようです。なかなかの個性です。
淡水エビでは額角の重要性が強調されている事が多いですが、
ここにはミゾレヌマエビ特有の歯数というものは感じません。
おおまかな平均値は勿論あるようですが、例外的な少なさの個体もいるのは確かなようです。

 

額角が長い“ミゾレヌマエビ”の写真集

以前に捕獲したミゾレヌマエビの中には、額角が長い者、短い者が居ました。
その中で、長めの個体を集めてみました。
長めの個体の額角にも、2種類の系統があるようで、
下縁の先端にも歯が多く並ぶ者、ほとんど無い者がありました。


第一触角柄部のこちら側に額角下縁が見えています。
かなりの歯数を数える事が出来ます。
額角はほぼ真っ直ぐと言ってよい個体です。


さほど長くはないですが、弓なりに曲がっている印象のある個体。


こんな感じの顔。けっこう長いですね。
第二触角鱗片との隙間が大きめです。
それだけ額角が反っています。


これも長く尖っています。柄部は軽々と越えています。


これもそこそこ長いです。真っ直ぐですけれども。


下から見るとこんな感じ。折れそうな額角です。


これでも第一触角柄部先端をはるかに超えています。
「かろうじて越える」のがミゾレヌマエビだという事であれば、
この個体はツノナガヌマエビに該当する気もします。


これも越えています。


これも超えてしまっています。
ミゾレヌマエビには第一触角柄部先端を軽々と超えてしまう長い額角を持つ個体も多い、
という事なのでしょうか。
これらが全部ツノナガヌマエビとはとても思えません。
シナヌマエビとミナミヌマエビの額角同様、個体差があって、一概に言い切れないのかもしれません。

ミゾレヌマエビには、国外も含めて南方に“ミゾレヌマエビ属”と呼びたいほどに近似種が多い印象。
シモニシモニは大卵型ですが、姿かたちはミゾレヌマエビそのままです。
不思議なのは、この小卵型のツノナガとミゾレが交雑しないのかということ。
琉球列島では混凄しているようなので簡単に混ざってしまいそうですが、
本当に別種として保たれているのかが興味津々です。
相互の雌の脱皮に反応して交接してしまいそうですが、
何かきちんとした生殖隔離があるのかが不思議です。
遺伝子を比較すると、ゆるやかに同種だったりするのではないかと想像してしまいます。

http://decapoda.nhm.org/pdfs/25084/25084.pdf
ここを読破すれば、違いが分かるのかもしれません。(PDF)

 

2010/08/10 


2010/08/11 更新
2010/11/05 更新


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