[エビ飼育あれこれの目次へ]



発光するエビの死体

ある朝、真っ暗な部屋のヌカエビ水槽を何気なく見ると、
4つの明かりがボーっと浮かんだ。
部屋の電気機器のLEDが映り込んでいるのかと思ったが、どうも違う。
明かりは水槽の中である。
目を凝らしてみると、ななんと、その明かりはエビの形をしているではないか!
見事にエビの形のまま、夜光テープや夜光塗料、あるいは蓄光剤のように、
ボワーッと暗闇に黄緑色の光を放っているのである。
部屋のドアを開け、光を入れて確認すると、そこには・・・

実は、この水槽、非常に調子が悪い。
アフリカンロックとヌカエビ、東南アジア産ロックシュリンプが
順調・平和に同居していたのだが、
そこへさらにロックシュリンプをトリートメント無しで追加投入。
この安易な投入が良くなかった。
その投入してすぐのロックシュリンプが立て続けに死亡した辺りから、
ヌカエビが毎日数匹ずつ死んでいるのが確認されるようになり、
慌ててロックシュリンプを他水槽へ移してみたが、
残ったアフリカンロックも一週間身悶えて昇天。
その後もヌカエビのぽつぽつ死亡が毎日続いていたのである。

さて、光を入れて確認した場所にはヌカエビの死骸と、やや弱った個体が・・・。
前日の消灯前には、よく見渡して一匹の死骸を発見し、取り出していますから、
それ以降の、夜中から明け方にかけて死亡、もしくは衰弱したようです。

一匹はピンク色になって完全に事切れていました。
二匹目は、まだ透明感を残しつつも少々濁った感じで、これも事切れています。
三匹目は、まだ生きていました。水草に頭を下向きにして普通に留まっています。
しかし、触るとコロッと水草から落ち、弱々しく脚をばたつかせる程度。
この個体の色は、ほとんど健康体と区別が付かない程度の透明感。
そして最後の四匹目。
この個体も下向きに水草に留まっていましたが、
点灯すると、他の光っていない個体とまるで区別がつきません。
たしかコイツだと思ったがと、触ってみてもごく普通に泳いでいました。
明るい光の中では只のエビの死骸と弱ったエビでしかないのですが、
これが真っ暗闇だとホタルック状態なんですね。
ちょっと興味深い現象なので何度も暗くしたり明るくしたりして確認しましたが、
やはりその4匹は明らかに発光していました。
ヌカエビは数え切れないほどこの水槽に居ますが、
光っているのはこの4個体のみ。

魚貝類の死骸と発光する状態から“発光バクテリア”が思い浮かびます。
発光バクテリアはほとんどが海に住む菌のようですが、
淡水にも居ない訳ではなさそうです。
黄金に輝くゴールデンテトラという魚が居ますが、
これも体表に発光バクテリアが共生しているらしいです。
しかし、これは明るいライトの下でも輝いていますから、
今回の可視光線下では黄金色を確認できないこのタイプの発光バクテリアとは違いそうです。

どうも死んだ魚介類の表面に居る、ありふれたタイプと似た感じです。
食用の魚やイカ、新巻鮭などに発生するタイプです。
ほぼ健康そうな個体から、完全に死骸となった個体までの、
見事に四段階の発光個体を見たわけですが、
ひとつ疑問なのは、生きている個体にも、死骸と同じ発光をするほどに
バクテリアが付着していた事です。
つまり死んでからバクテリアの分解を受ける時点で発光バクテリアに取り付かれた訳ではなく、
生きている状態で、すでに発光バクテリアが体に取り付いている事になります。
今回発生している死亡には、通常の弱ったエビの典型的な症状である白濁がまるでありません。
エビの白濁の進行と共に発光が強まるのならば、感覚的に非常に分かりやすいのですが、
暗闇で見た輝きの強さは、死んだ二匹と健康そうな透明な二匹で、違いが無かったのです。
弱ったから光ったのか、光ったから弱ったのか・・・

魚やイカと共生関係をもって、真っ暗な深海で、
光る魚を演出しながら生活する発光バクテリアも居ます。
共生関係を持った魚は、自分の体の決まった場所に発光バクテリアを囲って
なにかしら体から出る餌を与えて飼っているものと思いますが、
通常は共生関係を持たないと思われるエビが感染するとどうなるんでしょう?
発光バクテリアは死んだ魚介類を主に食べるようですが、
生きたエビに付いた場合は、生きたエビ自体をも食べてしまうのでしょうか?

というか、淡水には珍しいであろう発光バクテリアが、
なんでウチの水槽に?
ちなみに他の水槽で同日に死んだCRSを暗闇で見てみましたが光っていませんでした。
この水槽のみの現象。
う〜ん。やはりロック君の置き土産?(トリートメントはしっかりせねば)

(2004・5・21)

 

この発光死。
底面掃除に伴う水換えの強化は、まるで効果なしでした。
ある程度多めの水換えを何日実行しても、ヌカエビは毎日光って死んでいました。
天然塩の投入なども試みましたが効果なし。
菌を貪食する免疫機構しか持たないエビには、
単純に水の中に含まれる菌の量を減らす以外に方法はないと思い、
他水槽に移し、全滅覚悟の99.9%換水を連日実施。
100や200は居たヌカエビは、この時点で数十に減少していました。
体のあちこちに赤い炎症のようなものが見られ、炎症箇所が足やヒゲの場合は先が壊死。
この炎症が見られた個体は、次の日には確実に死亡。
結局、残った個体は、雄一匹、雌二匹。
このきびしい状態から、なんとか個体数回復は果たせましたが・・・ひどい目に遭いました。


ヌカエビに付いた、致死率100%だった赤班。
脚一本が完全に取れてしまう場合も。
発光と同一原因なのかは不明。



こちらは背中に付いたもの。
これが現われた個体は翌朝に確実に死んでいた。

※追記(2005・01・18)
ザリガニのサイトを読んでいたところ、

「バーンスポット(焦点)病」
http://www.geocities.co.jp/HeartLand-Gaien/2736/CLI11.html
という病気がザリガニにあることが分かりました。
ヌカエビにも発病するのかは不明ですが、
後期にあらわれた赤班の症状はよく似ています。
発光バクテリアによって体力を消耗したところに併発したのかもしれません。

 

2004/11/05 


[エビ飼育あれこれの目次へ]

inserted by FC2 system