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テナガエビ
湖沼産♂



貯水湖の放水路に居た♂の個体です。
顔先から尻尾先で9.2cmです。
海水とはほぼ無縁のタイプと思われます。
ヨシノボリ、チチブ、ウナギ、コイ、といった海や汽水とも縁が有りそうなメンバーも居ましたが、
ヘラブナ、マドジョウ、ブラックバス、ブルーギル、アメリカザリガニ、タニシ、ドブガイといった
無縁メンバーも生息している場所でした。
マテナガは、河川下流域(汽水)型、河川静水域型、湖沼型など、生息地ごとに違いが見られるようで、
遡上とか回遊とは無縁ということなので、まず湖沼型と判断できそうです。
ウグイ・オイカワの稚魚やカマツカが居るあたりにもマテナガは生息しているので、
それらとの違いもあるのか興味深いところです。
(同一水系の河川静水域産と湖沼産は、放流個体でなければ、同一個体群という気はします)
上から見た限りでは、汽水産の個体と異なる印象はありませんでしたが、
横から見ると、随分と「m模様」が薄いです。
薄いというよりも、ほぼ消滅しています。
手足の関節の黄色やオレンジの模様もほとんど感じません。


長い第二胸脚のハサミ部分には、間にまでややオレンジ掛かった毛が密生しています(右下)。
この手を使った餌取りには、若干の不自由さは感じられます。
先の部分のみで餌を挟んで口に持って行く行動が見られ、
途中の部分にはそれは望めそうにありません。
毛があきらかに邪魔という感じです。
(なぜここまで生える必要があるのか不思議です。特に用途を感じません)
全長が9cmの個体にしては、ハサミ脚は短めな印象です。
おそらく順調な成長をした2歳だと思います。
(あるいはやや成長の遅れた3歳)
テナガエビに関しては、寿命は1年という記述も結構見かける気がします。
この大型個体が一年で成立するとはとても思えませんし、
純淡水型スジエビ・サイズの個体も一緒に採れますから、
大型個体までもが一年で完成されているというのは個人的には納得できません。
ただ、生後一年と思われる小さな個体も繁殖には参加するので、
一年で世代交代が回って行くことは可能です。
大きな個体が存在しない地域というのがあれば、寿命1年というのも頷けます。
(生息する全個体が淡水型スジエビ・サイズのままで死滅する地域限定という事。
その場合、テナガエビなのに、テナガエビらしさを感じる事のない地域ということになります)


あまり綺麗とは思えない場所に居た為か、色々な付着生物に覆われています。
ツリガネムシのような生き物が背中にたくさん立っています。
導入当初、盛んに体の掃除をしていました。
器用な第一胸脚で長い腕を丹念に掃除するさまは、
日本刀を手入れするかのようです。参照⇒汽水型の体の掃除汽水型は皆きれいですが。
画面中央と、そのやや左に、肝上棘、触角上棘といった、
テナガエビを形状から同定するのに使われる棘が見えます。
参照⇒http://www.geocities.co.jp/Outdoors/7766/kawaebi/kawaebizatuwa.html【川エビ雑話】
川エビの体のつくりの解説は非常に勉強になります。


指節はマテナガそのもの。
ピッケルのような印象の足先です。
手の甲で歩く感じで、つま先を挫きそうな歩き方です。
もう少しつま先を伸ばして歩いたほうが、足を傷めないで済みそうですが、
常にこれ以上に内側に曲げて歩きます。
なにかバレリーナのつま先を見ているようで、
見ているほうが落ち付きません。
大型で体重も重いですから、細かい砂を敷くべきかもしれません。
【参照】ミナミテナガエビとの大きな違い⇒番匠おさかな館の図鑑
↑ここは良いサイトです。エビ間違いが見当たりません!
「淡水エビは見た目では識別できない」という事に勝手になっているだけあって、
淡水エビの種類間違いは身近な出版物では常態化しています。
逆に考えると、“見分けられないのに見分けてしまう”という悪癖が日常化しているとも取れます。
「ヌカエビは小卵型で、幼生の生育には海水が必要」
と、長い間説かれている研究者の方もいらっしゃったりしますが、
このあたりも、この悪癖からの種類間違いという可能性もあるような気がします。
小卵型のヌマエビ南部群や、本物のミゾレヌマエビあたりをヌカエビと間違えれば、
そのような誤認は簡単に生まれることは想像できます。
いずれにしても、過去に研究された論文の信憑性すら怪しくなってしまう見分け間違いの多さは、
当事者の中できちんと解決しておいて頂かないと困る気がします。
研究に際しても、そのような悪癖で見分ける慣習なのであれば、
全部もう一度やりなおしに成り兼ねない印象すら持ちます。
当然、それらの本やサイトを読んで「蝦道」を極めようと思っている人達にも大マイナスなのは間違いなしです。
種類を憶えるという最初の部分で、いきなり間違えた種類を憶えさせられてしまいます。(被害者・談^^)
※このサイトに感じた要注意点
1、あくまでも九州大分県に生息するエビの情報です。
2.ヌマエビと書かれているのは、現在のヌマエビ南部群(旧ヌマエビ小卵型)。
3.ヌマエビ北部−中部群(旧ヌカエビ、旧ヌマエビ大卵型)は載っていません。
4.全国に定着しつつある外来シナヌマエビ類も載っていません。


テナガエビを格好良く見せる額角も、
前から見ると役に立ちません。
同じ個体なのですが、正面の顔は、別の生き物かと思うほどです。
精悍さがまるでなく、愛嬌ある顔です。
ビロードに包まれたような印象は、全部付着生物の仕業です。
手入れ好きな彼等が、ここまで汚れるわけですから、
自然の湖沼や河川の生物量の多さを感じます。
(湖沼や河川の淡水のみでもゾエアが育つのは頷けます)
そのうちに綺麗に成るとは思いますが、
それまでは、こちらまで痒くなりそうな姿です。

2008/08/20


 


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