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本土産淡水エビの分布図

個人的な、本土産テナガエビ科4種と、ヌマエビ科8種の分布予想(あくまでイメージです)。
各種小卵多産型のエビは黒潮や対馬海流と密接で、暖流の通りに分布するといった感じ。
マテナガやスジエビには、汽水で平気だったり、汽水が必要だったりといった個体群があり、
ヌカエビとミナミヌマエビは地域限定の陸封種。


青字が両側回遊種
茶色が陸封種
緑字は陸封個体群も回遊個体群もある種類


ヒラテテナガエビミナミテナガエビ テナガエビ科テナガエビ属

小卵型・両側回遊種
小卵型は、日本海側、特に北へ行くほど数が少ないようです。
小卵型はこの沿岸部分から、内陸へ河川を遡上する。


テナガエビ テナガエビ科テナガエビ属

本州・四国・九州

河川では、中流域〜田園地帯〜感潮域まで連続的に生息する。
大きな湖〜都市部の公園の池や沼にも多い。
卵の大きさには違いがあるそうですが、別種とするほどの違いはないようで、
ゆるい流れの環境ならどこでも棲めて、どこでも稚エビが親の周囲で着底してしまうような印象。
ただ、河口域群は両側回遊とされている(距離は短そうですが)。
汽水湖にも多いようです。
・南方の河川ではミナミテナガエビのほうが優占するようです。


スジエビ テナガエビ科スジエビ属

北海道・本州・四国・九州

A型・・・・河川上流域群 中卵型・陸封種(おそらく淡水湖沼の個体群もA型)
B型・・・・河川下流域群 両側回遊種
C型?・・・・釣餌用モエビ・シラサエビや輸入ブツエビの混ざり起源と思われる大卵型が自然繁殖しているようです。

・A型とB型は、ほぼ別種だという判断がされているようです。
A型はスジが薄く細く、透明度が低い印象。体も小型。
B型はスジ模様が太く濃く、体は大型。頭胸甲長5cmという個体もあるらしい。⇒頭胸甲長5cmはさすがに怪しい
※頭胸甲長とは眼窩後縁〜頭胸甲と腹節の境までの長さ。
・B型が全国各地の河口域に必ず存在するのかどうかは不明。
・近年、北海道に外来個体群が入り込んでいるよう。
・輸入の「シラサエビ」と、「ブツエビの混じり」では模様に違いがはっきりあるよう。輸入でも産地が違う印象。


ヌマエビParatya compressa ヌマエビ科ヌマエビ属

小卵型・両側回遊種
http://ir.library.tohoku.ac.jp/re/bitstream/10097/16879/1/A2H060505.pdf
・沼のみで再生産できない為、典型的な沼には生息しない。
・西日本の沼や池に居たのは、ヌカエビの頭に歯がある個体群(旧ヌマエビ大卵型)。
・北陸や新潟のヌマエビParatya compressaは新ヌカエビParatya improvisaだった可能性が高そうに思います。
・近年、なぜか北海道の一部の河川で大量に生息するようになったようです。侵入ルートは不明のよう。
・観賞用“ミゾレヌマエビ”は、このヌマエビであって、本当のミゾレヌマエビが売られる歴史はほぼゼロ。
http://www.esj.ne.jp/meeting/abst/56/F2-05.html
琉球列島産とは若干違う。


ヌカエビParatya improvisa ヌマエビ科ヌマエビ属

中卵型・陸封種
http://ir.library.tohoku.ac.jp/re/bitstream/10097/16879/1/A2H060505.pdf
・ヌカエビには、頭に歯が並ぶ西日本の個体群がヌマエビ(大卵型)とされていた時代があります。
・旧Paratya compressa compressa large egg typeが、より南方に生息している可能性はあるかもしれません。
・ヌカエビやスジエビは陸封種ですから、閉鎖された各水系で亜種に近い分化が進んでいる様です。
卵の大きさやゾエア期間などが違います。


ヤマトヌマエビトゲナシヌマエビヒメヌマエビ ヌマエビ科ヒメヌマエビ属

小卵型・両側回遊種
日本海側は少ないようです。


ミゾレヌマエビ ヌマエビ科ヒメヌマエビ属

小卵型・両側回遊種
・山形県や秋田県に及ぶ場合もあるよう。
・ミゾレヌマエビは幼生期間が短く、すぐ着底するらしいので、
各水系で、若干模様が違っている印象。
両側回遊ですが、ゾエアが流出・流入して均一化する率が低そうです。
・観賞用として売買される“ミゾレヌマエビ”は古くからヌマエビ。


ミナミヌマエビ ヌマエビ科カワリヌマエビ属

大卵型・陸封種
http://www.lberi.jp/root/jp/05seika/omia/80/bkjhOmia80.htm
静岡県・焼津〜琵琶湖以南。京都府には生息し、福井県には居ないよう。
・生息地域内で採集された半数の地域でシナヌマエビ等の外来カワリヌマエビ属であった事が確認されている。
・北海道や東日本など、生息域外で発見される“ミナミヌマエビ”も中国産や韓国産の外来種。
・絶滅危惧種や準絶滅危惧種に指定されつつあるようです。
・観賞用として売買される”ミナミヌマエビ”、釣餌用“ブツエビ”は、常識的に考えてまず近縁外来種。


シナヌマエビ、コウライヌマエビ等の外来種 ヌマエビ科カワリヌマエビ属

大卵型・陸封種
http://kaken.nii.ac.jp/ja/p/19310150
・「ミナミヌマエビ」「ブツエビ」として安価に購入できるエビ。中国大陸に20種類以上が居るらしく、区別されていない。
・在来亜種ミナミヌマエビの生息域内に限らず、北海道や関東・東北にも放流されて大増殖中らしいです。
・メバル釣り人口の多い地域や観賞魚飼育人口の多い密集地近辺に比例して増えると考えるのが妥当そうです。
・200種もの外来種が確認されているという「タマゾン川」として有名な多摩川やその支流・野川では呆れる量が採れるようです。
・6月〜10月には暑さで輸送中に死ぬため輸入されないらしく、農業用水池や用水路に放して蓄養する例は多いようです。
・N.palmataや、N.heteropodaの名前が揚がっていますが、
多摩川や琵琶湖周囲の個体は、どれも額角は長めで、前側角部に棘を持ち、模様の傾向も同一な感じです。
・ミナミヌマエビが分布しない関東ではヌカエビと混同されている事が多いです。⇒見分けは容易

 

※現在の個人的生息分布のおおよそのイメージですので、詳細な境界ではありません。
必ず居るとか絶対居ないとかいう保証はありません。

2010/10/30 


2010/11/04 更新
2010/11/09 更新


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