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採集場所の環境から種類を推測

最近では、ヌマエビが沼に棲まないことが確定したので、
生息環境からの種類の推測は、より鮮明に分かり易くなりました。

淡水エビには大きく分けて、大卵型、中卵型、小卵型があり、
小卵型は孵化しても海に下らないと幼生が育たないという特性があります。
ですから、海とつながっていない淡水の沼や池には小卵型は居ない事になります。

◆川にしか居ない種類・・・主に小卵型(太めの用水路や排水路にも居るかもしれません)
ヒラテテナガエビ、ミナミテナガエビ・・・典型的な両側回遊種。爪が短く、遡上が得意。
スジエビ(B型)
・・・下流域に棲む降海種で幼生の発育に海水が必要。淡水繁殖のA型とは別種のよう。
ヌマエビ・・・名前がヌマエビなのに沼に居ない。沼に棲むヌカエビとは亜種ではなく別種。
ヤマトヌマエビ、トゲナシヌマエビ、ヒメヌマエビ、ミゾレヌマエビ・・・この辺も全部沼に居ないヌマエビ。
ヤマトヌマエビは沢蝦と呼ばれるほどの上流域のエビ。トゲナシも瀬に多いらしいです。ヒメ・ミゾレは下流のエビ。

一方、中卵型以上は、淡水中で繁殖。近所の沼や池で採集なら、まず以下の中のどれか。

◆川だけでなく、池・沼・湖にも居る種類(川にも居ます。池や沼にしか居ない種類はないです)
テナガエビ・・オイカワ域〜感潮域、溜め池まで、どんな環境でも親の周囲でゾエアが育つ。各環境で若干タイプは異なるよう。
スジエビ(A型)
・・・・・上流や池や沼の種類は小さめで、下流域のB型とはほぼ別種のよう。
ヌカエビ・・・・・・・・西日本で、ただのヌマエビ(大卵型)と呼ばれていたものもヌカエビ。
ミナミヌマエビ
・・・・・・日本固有在来亜種の本物ミナミヌマエビは準絶滅危惧種になりつつある。
カワリヌマエビ属外来個体群(シナヌマエビ、コウライヌマエビなど)・・・今後、日本全国で「ヌマエビ」といえばコレになるかも。


沼や池の定義は色々ありそうですから、100%居る居ないとは云い切れません。
以下はそんな備考あれこれ。

●以前はヌマエビとヌカエビは亜種扱いでしたが、現在は別種と確認済み。
「ヌマエビかヌカエビ?」という悩み方は不要です。
ヌマエビは小卵型で、ヌカエビは中卵型。沼にはヌマエビは居ないという変な状態が確定しました。
予想される新ヌカエビの分布(旧ヌカエビ+旧ヌマエビ大卵型)

●小卵型各種の多そうな地域
小卵型各種が比較的多く生息すると思われる地域。
日本海側では新潟や山形、秋田まで生息する種類もあるようです(特にミゾレヌマエビ)。
北海道には何故かヌマエビ(小卵型・南部群)が多数生息する川があるようです。
海から稚エビが供給されるタイプなので、いつも採れるとは限りませんし、大量に採れることもある。
黒潮や対馬海流の動きで採れる地域もズレると思います。
(南国生まれのコンジンテナガエビが本土で発見されることもあるようです)

●小卵型種が、沼や溜め池起源の排水路に海から稚エビや若エビで上がって来ないとも限りません。
細い水路を辿ると大きな川へ出て、海まで辿れるなら、可能性ゼロではないと思います。
(定着して暮らすというよりも、さらに上流を目指すと思いますから、採集される程の数が暢気に定住するかは疑問)
再生産を考えた場合も、孵化した浮遊幼生が数日のうちに再び海へ下るだけの流れがないと死滅してしまう為、
稚エビや親エビが沼や池の水草の中にたくさん定着して暮らしているとかいう風景にはまず成らないと思います。
沼や池で大量に小卵型種が採れるということは無さそうです。(トゲナシヌマエビならあるかも?)

●トゲナシヌマエビは、湧水が直接海に流れ落ちるような場所の水溜りなどに大量に棲んでいたり、
ビルの谷間の遊水池に大量に居たりと神出鬼没なようです。
遡上能力が高いので、海から上がれそうな場所ならどこでも居る可能性があるのはこのエビ。

●テナガエビはどこにでも対応したタイプが存在し、親の周囲でゾエアが育ち繁殖するようです。
河川静水域タイプ、湖沼タイプ、汽水湖タイプ、河川河口域タイプなどなど・・・・。
河川河口域・汽水域に棲むタイプはゾエアの発育に海水が必要なようですが、その他は海水不要。
遡上や降海にはあまり縁がないよう。
しかし水槽内では残念ながら稚エビ化は難しいようです。

●スジエビ(A型)は淡水繁殖種。スジ模様が多かったり、スジが細く薄かったり。全体に小型。
池や沼や河川上流部に棲む陸封種。卵の大きさは全国各地でまちまち。
スジエビ(B型)はA型とは別種らしく交雑しないらしい。スジ模様が太く濃く、大型の降海種で、下流域に生息。
(スジエビB型には頭胸甲長5cmの個体も居るらしい)⇒頭胸甲長5cmはさすがに眉唾

●テナガエビやスジエビは塩分耐性が強くて、汽水湖でも生息・繁殖が出来るよう。

●農業用ため池の配水路にヒラテテナガエビやミナミテナガエビの幼エビが上がっていたり、
ミゾレヌマエビが群れているのは普通。
これは、池や沼で繁殖したものが流れ出た訳ではなく、海から遡上して来たもの。
海から上がる仔エビ達は、上流が川か沼か池かは選んでいないよう。
なので、池や沼では世代交代は出来ませんが、完全な封鎖がされていない場合は、
海からの仔エビの供給はゼロとは云えない印象(正常に暮らせて大きくなったり定着できるかは別問題)。
沼や池にも色々ありますから、それぞれに確率は違ってくると思います。
河川の途中のワンド的な部分を沼とするか池とするか川とするかは微妙。

●スジエビには近年、釣り餌用輸入種、観賞用商品名”ミナミヌマエビ”として輸入されるシナヌマエビ類の混じりなどで、
小型で模様が違うスジエビの近縁種(大卵型のよう)が、自然河川でも繁殖しているようです。
水槽でも繁殖可能で、稚エビがそのまま着底するよう。

●ミナミヌマエビは日本本土の南に棲むヌマエビの仲間。
予想されるミナミヌマエビの分布
焼津〜琵琶湖以南ということですが、琵琶湖に現在居るのは外来種らしい(100年近く発見されていなかった)。
北海道や関東で採れる種類も外来種だったという遺伝子の分析結果があります⇒こちら
シナヌマエビを代表とする各種の近縁外来種が空白部分やミナミヌマエビの生息部分にもかなり増殖して居るようです。

●ヤマトヌマエビにダムで陸封された個体群が存在する?という噂もあります。
しかし、ダムが出来た数十年程度で降海型が急に淡水繁殖に進化するのかは大いに疑問です。
そういう適応性を持っていたなら、太古から崖崩れ等で各地に簡単に陸封個体群ができていたはず。
・ヤマトヌマエビは長生きなので、ダムが出来て10年近く経ってもダム上流に居たのを淡水繁殖個体と誤認?
・ダムには河川維持放水が常時行われているので、それを登った個体達?
・余程、ダムの水が海水っぽい?
ちなみに、水槽や睡蓮鉢でヤマトヌマエビが淡水のまま繁殖したという話には、
・“ミナミヌマエビ”を飼っているか、飼ったことがある。
・あるいはそれら両方を扱う観賞魚販売店である。
といった共通点があるよう。(ヤマトヌマエビしか飼わない人も多いはずだが、奇跡は訪れない印象)

 

2010/10/05 


2010/10/08 更新


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