前回、“テナガエビも交接を行なわない限り、卵巣は次回以降に持ち越す様に思えます”
と書いたのも束の間。
なんと、雌単独で産卵をしました。
黄色い卵が腹節にぎっしり詰まっています。
一人で勝手に脱いで、勝手に産んでしまったようです。
この雌が棲んでいる水槽は36cm水槽です。
スポンジフィルターでベアタンク。
どう見渡しても、彼女以外のエビは居ません。
相当前に、同居していたライバルや旦那様は、彼女に捕食されています。
こうなると、以前に、仲間と暮らしていた時期に、何度か産卵していた卵も、
本当に有精卵だったかも怪しくなります。
テナガエビは、
・直前に交接をせずとも産卵することがある
という事になります。
無精卵以外の可能性としては、
・無精生殖
・雄の精子が長生きで、受精嚢内で保存でき、次回の産卵に使える
といったものが考えられます。
恐らく、ただの無性卵だと思いますが、
発眼して、孵出されたら、個人的には、かなり意外な展開となります。
見た目には、元気に発育しそうに見えます。
無精卵であれば、数日で腐ってしまうと思うので、
すぐ分かるとは思います。
問題点としては、汽水域型と淡水静水域型などを交配実験などしてみた場合に、
「産卵したから、交配が完了した」と言えない事です。
機会があれば交配して観察してみようと思っていた部分ですが、
これで敷居が随分上がります。
自己満足を高度に得ようと思った場合には要注意かもしれません。
2008/06/14 岩
参照⇒【スジエビの無精卵産卵】
卵の大きさの違いが顕著です。(2010/06/08追記)
※追記(2008/06/22)
その後、4、5日程度で無事に全部脱卵(食卵かな)しました。
腹の下は、完全にからっぽ。
単純な無性卵だったようです。
・無精生殖
・雄の精子が長生き
は考えなくて良さそうです。
敷居の高さは、若干元に戻りました。
ただ、ふつうに無精卵を産んでしまう事はありそうです。
交接せずとも産卵するという、この部分は変わりません。
ヌマエビ類の雌単独飼育では、無精卵の産卵は個人的には見た経験がないと思いました。
テナガエビは肉食性が強いので、その辺りの栄養補給は簡単だからなのかもしれません。
(寿命が1〜2年とされている事が多いことからも、持ち越す時間的余裕はないのかもしれません。
ただ、実際に、体長10cmの大型個体が、二年目で完成されるのかは分かりませんし、
大型個体が、必ずその年に寿命を迎えるのかも知りません。
エビの寿命は、飼育下だと公表されている年数より、かなり伸びます。
「テナガエビの寿命1〜2年」は成長が急速過ぎる気もしますが、
梅雨時の食欲と成長は著しいですから、不思議でもない印象もあります。
大型個体を傷つけずに上手に採集して、完璧な管理の下でも死んでいくなら、
寿命は短いと判断できそうです。
その大型個体が網だとなかなか捕まらないものですが・・・・・
拍手したくなるほどの見事な逃げっぷり)
※追記(2008/06/22)
同じ個体群のテナガエビの雄は、
3cm程度の雄でも性成熟しています。
採集した個体をバケツに入れてあるのを見ていた時、
一匹のやや大きい雌個体に、小さな雄が取り付き、
前戯的な行動の後、
大きな雌の体側から尻尾の先を先頭に、
雌の下側へ潜り込んでいきました。
雌が大き過ぎるので、自らが下側になってぶら下がるという、
ヌマエビ類でも雌雄の体格差があり過ぎる場合に見られる行動と一緒です。
交接には至っていなかった様ですが、
その雌は、比較的、脱皮から時が経っていない個体だった様で、
四匹ほどの小さな雄にきれいに囲まれていました。
小さな雄達を纏った大きな雌は、ヌマエビ類のような光景でしたが、
そんな、スジエビの成体よりもはるかに小さな雄達でも、
充分に性成熟は果たしているものと思われます。
ですから、ある程度大きな雄の個体と一緒であれば、
まず、無精卵になることはないと思います。
(雌が最後まで「大きく立派な雄とでなければ・・・」を貫くとも思えません)
以前に行なわれた産卵は、まず有精卵で間違いないと思います。
抱卵期間が非常に長かったです。(普通の長さ)
テナガエビの無精卵は常識?追記(2008・08・09)
その後、この個体も含め、何匹かのメスで、
交尾に遅れた個体や単独飼育下のメス個体が
交尾を完了せずとも一匹で無精卵を産む事が観察できました。
卵巣が発達していたメスが、
脱皮周期を迎えて脱皮を終えると、
その当日に必ず産んでしまいます。
つまり、産卵するかどうかは、交尾をしたかどうかに左右されません。
交尾を完了しなければ、まず無精卵を産まないヌマエビ類とはえらい違いです。
産んでしまった無精卵は4,5日程度というかなり長い期間、だいじに抱えています。
無精卵を産む事は、少なくとも汽水域産のこの個体群には常識のようです。
湖沼産や河川静水域産だとまた違うかもしれません。
機会があったら確かめてみたいところです。
汽水型の卵は殻が厚い?追記(2008・08・30)
湖沼産と思われる♀個体も単独で無精卵を産みました。
湖沼産の場合は、脱卵がたったの一日でした。
産んだ次の日には、腹節の中はからっぽ。
水槽の底面にはミズカビに覆われた小さな卵が無数に散らばっていました。
汽水型の場合、無精卵であっても4,5日は抱いたままです。
「無精生殖?」と疑ったほどです。
それに対して、淡水型は普通の淡水エビの脱卵のしかたといった印象です。
この違いは何によって生まれるのか?
汽水型が棲んでいる感潮域は海水と淡水が行き来し、
常に海水濃度に変動があります。
おそらくこの濃度の変化に卵の内部が影響されないよう、
つまり、卵の中の水分が増えて膨張したり、逆に濃縮したりしないように、
卵の殻が厚く出来ているのではないかと想像できます。
その厚みのせいで、ミズカビが内部まで侵入できず、
卵の傷みが遅い。
だから、親エビも死卵である事の確認が遅く、
卵を外す事が遅く、卵自体も崩れ落ちない。
そのため、汽水型の脱卵は遅れる、そんな印象があります。
淡水型は、塩分濃度に変動がありませんから、
極力薄い状態で中身の量を優先。
有精卵が持つ抗菌力で対処しているだけで、
無精卵は死卵ですから、腐るに任される状態で、すぐ脱卵。
♀を単独で産卵させて、その脱卵の日数を見れば、
汽水型か淡水型かの区別は、ある程度つくのかもしれません。
2008・06・22 追記
2008・08・09 追記
2008・08・30 追記