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淡水エビ、独特度ランキング

実際に、生きたエビの見分けの「簡単」〜「やや難しい」を並べると、こんな感じではないでしょうか。
独特で間違いようのない種類からやっつけて行けば、あっという間に終了だと思います。
見分けおすすめサイトを見せていただく時の力点の入れ方としてどうぞ。

1.ヒラテテナガエビ 子エビから親エビまで、独特にも程がある。
独特度・・・・・・・5 勘違いだとしても「酷似困難不可能」には絶対当てはまらない種類。
誤認・・・・・・・・・0 このあたりの子エビが「スジエビ」と思われてしまうのは誤認かどうかは・・・
生態の誤解・・・0 小卵型・両側回遊種

2.ヤマトヌマエビ 破線模様の大型エビ。
独特度・・・・・・・5 雌雄も模様で区別できます。
誤認・・・・・・・・・0 あまりに有名過ぎて、身近なスジエビと勘違いする例はある。
生態の誤解・・・0 小卵型・両側回遊種
模様の使用に異論が無いエビ(笑)。勿論全ての種類に使用可です。

3.ヒメヌマエビ、コテラヒメヌマエビ(別種かは疑問かも) 縦縞型・横縞型がある。
独特度・・・・・・・5 たまに熱帯魚屋さんにも売っている南国的な綺麗なエビ。
誤認・・・・・・・・・1 縦縞型とミゾレヌマエビの赤い個体が誤認される。
生態の誤解・・・0 小卵型・両側回遊種

4.ミナミテナガエビ 脚の爪が短く、陸を歩きます。
独特度・・・・・・・5 胸の横に「m」模様。これが太く濃いです。
誤認・・・・・・・・・1 子エビがスジエビと混同される事は多いかも。横胸に答えは書いてあります。
生態の誤解・・・0 小卵型・両側回遊種
※このエビとテナガエビは、慣れないうちは一緒と考えておいても良いかもしれません。
他の種類とは独特で混乱しませんが、2種類間では、よく似ています。

5.テナガエビ 脚の爪が長く、陸を歩けず跳ねているだけが普通。脚も細い。
独特度・・・・・・・5 胸の横に「m」模様。細くて曲がっている場合が多い。不鮮明個体も多い。
誤認・・・・・・・・・1 子エビがスジエビと混同される事は多いかもしれません。
生態の誤解・・・4 「ゾエアが海に下り、稚エビとなって遡上する」という事にされている。
湖沼型、河口域群など、流れのゆるい環境に居て、親の周りで稚エビになるようで、遡上とは縁が薄そう。
爪が細く、岩登り等も得意ではないと思われます。陸上を歩けないエビは基本的に遡上しない種類。

6.スジエビ(A型・B型) 透明で腰の曲がったエビの総称ではないのですが・・・・・。
独特度・・・・・・・5 本来、間違い様はありません。独特なエビです。
・子エビ時代から黒スジだらけ。真横の離れ眼はヌカエビと共通ですが大きさが違う。
・透明で、腰が曲がっていて、眼が飛び出しているのは、すべてエビの共通点。
誤認・・・・・・・・・3 スジエビはスジエビでしかないのですが、妙な間違い方が浸透している
生態の誤解・・・4 「ゾエアが海に下り、稚エビとなって遡上する」という誤解が普通。
・スジエビには、上流域と湖沼に棲むA型と、河川下流域に暮らすB型が居ます。
・A型は陸封種・淡水繁殖。B型は汽水が必要な両側回遊種です(真水ではゾエアが死滅)。

7.トゲナシヌマエビ マイナーですが、形が独特なので、存在さえ知っていれば簡単。
独特度・・・・・・・5 模様なしヤマトな感じ。腰に一個「八」の字がある。ミナミの「ハ」と注意。
誤認・・・・・・・・・1 額角の短い外来種シナヌマエビと誤認される例が少々。
生態の誤解・・・0 小卵型・両側回遊種

・・・・・・・・・・・・・・・このあたりまでは、知ってさえいれば分かる独特さです。見れば分かるレベル。
識別法が必要になって来るのは、以下の種類ではないかと思います。
本来は独特なのですが、人間が勝手に難しくしてしまっていて、誤認情報のほうが多いです。
「淡水エビを見分ける」は、この4種類を見分ける事に等しいです。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

8.ヌマエビ アクアリストには、“ミゾレヌマエビ”としてお馴染み。旧ヌマエビ大卵型はヌカエビ(西日本)。
独特度・・・・・・・4 胸の横に「ミ」模様。その前にUFOが一機飛んでいます。ヌカエビとは別種。
誤認・・・・・・・・・5 研究者や詳しい方以外は“ミゾレヌマエビ”と思っているのが普通
生態の誤解・・・0 本物のミゾレヌマエビと共通な為、名前の入れ違えに気が付かない。

9.ミナミヌマエビ、外来シナヌマエビの類各種
独特度・・・・・・・3 模様の傾向は独特ですが、複雑さを独特と捉えるかどうか。「ハ」並びは有効。
誤認・・・・・・・・・2 他がどれもミナミヌマエビにされる傾向が強い。本物ミゾレとの間違いは定番。
生態の誤解・・・0 大卵型・陸封種
※静岡県焼津以東以北に生息するのは中国産輸入外来種。東北・北海道にまで及びます。
当然焼津以西でも深刻な外来種問題があります。
ミナミヌマエビの生息域内でも半数以上が中国産輸入外来種に占められているそうです。

10.ヌカエビ 淡水エビ研究の聖地、九州・沖縄に居ませんから、生ける誤解。
独特度・・・・・・・3 離れ眼で、胸の横に「波裏富士」模様がありますが、小さくて透明なので確認は難しいかも。
誤認・・・・・・・・・4 まずスジエビにされる確率の方が高い。「ハサミが取れ、筋が消えた、スジエビの子」。
生態の誤解・・・5 中卵〜大卵型・陸封種ですが、ヌマエビと額角が一緒だった個体群の影響で誤解が多い。
・「小卵型で海水が必要」と誤まって紹介される歴史が長い。中卵〜大卵の陸封種です。
・ヌマエビとは亜種とされていましたが、別種です。(2007年にやっと)
・西日本のヌマエビ大卵型と同種です。額角上の眼窩後縁以降の頭の棘の有無は、種内の地域変異。
・東日本だけでなく、ヌマエビ大卵型の生息地がプラスされました。西日本にも広く居ます。
・東北地方の東と西、関東、東海、北陸、近畿、山陰、琵琶湖などなど、各地で亜種的。

11.ミゾレヌマエビ 眼から下へ流れる「レ」。雌は抱卵部分に「〜〜〜〜」。
独特度・・・・・・・3 七変化を独特と捉えれば独特ですが、他種に分散されるのが普通です。
誤認・・・・・・・・・5 模様を見れば簡単なのですが、ほとんど「こんなエビ居るの?」な状態。
生態の誤解・・・0 小卵型・両側回遊種。ヌマエビと一緒。


これでも一種類。ミゾレヌマエビには、みぞれを感じない場合が普通です。
だからと勝手にヌマエビを「ミゾレヌマエビ」にすると、これら各色が好き勝手な種名にされます。
「ヌマエビ」という種名にされるのは定番で、ミナミヌマエビやヌカエビとして登場する事も多い。
色合いに騙されないで、不変の模様をきちんと見れば大丈夫です。⇒【ミゾレヌマエビの七変化


●知っていれば、どれも区別は付くと思います。独特な種類が半分以上です。
8番までは、良く知られているのではないかと思いますし、特に難しさは感じません。
人為的な混乱で誤認率が高くされているのが問題なだけで、エビ自身が酷似しているという事ではありません。
スジエビをきちんと理解するという事と、ヌマエビの国民的誤認の認識が基礎として大きく、
あとは、ヌカエビとミゾレヌマエビをきっちり固めれば終了です。

●淡水エビでしばしば語られる、
『どれも酷似していて、色柄は使えず参考にならず、顕微鏡で額角を見ないと識別は不可能』は、
標本瓶の中の白い死骸の話です。(あるいは色柄についての記載がない論文。いずれも分類学の世界)
脱色し切って真っ白ですからどれも酷似していますし、色柄は残っていません。残っているのは額角や棘などの凹凸のみ。
「酷似・困難・不可能」は、その標本や色柄の記載の無い論文との比較を行なう「同定」という作業の難しさを表わします。
「模様は使えない・参考にならない」は、標本瓶内で永くアルコール浸けになり、褪色した白化死骸や論文についての話。
生きたエビには一切関係ありません。
関係ないどころか、足枷となって、種類間違いを大量に生む元凶です。



色柄で簡単に種類が区別できる個体を、わざわざ白化したものと思って悩む理由はゼロです。
大量の手掛かりを捨て去る事になります(自虐行為)。
そもそも、額角の比較は、ただの額角の比較。同定ではありません。
最終的に、ヌカエビ(西日本産)とヌマエビを区別できませんでした(結局、DNA鑑定された)。
ミナミヌマエビ、ヌマエビ、ヌカエビ(西日本)、ミゾレヌマエビはどれも額角が長く、頭の後ろまでギザギザが続きます。
額角至上主義を掲げて、形態と色斑を分離し、色柄をバカにする方々が多いですが、
起源が第三者による、分類学上の事情の勘違いに過ぎません。
そんなものを信じている例では、この4種類はほとんど「福笑い」。
標準和名と↑のような全身写真が滅茶苦茶に配置されるのが通例です。
(手法が偏れば偏るほど誤りが増えるのはどんな分野でも共通。
恐ろしいのは、模様で間違いに気付かない人が指導しているという現実。
額角偏重・過適応⇒エビ情報の信頼性の崩壊・壊滅)

●「額角が是で、模様は非」は、博物館あたりから生じたと思われる因習です。
生き物を理解する上で、形態と色彩を分けて、どちらかを捨てれば、
難しくなって、種類を見誤るのは当然です。誰にでも解かる愚行です。
しかし、この自虐行為が普通に行なわれて、種類間違いが絶えないのが淡水エビの世界です。
この因習に染まってしまっている指導者(?)の情報は物凄い量なので、
様々な機会で、必ず、「模様は使うな!額角だけだ!」という情報に触れると思いますが、全て無視が賢明です。

「額角こそがエビ本体であり、エビの体は無用の長物だ」みたいな極端な考えを持つ向きは大量です。
しかし、顕微鏡で額角を見るまでもなく、模様で簡単にミゾレヌマエビと分かります。
価値としては、額角“も”見れば、より堅固という程度が妥当だと思います。
普通は、長さを見るくらいで充分と思います。
額角は折れている事も多いので、全幅の信頼を託すのは、そもそも無理。
(ヌカエビに棘が多いとヌマエビになったり、ヌカエビの額角が折れたらトゲナシヌマエビになったりとか、
およそ体幹が弱過ぎる情報が多過ぎます。すべて額角一辺倒の偏重が原因)

●模様や色彩に関しては、根拠なく生きたエビにまで、後ろ向きな不可能節で説かれます。
「個体差があるから使えない」
「地域差や地域変異があるから使えない」
「雌雄差があるから使えない」
「成長すると変化して行くから使えない」
色や模様のない標本や論文の世界限定での話なのですが、
額角至上主義とくっついて、エビから引き剥がされて極端に侮蔑されているのが「色柄」。
「使ったら間違える」と信じ込んでいて、色柄に対して敵意丸出しだったりします。
色柄は、本来きちんと整理して、不変の部分を探せば良いだけの事なのです。(エビは自然科学ですから)
尤も、これらの因習の発生も、起源が分類学上の手法の勘違いなので、一切惑わされる必要はありません。

●生きたエビに関しては、「完全に無模様」という個体を探すのが難しく(稚エビ子エビにはあるでしょうけれど)、
模様の片鱗があれば、もうそれで種類は分かってしまう程度です。

●「種類が多い」のは“世界や南方の島々に”です。本土産は上記で終わり。少な過ぎて詰まりません。

●以下の三例の厳密な違いは「困難」。←本当の「酷似・困難・不可能」は、この辺りの事。
・ミナミヌマエビと外来シナヌマエビの仲間各種・各亜種(バラタナゴとタイリクバラタナゴの関係)
・ヒメヌマエビとコテラヒメヌマエビ(本当に別かは疑問ありのよう)
・ミゾレヌマエビとツノナガヌマエビ(鹿児島南部以南に生息)の境目

 

2010/12/14 


2010/12/14 更新


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