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スジエビの額角は見易いです

額角を見れるなら、見て損はないです。
スジエビは体も大きいですから、おもちゃの虫眼鏡でも見えるのではないかと思います。


スジエビの額角は、その長さや幅に比べて、ギザギザした歯が極端に少ないという特徴があります。
テナガエビと比べると、分かり易いと思いますが、スジエビの額角上の鋸歯は五個程度。
一方、テナガエビは数えたくないほどの数が並んでいます。10個以上はあると思います。
「逆さハ模様」と「m模様」で見分けは簡単ですが、相違点の確認は多いほうが良いです。
透明度が高かったり、模様の崩れが激しい場合は念の為に見ておくと確実です。


mの崩れが激しい個体。額角のギザギザが多いので、テナガエビと判断できます。
スジエビには少ないので簡単です。
模様を見れば、額角など見るまでもないですが、確認して損はないです。


模様が薄めの個体。額角にギザギザを数えたくないほど持っていたらテナガエビ。
透明度が高くてもスジエビではないと判断できます。


スジエビの額角の鋸歯は、眼の後ろから、大きな間隔で先端までほぼ等間隔で並んでいます。
おそらく、正面に天敵を置いて、打撃に対して、相手が勝手に刺さる事で防御が出来るというものだと思います。
こんなに粗くて大きな棘が並ぶ種類は他に居ないので、
他の特徴では全く分からないという場合は見てみると良いと思います。
(模様が消え切った標本でもない限り、必要になる機会がそんなにあるとは思えませんが)


旧来のヌカエビ。頭にはギザギザが無く、
先端部分に集中して6個程度の鋸歯が見えています。


旧来のヌカエビ。ギザギザが頭には無く、額角の先端付近に6個程度。
いずれも深い溝や切れ込みではないです。
西日本のヌカエビ(旧ヌマエビ大卵型)は、眼の後ろまでギザギザが並ぶそうです。
東海や北陸では、頭の後ろまで並ぶか並ばないかは個体差程度だそうです。
旧来のヌカエビと旧ヌマエビ大卵型が一緒に暮らしているわけです(現在は同種)。
そこから考えても、切れ込みの深さまで変化するという事ではなく、
この程度の浅くて小さなギザギザが頭の後ろにまで並ぶという感じに思えます。
スジエビの額角との差は明確と思えます。


遠目には、ギザギザが確認できない程度。
旧来のヌカエビは眼よりも後ろの頭にギザギザを持たないので、
額角だけ比べてもスジエビとの区別は出来ます。
第一第二胸脚が短いので、すでにその時点でテナガエビ科ではないですが、
額角の切れ込みを見ても「スジエビではない」と判断できます。


旧来のヌカエビは、額角の鋸歯が退化傾向にあるのか、
歯を確認するのが難しいです。
透明で腰が曲がっていても、額角に明確な切れ込みが見えないので、
スジエビではないと判断できます。


透明で腰が曲がっているので「スジエビ」にされ易いミゾレヌマエビ。
額角の鋸歯の数が最も多い種類ではないかと思います。
細かいギザギザが密に並んでいます。
額角だけ見ても「スジエビではない」と簡単に分かります。


ミゾレヌマエビの額角のギザギザ。


透明で、眼が飛び出していて、背中が曲がっていますが、
額角上の鋸歯が細かいです。
「スジエビは透明」は成立するとしても、「透明だからスジエビ」は成立しません。
日本の本土産淡水エビ11種類の内、7種類に該当すると思います。
参照⇒【透明で、腰が曲がっていて、眼が出っ張っているエビ達
「茶色くて小さい鳥はスズメ!」
「小川で捕れた銀色で小さい魚はメダカ!」
と云ってるのと同じ精度。
腰がえぐれてて、眼が窪んでて、肉が濁りまくっているエビが居たら、逆に怖いです。


透明な場合も多いシナヌマエビ(商品名ミナミヌマエビ)も額角の歯は細かいです。
小さ過ぎて数えたくないですが、10個以上は間違いなくあるのが分かります。


額角上のギザギザが五個程度。
鼻先を越える長い腕と、この少ない鋸歯を見れば「スジエビ」。


ギザギザが10個以上あるヒラテテナガエビ。
模様も全然違いますが、幼少期は透明なので、確認してみても面白いと思います。


ミゾレヌマエビと認識されるには様々な人為的障壁があるミゾレヌマエビ。
眼の上の額角には細かいギザギザがあり、遠目では数の確認は困難なほどの細かさです。
スジエビは、この程度の写真でも額角上に歯が見えます。粗く5本ほどが生えています。
・模様の違い
・ハサミ脚の長さの違い。構造の違い。(スジエビはそもそもテナガエビ科)
・消化管の太さの違い
で違いは明らかですが、
・額角のギザギザの数の極端な差
を加えるとさらに確実。

 

◆スジエビの額角は特異

『眼が飛び出していて、透明で、腰が曲がっている』という共通点で、
スジエビと誤認されるエビ達は多いですが、
そのどれもが、スジエビの額角の歯の粗さとは異なる形を持っています。

ほとんどが、額角の歯が細かく多いです。

・テナガエビ、ミナミテナガエビ、ヒラテテナガエビ

・ヌマエビ(ミゾレヌマエビではないので要注意)

・ミゾレヌマエビ(本物)

・シナヌマエビ
・ミナミヌマエビ
・ヌカエビ(西日本産)
これらは全部が、スジエビよりも遥かに額角のギザギザが細かくて多い。


旧来のヌカエビは頭にギザギザが無いので簡単。


スジエビは、姿形、模様色彩までが、最も見分け易いエビで、
余計な不安を持たなければ誰にでも分かる水準のエビです。
シラガエビと呼ばれるほどヒゲが白かったり、
テナガエビ科特有の細い消化管で、それが太いヌマエビ科との区別が容易だったりです。
勘違いの因習で、透明系識別困難種の一員になっているのは、少々呆れた現実です。

スジエビのスジが全く見られないのであれば、スジエビではないと思ったほうが確率としては上でしょう。
無理に「ハサミ脚が欠落したスジエビ」や、「模様が消え切ったスジエビ」にする必要は感じません。
ごく普通に、ヌマエビ類の中に探したほうが早いでしょう。
「透明の代表=まず第一にスジエビ」という連想は個人的にはありません。
ミゾレヌマエビやヌマエビ、ヌカエビのほうが透明度と模様の無さでは上に思えます。

スジ模様の消え切ったスジエビではなく、胸脚も最初から短いヌマエビ達。
スジエビは額角を見るまでも無いくらいに見分け易いのに加え、
さらに額角を見ても見分け易いエビです。
↑このあたりのエビ達を「スジエビ」にしなければならない理由がないのであれば、
額角くらいは見て置いて損無いと思います。


スジエビはスジエビでしかない濃いエビです。
「透明で腰が曲がっていたらスジエビ」という恐怖ばかりが先走って、
多くのヌマエビ類が巻き込まれて、「スジエビらしさとは?」という部分が逆に薄まってしまっているのです。
超初心者級の簡単さなのに、11種類中の7種を巻き込んだら、
訳が分からなくなって当然でしょう(^^;
スジエビは額角でさえも個性的なので、
どうしても迷ったら(そんな事あるのか疑問ですが)、額角くらい見ておくと良いと思います。

 

◆肝心な所で役に立たない額角ですが、スジエビなら役に立ちます

「額角だ!額角だけだ!」と唱えられている割りに、肝心な所で役に立たないのが額角。
ヤマトヌマエビやトゲナシヌマエビ、ヒメヌマエビなど、
額角を見なくても簡単に種類が分かるエビほど、額角も個性的で、
額角にすがりたいような、体形が似通った種類である、ヌマ、ヌカ(西日本)、ミゾレ、ミナミは額角もそっくり。
しかも最終的にヌマエビ大卵型とヌマエビ小卵型を別種と判断できなかったという信頼性の低い部品です。
ツノナガヌマエビとミゾレヌマエビも分からないし、
ヒメヌマエビとコテラヒメヌマエビも区別できません。
シナヌマエビとミナミヌマエビにも使われていないようで、脚の湾曲に主流が移っています。
そんな悲しい額角ですが、上記のように、スジエビと他種の間では大いに使えます。
どう見てもヌマエビ科にしか見えないエビを「スジエビ」と呼んで恐れる必要も消えますし、
末恐ろしいテナガエビの子供を「スジエビ」として混泳水槽で飼う間違いも防げます。

模様も独特ですし、額角も独特なスジエビ。
スジエビの模様が完全に消え切ることがあるのかは大いに疑問ですが、
もし消え切っても、額角を見れば、スジエビである事が分かると思います。

つづく

 

2011/01/25 


2011/01/25 更新


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