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長いと短いと、長過ぎ

人口密集地の川や池では、“身近なエビ”の座をシナヌマエビ類に譲った感じのスジエビ。
しかし、譲ったのは、エビ本体だけであって、
種名はそのまま“スジエビ”と思われている事が多そうに思います。
既存の文献や図鑑では、ここ数年で急速に増えたシナヌマエビ類が載っているはずがありません。
種類自体は、科も違う別種に入れ換わっているのですが、
特徴の説明が合ってしまい、そのまま同じ「スジエビ」という種名で呼ばれる事がありそうです。

川や池や沼など、どこにでも多く居る、最も身近なエビで、
体は内臓が透けるほど透明で、黒縞が体の各所に入り、
背中がへこみ、腰が盛り上がっていて、眼が横へ飛び出している、
テナガエビのような長い腕は無いエビ。

スジエビの説明が、こういう説明だった場合、

このエビが「スジエビ」とされても不思議はないです。

近所の水辺のどこにでも居ますし(密放流で有名な地域であれば)
透明ですし(ストロボで白くなっていますが)
体のあちこちに黒いスジ模様が入っています。
腰はさほど曲がっていませんが、可動部分ですから曲がる時は曲がります。
エビの眼が甲羅より窪んでいる事は無いですし、
前や後ろに向いて生えることはないですから、左右に飛び出しているという範囲には入ります。
長い腕もありませんから、ここまで揃うと、「まずスジエビで間違いない」、
と思われても仕方ありません。

淡水エビに馴染みが薄い場合、
スジエビがテナガエビの仲間であるという部分に最初の関門がある気がします。
スジエビの説明には、
・テナガエビのような長い腕はない
・テナガエビのような大きなハサミは持たない
・長い胸脚を持たないことで、テナガエビとは区別出来る

といった感じに書かれる事はままあると思います。
つまり、長い腕の大きなハサミ脚があれば「テナガエビ」で、
大きなハサミの付いた長い腕が見当たらなければ「スジエビ」と思われやすいかもしれません。
テナガエビとスジエビを分けるポイントが『あきらかな長い腕の有無』であるなら、
シナヌマエビ類がスジエビ側と同じ仲間にされても不思議がないです。

 

スジエビの腕は短い?

どこからどこまでを「長い」とし、どこからを「長い腕ではない」とするかが問題ですが、
多くの場合、長いという以上は、明らかに長いのであろうという事になります。


ここまで太くて長ければ、一回もテナガエビを見た事がない人でも、
「テナガエビというエビなのではないか」と思えると思います。


このあたりも、明らかに長いです。


これも、「長い」でしょう。


これも「長い」と思います。


これも長いように思いますが、太くて長い腕ではない感じ。


これは、地面にも届いていない長さです。特に「長い」という感じはしません。


若干太めのハサミですが、随分と短いです。


これは細くて短いです。脚より細い腕です。


これも、脚の太さより細い感じ。長いとは感じません。


さらに短いです。


脚と同じ長さくらいの短いハサミです。


脚より短いくらいかもしれません。ハサミと云う感じもあまりしません。


脚より、随分と短い。顎脚よりも短いです。短か過ぎです。


脚の中に紛れてしまって、ハサミがどこにあるのかすら良く分かりません。

「長過ぎる」、あるいは「太過ぎる」というあたりから順々に見て行くと、
テナガエビ科の後半の胸脚は「短い」という感じに見えてくるのではないかと思います。
そして、ヌマエビ科と違和感なく連続してしまうのではないかと思います。
初心者目線で考えれば、
スジエビの大型個体の下辺りに、一つの境目が発生します。
そこから上が「手が長いエビ」。そこから下が「手が短いエビ」。

誰が見ても明らかに「テナガエビ!」な大型雄から、
フルサイズのスジエビの雌あたりまでが「テナガエビ」という判断に入りそうです。
「テナガエビ科」、「テナガエビの仲間」も同じ境目でしょう。

それ以下には明確な境目を見出すことはなく、
スジエビの小型個体からミナミヌマエビの雄あたりまでの透明な感じの小さなエビ達を、
「スジエビ」、あるいは「ヌマエビ科」、「ヌマエビの仲間」、「ヌマエビの一種」、
という同じ一まとめで判断される傾向が強い印象です。

つまり、
明らかに腕が長いエビはテナガエビですが、
さほど長くない多くの小型個体は「ヌマエビの部類」に含まれてしまいます。

ここまでが「テナガエビ」であって、


これだと「テナガエビ」という判断にはならない可能性は高そうに思えます。

 


スジエビの場合は、こんな大型個体の場合は、
「明らかに腕が太くて長い側」に含まれる事になると思いますが、

小さな個体や個体群、そして雄などは、「太い腕はない側」に含まれそうです。
同一種類の中に境目が出来てしまっている感じがします。


このあたりは、太い長い腕がなく、透明で、腰が曲がって、黒い縞模様のあるエビ。
つまり、「スジエビ」という括りに成り易いと思います。

淡水エビにあまり馴染みがない場合の、「テナガエビの仲間なのか、ヌマエビの仲間なのか」の境は、
上記のように、腕の長さがまだ充分に長い位置に引かれていると考えられます。

明らかに腕が長いエビスジエビにはテナガエビのような長い腕は無い

この部分に一本の境が置かれている感じが強いです。
『あきらかに長い腕を持ったエビ達』と、
『目立つほどの長い腕を持たないエビ達』という括りにまとめられていると推測できます。
この感覚は、一般に行われる「スジエビの見分け方」の中に見られます。
一般にスジエビを見分ける手法とされているものは、
・体が透明である事
・腰が曲がっている事
・眼が横へ飛び出している事

の三点である場合が多く、「腕の長さ・手の長さ・ハサミ脚の長さ」といった部分はほとんど語られません。
スジエビと多くのヌマエビ類を含んだ「腕が長くないエビ達」という同じグループの中に、
三つの条件を用いて、スジエビが探される事になります。


腕の短いという「同じグループ」の中に、
肉食性が強い種類が混ざっているという得体の知れない恐怖に見舞われて、
淡水エビ全11種類中の7種類あたりを、ごっそりと「スジエビ」として排除する事になる訳です。

淡水エビの種類を見分ける場合、腕が長過ぎる方々を含めて相対的に考えてしまうと、
スジエビやテナガエビの子供が、「短い」という範疇に入って来やすくなります。
●明らかに腕が太くて長い
●テナガエビのような長くて大きな腕(ハサミ脚)は無い
という境目の作り方では、上記のような混乱や恐怖が消える事はありません。

●長過ぎる
●長い
●短い
という3つに分け、境目は「長い」と「短い」の間に置く物なのです。
1.とりあえず、長過ぎる方々は、「テナガエビの仲間」で間違いないです。
2.目立たないけれども、鼻先を越えるハサミ脚を、前に伸ばして泳いでいるのが「長い方々」
3.どこからどう見ても、YYチョキチョキ的なものが無ければ「短い方々」
という事になります。

 

長過ぎるエビの事は考える必要なしです


腕が長過ぎる方々は、長い方々の延長でしかないので、
この長過ぎる方々の事は考える必要がありません。
「テナガエビに決まっている」わけですから、見分ける対象外です。
残りの、
●長い
●短い
を見分ければ良いだけです。

長い』というのは、この程度の長さを言います。
長過ぎる方々から比べれば、かなり短い印象だと思います。

テナガエビの子供やスジエビに共通の構造です。

テナガエビの子供。子供時代から腕が太くて立派という事はありません。
※子供時代のテナガエビには「m」模様がクッキリしているので、模様を見れば容易に気付けるのですが、
「色や模様は使えない」という勘違いが広く根深く浸透している影響で、気付かれないことも多い印象。
むしろ、スジエビのスジ模様と誤解される可能性もありそうです。

こちらはスジエビ。

スジエビには長い腕があるのです。テナガエビ科ですから。テナガエビの子供と同様です。
しかし、なぜか世間一般において、「スジエビはテナガエビ科である」という認識はかなり低いです。
「ヌマエビの仲間」という認識に置かれている事の方が多い印象です。
ヌカエビやミゾレヌマエビとの間に境がありません。
常に一緒に「スジエビ」というレッテルを貼られて排除されるか、
逆に「ヌマエビの仲間」として一緒に飼われるか、この2つのどちらかになる事が多い感じです。

原因は、テナガエビと対比させる形で紹介されるからではないでしょうか。
ヌマエビ科から比べれば、あきらかにハサミ脚は長いのですが、
上記に並べた写真のように、テナガエビから比べれば短く感じます。
テナガエビのような長い腕は無い」と表現されてしまいますが、
「長過ぎる腕は無い」という程度です。

短い』というのは、こういう短さです。

ヌマエビ類に共通の構造。

顎脚よりも後方にある「短過ぎる」腕です。腕という表現にするのはそぐわないほど短いです。
ヌマエビ科はケンカする時にも、この腕は使いません。せいぜい長い脚で叩き合うくらい。
テナガエビ科の長い腕のハサミでの「つねり合い」とはえらい違いです。

スジエビにはテナガエビのような長い腕がない
これをそのままスジエビの見分け方として用いると、語弊だらけとなり、

このエビも、「スジエビ」になります。

 

関連リンク⇒どんな情報も、言い方次第、使い方次第

 

2011/05/16 


2011/05/17 更新


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