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手脚の関節が黄色いヌマエビ類もある

「手脚の関節が黄色い」という特徴は、スジエビが最も代表的で、
その他の特徴を加味すれば、まず間違えないくらいの目立つ識別ポイントですが、
「関節の黄色」のみを見た場合には、ヌマエビ類にも黄色いものは居ます。


ヤマトヌマエビ。
このエビはスジエビ程度に大きいので、見ようと思えば、関節が黄色い事は簡単に分かります。
ただ、普通、このエビを見分けるのに「関節が黄色い」という特徴は揚げられません。
(トゲナシヌマエビにも関節が黄色い個体が多いようです)


体側の破線模様のほうが重視されて、手脚の関節の色までは見ません。
テナガエビ科かヌマエビ科かは、四本のハサミの長さ、そして構造を見れば簡単です。
この写真でも、ブラシのような短い「手」が見えます。
テナガエビ科は長くて、先が鋭い爪になっています。
関節の黄色とは等価ではないですから、こっちを見るのが優先です。
「ハサミが短くて、毛束もあるが、関節が黄色いからスジエビ」とはなりません。


これはヌマエビ。旧ヌマエビ南部群。
(毎度書くのが面倒ですが、商品名“ミゾレヌマエビ”で有名です)
黄色味の強いエビで、関節にも黄色が出ます。


顎脚の関節まで黄色いです。
スジエビの顎脚は、地面に着かないくらい短くて、関節は黄色くないですから、
顎脚の関節が黄色ければヌマエビと判断できるかもしれません。
毎度書いていますが、外肢も見えます。スジエビには無いので有効です。
これも、「外肢が生えているが、関節が黄色いのでスジエビ」とはなりません。
外肢のような揺るぎない証拠を見ておくと確実に種類を固めて行く事が出来ます。


ヌマエビは歩脚が長いので、鼻先を越えます。
ハサミ脚ではなく、ただの脚ですが、
これをスジエビのハサミ脚と見紛うと、スジエビと誤認されるかもしれません。
・透明
・腰曲がり
・出眼
・鼻先を超える長い脚
・関節が黄色い
まで合致します。見様によっては、
・腰に帯が巻き、
・胸の横にスジがあります。
しかし、ヌマエビは“ミゾレヌマエビ”として有名なので、
スジエビと特徴が重なっていても、特に混乱されている例は見ません。


ヌカエビの黄色味の強い個体も、手脚の関節が黄色く見えます。
ただ、ここまで拡大して見ることは普通ありませんから、
特に留意しなくても問題はないと思います。
拡大写真によるヌカエビの真横に飛び出す眼は、スジエビとの混同の最大要因ですが、
そこに、この関節の黄色がプラスされた場合には、
かなりスジエビ誤認度がアップしそうです。
顎脚の向こうにハサミが見えますが、ヌマエビ類にもハサミは当然あります。
先の白い部分は爪ではなく毛束。
しかし、なんだか鋭い爪先に見えなくもありません。
透明で腰が曲がったヌマエビ類の多くは、昔から即座に「スジエビ!」とされる慣習があり、
「第二胸脚が二本とも欠落して、スジ模様が薄れた個体」という、
傍目には、こじつけでしかない理由で完結することも普通です。
有り得る可能性の中から、同率で考えれば、普通にヌカエビに辿り着きそうな例でも、
ミゾレヌマエビと共に、まずスジエビになってしまいます。
(「模様は識別に使えない」と同様。淡水エビを覆う因習の1つ)
そこに、この関節の黄色が加われば、初心者の方は余計に頷かされることになりそうです。


ヌカエビの歩脚に黄色を発見するまで拡大するのは、拡大のし過ぎかもしれません。
拡大し過ぎて別世界に入り過ぎると、総合的なバランスを失って、別種が同種になってしまったり、
同種が別種になってしまったりする事があるように感じます。
淡水エビでは、総合的な判断が軽視されて、極端な偏重で自己矛盾して破綻している情報が多いです。


ヌカエビは、肉眼ではそもそも両目が離れている事にすら気付かないですから、
細くて小さな脚に黄色は見付からないです。
(経験上では関節が黄色く見える個体自体も少ないです。陸封種ですから各地域個体群にもよるとは思いますが)
スジエビと誤認されるのも、映像機器で拡大される時代になったからと云えます。
肉眼で関節が黄色いと思えるのは、やはりヤマトヌマエビくらいの大きさが必要です。


ミゾレヌマエビ(本物)のオス。
さほど目立ちませんが、よく見ると脚の関節が黄色っぽいです。
体形・透明度・起伏にプラスすると「スジエビ度」が大幅アップになってしまいます。
(↑意外と長いハサミ足を広げていますし。逆さハの字や腰の帯も有る種類です)

ミゾレヌマエビは遡上力が低い細い脚なので、肉眼で関節が確認できるかは微妙ですが。


歩脚が湾曲しているシナヌマエビ類の雄。
小さなシナヌマエビ類の、さらに小さな脚を見る機会などほとんど無いと思いますが、
ついでに見てみると、関節が黄色い個体が、ある程度見られました。
雌の歩脚の関節が明確に黄色いという個体は、今のところ居ない印象。


ヌカエビと同様、ここまで大きければ、なんとか関節が黄色いと分かるという程度です。
スジエビより手脚が短いので、たとえスジエビと同じ大きさであっても、
殊更に「手脚の関節が黄色い」とは思われそうにありません。
肉眼で見た場合には、背中のハの字が限度だと思います。

肉眼ではこれ以下なので、普通、脚の関節に気付くことはありません。
・ヌマエビ類の数種類
多くのテナガエビ属の子供
には関節の黄色はありますが、結果的に特徴として最も目立つのはスジエビになりそうです。


スジエビの場合、
・体全体が大きいので、肉眼でも関節の黄色が分かる。
・手脚が長く、透明で、他の色が乗らない為、黄色い点だけが目立ち易い。
・テナガエビの様に、子供時代のみではなく、終生、黄色い。
といった理由で、「スジエビの特徴」という感じには成り易いですし、
実際、便利に使って充分に有効ですが、
厳密に「脚」という部品だけを細かく見ると、ヌマエビ類にも関節が黄色い種類や個体はあります。
手脚の関節が黄色い=スジエビとはなりません。
「淡水エビの多くの種類で手脚の関節は黄色いが、スジエビが最も良く目立つ種類である」というくらいな感じ。
やはり、胸の横の「逆さハの字(凶模様)」は外せません。
1.ハサミ脚の長さや構造、使い方
2.外肢の有無
3.胸の横の模様
これらを調べる前に、「まずスジエビ」と思って挑むのに便利というだけの役割で、
これらを見ずに関節の黄色だけを見て「スジエビだ!」と決めるのはちょっと無理です。


テナガエビの子供。
テナガエビの場合は、腕が太く、他の色も乗るので、黄色のみという印象が少ないのかもしれません。
スジエビには、関節が黄色くない個体を探すのは難しいほどですが、
逆に、テナガエビでは、はっきり綺麗な橙黄色の関節を持つ個体を探すのが難しいくらいの比率でした。
ちなみに、「長い腕が両腕とも脱落したスジエビやテナガエビ」をヌマエビ類と見分けるには、
1.残っている折り畳み式の第一胸脚を探す
2.背腸(消化管)の太さで判断する
のが便利です。
↑この写真のテナガエビも消化管が細いです。
おいしいものしか食べないエビと、泥まで食べるようなエビとの違いです。
太い腕の間に見えるのが第一胸脚。細かい餌を与えると、上手につまんで食べるのが確認できます。


生息密度が高い場所だと、たまに見られる両腕の無いテナガエビ科の幼エビ(右側の個体)。
背腸が細いので、ヌマエビ類とは違う印象がして、なんとなく分かるものです。
左の2匹はバンザイしている手の関節がオレンジ色。
白い容器に入れられても、オレンジ色は消え難いようです。
そういう意味でも有効に使われる部分、あるいは目立つ部分なのかもしれません。


肉眼でヌカエビやミゾレヌマエビに、脚の黄色い関節を見ることはまず無く、
ほぼスジエビ(あるいはテナガエビの子供)のみの特徴に近いですが、
画像機器の発達等で、肉眼では気付かない共通点が発見されると、
予期せぬ新しい混乱が生まれる可能性はあるかもしれません。


なんだかんだ言っても、手脚の関節が黄色い種類といえば、スジエビが一番に浮かびます。
上記のように「スジエビ特有」とは言えませんが、一番の座を譲る感じはありません。

 

2010/11/08 


2010/11/09 更新


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