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ロックシュリンプのガーディング
〜雄の腕が太くて長い理由〜


3.求愛行動



脱皮前のメス。背中に発達した卵巣が黒く見えます。
水草のやや高い所にぶら下がっているのは、
効率良くフェロモンを流す為なのかもしれません。


そのすぐ下で身もだえしているオス。
大きなオスは、水草が大の苦手。
メスに近付こうとしますが、うまくいきません。


地上に降りたメス。
オスはメスが動く度に“求愛行動”をしてなだめます。


脱皮前のメスに対してオスは頻繁に“求愛行動”あるいは“愛撫行動”とでもいえるようなものをします。
この行動の意味としては「僕がそばに居るよ。脱皮中の安全はバッチリだよ」
という事をメスに伝える為と思って良いようです。
というのも、メスが不安そうに動き回ろうとすると必ず行なわれるからです。
この求愛行動ですが、まずやや畳んだ手(茶筅のような第一・第二胸脚左右4本です)を
顔の両側に4本並べる様に持ち上げます。
(終始大きな長〜い第三胸脚は広げたままです)
そして、体をメスの上にかがめて、
メスの腹節(腰)の上や背中の上で顔を左右に細かく振り、プルプルプルと細かい振動を与えます。
ちょっと「ベロベロバー」をしているような感じに見えます。
そのすぐ後に、今度は口器部分で、
やや強めに「ドーン」とメスに体当たりをします。
メスに当てる場所は口のあたりですが、分かり易く云うと“胸”といった感じです。
長〜い第三胸脚を開いて当たりますから、腕を大きく広げて胸で当たっているという感じなのです。
そして体当たりをしたすぐ後に、太くて長い足で「ポポポン」とメスを軽く叩きます。
体当たりをした離れ際にこれをします。

「プルプルプル」「ドーン」「ポポポン」がワンセット。
ワンセットで1,2秒程度です。
メスが動き回っている間は、何度も何度もこのセットをやり続けます。
「ドーン」と体当たりをする時は、かなり勢いがあり、
メスの体が動いてしまうくらいです。
勢い余って、メスの上側にのし上がってしまう事もあります。
この一連の行動は、ふだんのロックシュリンプからするとかなり力強い動きで、
大きなオスが、小さなメスに対して行うので、
「弱って赤くなったメスが、いじめられている」と思われてしまいそうな光景です。

※この行動の間も、それ以外でも、常にオスは手(第一・第二胸脚)でメスの体の表面をさすっては、
その手を口に運ぶという行動が見られますが、
これはヌマエビ類特有の”四六時中ツマツマ”と一緒と考えて良さそうです。
息をしているのと同じようなもので、特に重要なサインとは思えません。
勿論メスの体には触れますから、何らかの刺激にはなります。
ただ触れていない手も同じように動いています。


メスを守っている間も、オスの手は動きっぱなし。
繁殖行動に対しての意味は特になさそうです。


※この「プルプルプル」「ドーン」「ポポポン」ですが、
今回は爪が掛からないベアタンクの上で行なわれたので、こうなりました。
爪が掛からないので、勢い良く地面を掴もうとすると自分の体が上に上がったりしてしまう訳です。
足場の良いスポンジフィルターの上で行なわれた場合は、またちょっと違った見え方になると思います。

ガーディング01に近いかもしれません。(これは脱皮後の行動ですが)

メスが落ちつかずに動き回っている間じゅう、この“求愛・愛撫”は連続して行われますが、
メスが動かなくなると、オスのこの行動もピタッと見られなくなります。
オスはメスが目の前に静かにして居れば、それでいいらしく、
この脱皮前の段階では、完全に抱え込むような行動は見られず、
メスは比較的自由な状態です。
2匹の距離も、オスの第一触角の下2本の先がメスに触れているか触れていないか程度はあります。

これくらい離れていても、メスがじっとしていれば求愛行動はしません。
他のオスの侵入は断固阻止します。他のメスの侵入にはやや甘い。

オスは他のオスがそばに寄ると瞬間的な動きで脅し、相手のオスを跳び退かせます。
エビは他の生き物からの瞬間的な接触や衝撃を受けると後ろにジャンプせずにはいられないという
悲しい性を持った生き物ですから、これをどうも守る側がうまく利用しているようです。
天敵から反射的に逃げる為に備わった行動を逆手に取られているわけですね。
こればっかりは無くす訳にはいかない反射なので、守備側俄然有利です。


メスを追い払うメス

オスは脱皮時期ではない他のメスも排除しますが、オスに対してほどの攻撃ではない為、
他のメスが2匹のスペースに入り込んでしまう事がしばしばありました。
興味深いのは、2匹のスペースに入り込んできたメスを、
メス自身が叩き出すところです。
オスが排除し切れなかった他のメスを、
メスがしっかり邪魔者と認識して、これを自分のスペースから追い出します。
つまりメスははっきりとオス・メスを区別している事が分かります。
自分のそばで求愛行動をしているオスに対しては全く敵意を抱きません。
メス側にとって、オスは脱皮中の安全を確保してくれる護衛であり、
脱皮後に産む卵の父親になってもらわなければならない存在ですから、
そばに居てもらわなければ困ります。
メス側もオスをヒゲで触れて、その存在を常に確認している感じはあります。

ただ「どのオスがいいのか」には特に興味はないようです。
複数のオスが自分を巡って戦って、最終的に残った1匹が、
体も大きく精力も強いオスなはずですから、
選り好みをするまでもなく「一番イイ雄」がそばに居ることになるからでしょう。
「一番イイ雄」との子供を産めば、その息子も「一番イイ雄」になる可能性が高く、
自然に自分のDNAを多く残す事に繋がっていきますから、
メスにとっては特に選ぶという事をしなくても、それでいいのでしょう。

メスが選んだ脱皮の足場は、なんと直前に侵入してきたメスの背中。
当然ながら、動いた途端、コロンと横倒しに。(このまま脱皮続行)
奥で手をこまねいているオス。(しっかりして下さい)
共食いなんてものが無い方達なので、実害は無いですが。

2004/08/27 

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ロックシュリンプ・ギャラリー07『ガーディングから産卵への経過』


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