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ロックシュリンプのガーディング
〜雄の腕が太くて長い理由〜


2.ガーディング


雌を腕の間にしっかり収めている間、
雄は、近寄ってきた他の雄を、その太く長く発達した第三胸脚で追い払います。
この水槽にはもう一匹やや小型の雄が入っていますが、
この大きな雄にはとても敵いません。
追い払うと云っても、雌を腕の間に納めたまま、腕だけを外に裏拳のように広げたり、
鎌を振り下ろすような行動をして脅すだけで、
場所を移動して遠くまで追いまわす事はありません。
追い払われるのは同種の雄ばかりではなく、
プラナリア退治用に混泳されているクローキング・グラミーにも及びます。
第三胸脚を外側に広げて、ポンとはじく様に魚を脅します。
雄の長い腕の外側には、一本の良く発達した「とげ」がついています。
このトゲの付近を有効に利用して「裏拳」を入れます。

雄の第三胸脚にある大きな「トゲ」

興味深いのは、クローキング・グラミーの姿をしっかり目で追い、
その移動方向にしっかり身構えなおしていく行動でした。
ふだんエビを観察していても、「エビの目が良い」という印象はあまり感じないものです。
用水路にいるアメリカザリガニのように、人影に反応して跳び退くような、
大雑把な陰陽の区別程度ならしている感じはしますが、
ふつうは猫が小さな生き物の動きを凝視するような行動は見られません。

柔らかいメスをしっかりガード

しかし、このガーディングをしている時の雄は、
カマキリがバッタの動きを凝視するが如く、
クローキング・グラミーの動きをしっかり目で追っていました。
背中側に回り込まれた時は背中越しにちょっと振り返るかのようにです。
このクローキング・グラミーは、もうかなり大きく全長約5cmはありますが、
10cm近いこの雄のロックシュリンプからすれば随分小さい相手です。
脱皮前にも魚を追い回すシーンを観察できましたが、
触角で触れる感覚以外でも、
目で自分よりも小さな生き物を追うことができるエビなのにはかなり驚きました。
小魚などを捕まえて食べる生き物ではないのに、
これだけ小さな魚に敏感なのは、
捕食側としての目の良さではなく、防衛側としての目の良さ、
つまり、このロックシュリンプの生息地には、
ロックシュリンプを好んで食べる魚が多い事を意味していると判断して良さそうです。
脱皮直後の雌を守る雄の行動や、その雄の太く長く発達した第三胸脚の意味の一つは
この辺にありそうです。


2004/07/31 

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【関連】⇒ロックシュリンプ・ギャラリー05『ガーディング(?)』

【関連】⇒
ロックシュリンプ・ギャラリー07『ガーディングから産卵への経過』

 


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