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淡水でも育つゾエアを覆う「あきらめムード」


※追記(2010・08・09)
幻のヌマエビ大卵型ですが、実際にも幻だったようで、現在は概念自体が消滅しています。
簡単に言うと、ヌカエビでした。
頭の後方まで棘が生えたヌカエビ。
西日本にも生息しているヌカエビです。
東海・近畿・山陰・琵琶湖などに元々生息していました。


額角だけに頼って、生態や色彩・模様を全く無視した中から生まれた幻ですね。
普通に生き物としてストレートに見ていたら有り得ない勘違い。
白化した標本や論文のみしか見ない「机上の空論」が生んだエビなのではないかと思います。
「ヌマエビは地域によって大卵型と小卵型があり、種内分化が進んでいる」ともてはやされましたが、
額角が一緒だった別種でした。
ヌマエビとヌカエビは別種です。ヌマエビ大卵型は居ません。棘の多いヌカエビ。西日本のヌカエビです。
沼や池や湖にはヌマエビは居ない事になります。全部ヌカエビ側です。頭の後ろまで棘があるヌカエビです。

旧ヌマエビ大卵型の情報は非常に少ないです。
各種のヌマエビ類がひしめく中ですから、競合にやや押されている存在なのかもしれません。
参照⇒【旧ヌマエビ大卵型の画像が見られるページ

 

※追記(2007・03・25)
ヌマエビ大卵型、ヌマエビ小卵型、ヌカエビ、ヌマエビ南部群と、
ヌマエビ属に混乱した印象がありましたが、
遺伝学的な分類がなされているようで、
すでにスッキリしていたようです。
⇒【ヌマエビ・ヌカエビの新事情

※追記(2008・01・02)
「額角の違い=種類の違い」といった、
元々根拠の薄い識別方式に頼った結果の間違い、な感じです。
額角での種類見分けは現在では破綻しているようです。⇒【ヌカエビまとめ

※追記(2009・02・15)
「ヌマエビの混乱」を簡単にまとめてみました。⇒【ヌマエビの混乱

 


幻?の大卵型ヌマエビ Paratya compressa compressa Large egg type

ゾエア期を持つヌマエビ類をすべて一色単にして語り続けられている「あきらめムード」。
これは知らず知らずのうちに浸透しているようで、
実際、淡水で繁殖できる日本産のエビはミナミヌマエビだけ、と思っている人は多いと思います。

しかし、ヌマエビ類の代表“ヌマエビ”にも大卵型があるようです。
ヌマエビ(Paratya compressa compressa)には大卵型と小卵型が居て、
大卵型のヌマエビは、ミナミヌマエビと同じように仔エビとして生まれるわけですから、
ミナミヌマエビと同等にもっともっと一般化しても良かった筈の種類。

ヌカエビと飼育上の難易度に大きな差が無いとするならば、
過剰な交接もないであろうし、喧嘩はしないであろうし、
ヤマトヌマエビのようなやや獰猛な部分も持ち合わせていないはずで、
しかも体はミナミの一般的なサイズよりも一回り大きいと、
これほど好条件の揃った種は他に無いくらいとなりますが(高水温起因の障害は多いかも)、
実際のところは、大粒の卵を抱えた個体の写真すらネット上で見られないという状態。

正直な話、大卵型のヌマエビが爆殖している写真を見て、
「いいな、いいな」と羨ましがりたいところなのですが、
あきらめムードの足かせが効いていて挑戦する方が居ないのか、
あるいは、繁殖してもミナミヌマエビと混同されているのか、その姿さえも拝めない。
(ヌマエビ大卵型とミナミヌマエビの分布は重なっている可能性が大きそう)
現在の感じだと「大卵型のヌマエビなんて、本当に居るの?」という印象の方が強い。

日本の広い範囲に生息しているヌカエビとヌマエビに関しては、
ヌカエビが完全に淡水繁殖可能で、ヌマエビの大卵型も当然淡水でOKだと思いますから、
淡水水槽で殖やせる個体群に出会える可能性は案外高いのかもしれません。

ヌカエビ(Paratya compressa improvisa)中卵型 かなり大きめのゾエアで生まれる陸封型。海水不要!
ヌマエビ(Paratya compressa compressa)大卵型 ミナミヌマエビ同様に稚エビで生まれるはず。
ヌマエビ(Paratya compressa compressa)小卵型 海水が必要と思われるのは、このタイプのみ。

http://www.japan-net.ne.jp/next/red/red-gaiden.html
Q:東北地方のヌマエビについて。

この両亜種の分布の区分は極めて単純。
ヌカエビは新潟から静岡・愛知にかけて南北に連なる「北アルプス・中央アルプス・南アルプス」の東側。
ヌマエビはその西側に分布していると思って良さそうです。
つまり、本州の真ん中にある高い山々を越えて混ざることが出来なかった、といった分布のしかた。
上流を目指す脱走名人達も、雷鳥がいるような3000メートル級の瓦礫の尾根を超えて、
山向こうの谷川に到達する者は居なかった・・・という認識で良さそうに思えます。
山の影響が少ない太平洋側の平地の一部で両種が混ざって棲んでいる場合もあるというのも頷ける。

立体地図
(追記2005/10/17)
http://www.trust-system.co.jp/japancalender.htm
エビの分布拡大の大きな障壁、
中部地方の峰々が手に取るように分かります。
これらの山々を歩いて越えることはエビには不可能でしょう。

黒潮と親潮
http://www.jamstec.go.jp/jamstec-j/earth/p2/index.html
多くの南方系のエビが棲む沖縄や九州から、小卵型ゾエアの乗った海流が陸地をなめて行く。
南方系のコンジンテナガエビやヒメヌマエビなんかが関東あたりで発見される事もあるとか。
(もっとも、沖縄・九州のエビも、さらに南から流れて来たものが多いのでしょうけど)
黒潮が届く房総半島や小笠原諸島父島にも南方系小卵型エビが生息するようです。
しかし、そんな沿岸や離島を通り過ぎてしまったゾエアはどうなるのでしょう。
「し、島が離れていく・・・・」
そういう運命の子供があっても採算が取れる数を産んでいるわけですね。小卵型って怖すぎ(^^;。

日本近海の海流
http://www.umifunehaku-net.jp/mamejiten/shizen/shizen_14.html
これを見ると、対馬海流に乗ったヌマエビ小卵型のゾエアが、
東北、北海道に漂着しても不思議はなさそうですが、
山岳的な要因のみ(?)で分布が分けられている感じなのが、なんとも不思議。
(黒潮に比較できるほどの流量ではないのかも)

※ヌマエビの分布に関しては、異なる表記も多く、どれを信じて良いのやら、な印象も。
http://www2.fish-u.ac.jp/LAIZ/topics/tansui/plate2.html
小卵型ヌマエビは「本州中部以南」という記述ですが、
大卵型ヌマエビは「北海道を除く」という記述。
これは北海道を除く日本全土という意味なのか?
http://homepage1.nifty.com/gebara/ebizukan/numa.htmlエビずかん
エビ図鑑では逆の表記。本州中部以南が大卵型で、小卵型は北海道を除くと書いてある。

※ちなみに、“
エビずかん”は“珍エビ捜索隊”というサイトに置かれているコンテンツの一つ。
珍エビ捜索隊の隊員の方々と“
えび道”の“このエビなにエビ?”という画像掲示板が連携して作った物。
雑誌で何度か、他の個人サイトの所有のように紹介されていますが、誤まりです。
※珍エビ捜索隊は最近、人知れずURLの変更が行なわれています。
エビサイトのほとんどのリンク集からは、まず入れません。
エビずかんからも戻れません(^^;

珍エビ捜索隊の新URL↓
http://www.aquatailors.co.jp/tinebi/

↓同じ水産大学校の記述には、
http://www.japan-net.ne.jp/next/red/red-gaiden.html
Q:東北地方のヌマエビについて。
太平洋側の一部に両種が混凄する場所もあるというニュアンスですから、
両者が大きく混ざって居る地域は少ないと見て良さそう。

・書物での一般的な表記は「本州中部以南がヌマエビ、本州中部以北がヌカエビ」で統一気味。
ヌカエビを「北方系」、ヌマエビを「南方系」という感じで呼んでいますから、
概ね、上記のアルプスでの区分程度に思っていて良さそうです。
・大卵型と小卵型の型別の分布を表記しているものは見掛けませんでした。
・本州中部という言い方がピンと来ないかもですが、北・中央・南アルプスのある辺りと思って良さそう。
白馬・穂高・上高地・乗鞍・木曽・赤石といった山々が連なる辺り。
(その中の沢にどのように分布しているのかまでは知る由もないですが(^^;)
ちなみに、北海道にはヌマエビやヌカエビが居るとか居ないとか情報が錯綜しているもよう。
移入なのか自然な生息地拡大なのか難しいような印象。(アメリカザリガニと同じような状況?)
案外、青函トンネルの排水溝を行き来してたりして(^^;

 

ヌカエビやヌマエビ大卵型がいくらでも居る地域なのに、
わざわざ他地域のミナミヌマエビや中国産のシナヌマエビ類を買って飼っているとしたら、
ちょっと残念な気もします。
どこのヌマエビが大卵型で、どこのヌマエビが小卵型だといった
詳しく纏まった情報は出回っていないようなので、
近所の川の“ヌマエビ”が、ヌカエビなのかヌマエビの小卵型なのか大卵型なのかなんていうのを
確かめてみるのも一興だと思います。
(案外、ミゾレヌマエビやヒメヌマエビあたりにも中卵型が存在する可能性もあるかも?)
水槽で殖やせるタイプなら、自分で繁殖させた稚エビを見られたりして、楽しみ倍増!
特に浮遊ゾエアを仔エビに出来たら、より愛着が増す存在になるのは間違いないでしょう。

早くから正確な情報が出ていたら、
もっともっと親しみを持てる存在として人気が出ていたはずの淡水育ちのエビ達。
21世紀現在でも流布し続けられている無粋な「御気楽あきらめムード」に毒されて、
淡水でも繁殖できる彼等の不思議な生態をみすみす見逃してしまう事のないように
願うばかりです。

 

もう一回、この繁殖形態の分類を・・・
http://www2.fish-u.ac.jp/LAIZ/topics/tansui/plate2.html
淡水で繁殖できる種類は、こんなにある。


ゾエアという不思議な姿も味わえる御得なエビ、ヌカエビ。
「YOUも、殖やしちゃいなヨ」

 

2005/07/01

 

一般向けに広められる「誤情報」

ヌカエビの繁殖は難しい?

スジエビも覆う「御気楽あきらめムード」

幻?の大卵型ヌマエビ Paratya compressa compressa Large egg type

 


エビの生息分布図を作ってみました。⇒【日本産淡水エビの分布図】新しい情報などもこちらで


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