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前側角部の棘
市販のミナミヌマエビ(シナヌマエビ類)と、レッドチェリーシュリンプの頭部の比較


市販の“ミナミヌマエビ”の頭部 その1・・・・・前側角部に棘があるタイプ


「触角板?」と書いてある部分の名称は「触角鱗片」、または「第二触角鱗片」なようです。(2006・09・04追記)

“ミナミヌマエビ”として市販されていた謎ミナミの子孫達の顔を拡大して見てみました。
この個体は色々居るタイプの中でも額角がやや長めのタイプ。
それでも額角は第一触角柄部先端の、Y字に鞭状部が分かれている所に達していません。
日本産の本物ミナミヌマエビと輸入ミナミ(シナヌマエビ類)との簡単な見分け方は、
額角が柄部先端に達しているかいないか」なようです。

ウェブ上の情報や文献から総じると、
日本在来ミナミヌマエビは、
「額角が柄部先端に達するか越える長さである」というのが云えそうなので、
この写真の個体程度の額角の長さでは、本物ミナミヌマエビというには怪しそうです。

こちら↓の19番に良く似た写真があります。が、こちらの額角は柄部を超える長さです。
http://www.hpmix.com/home/tenaga/konekonomori2/AI4.htmKONEKOの森
(なぜか、27番のミナミはコツノヌマエビ風の“激短額角”)

採集した“ミナミヌマエビ”を文献で同定する過程が楽しめます。
http://blog.goo.ne.jp/catfishtail/e/bfb08e8b363b87c836538ac7cd80b66b【ひだまりらいふ】

本物、市販のもの、あやしいもの、などが居るようです。
http://osampo1.hp.infoseek.co.jp/shrimp/kowai.html【水際喫茶室】

ノコギリヌマエビ(トロピカルシュリンプ)【えびずかん】
http://homepage1.nifty.com/gebara/ebizukan/nokogirinuma.html
これもシナヌマエビの一種なのかも。

 

 

前側角部のトゲ

ミナミヌマエビと他のヌマエビ類を見分けるものとして、
額角以外に、もうひとつ「前側角部の棘」というものがあります。

前側角部
http://www.geocities.co.jp/Outdoors/7766/kawaebi/ebisyurui/N.denticulata.htmlKENKEN’S HP

前側角部に棘があるのは、日本のヌマエビ類の中では、ミナミヌマエビだけらしいです。
上の写真の謎ミナミは、前側角部に棘があるので、
そこだけからすれば、日本のミナミヌマエビのようにも思えます。
しかし、外国産のヌマエビ類にも「前側角部の棘」が存在する可能性はある訳で、
実際、インドグリーンシュリンプには前側角部に棘があるように見えます。
http://park17.wakwak.com/~kabukabu/data-green_s.htm(右下)KabuKabu
額角が柄部を超えて、前側角部にも棘がある=ミナミヌマエビではないですね。
あくまで、「日本のヌマエビ類では」という事です。
※追記2007・05・09
近年あらたに輸入された“アルジーライムシュリンプ”というシナヌマエビの一種と思われるエビには
前側角部に鋭利な棘があるようです。


しかし、この「前側角部の棘」に留意してミナミヌマエビの仲間を見てみると、
面白い事に気が付くのは間違いなしです。


額角が短くて、丸い頭という印象の市販ミナミヌマエビの別タイプ個体。
前側角部にはポチッとトゲがあります。(上の写真の謎ミナミとは前側角部の形が違う)

我が家のミナミ水槽、
額角の長さが様々な“ミナミ”が混ざっているのと同様に、
前側角部の棘の有無や大小も様々なのかも…
参照⇒【本当にミナミヌマエビ?

 

レッドチェリーシュリンプの頭部・・・・・前側角部に棘がない!!


濃いワインレッドになっている老齢なレッドチェリーの雌です。
レッドチェリーシュリンプとしては額角が長めな個体で、
柄部先端に迫る勢いですが、残念ながら達してはいません。
この個体の前側角部と思われる部分は、
他の個体に比べて角張っていましたが(ほとんどの個体は下の写真のようにもっと丸い)、
ルーペやデジカメ画像で見る限りでは明確な棘はありませんでした。

他にも、上の“謎ミナミ”のするっとしたヒゲと異なり、
鞭状部に細かい毛がたくさん生えているのが特徴的です。
このヒゲだけを見ても同一種な印象は消えてしまいます。


我が家に居るレッドチェリーシュリンプのほとんど全部が、
こんな、前側角部付近が丸いタイプ。
「棘」っぽい部分は見当たりません。
額角が短いという事と、前側角部に棘がないという二点からすると、
レッドチェリーシュリンプは日本産のミナミヌマエビと同一種ではなさそうに思えます。
参照⇒【レッドチェリーシュリンプの頭部拡大
倍率を上げると微妙に棘と判断できそうな前側角部な個体もあるようです。
相当に小さい棘ですので、肉眼やルーペでは確認できません。

 

市販の“ミナミヌマエビ”の頭部 その2・・・・・発見!前側角部に棘がないミナミヌマエビ^^;


「触角板?」と書いてある部分の名称は「触角鱗片」、または「第二触角鱗片」なようです。(2006・09・04追記)

上の謎ミナミ達と一緒に“ミナミヌマエビ水槽”に入っている謎ミナミの別タイプの個体です。
額角も短めですが、なんといっても、ミナミヌマエビに特有なはずの「前側角部の棘」がありません。
上のレッドチェリーの前側角部と同様につるんと丸いです。
(鞭状部の付け根付近にレッドチェリーと似て、毛が多いです。一番上の“謎ミナミ”と比較すると良く分かります)

個人的ミナミヌマエビ(本物)の見分け方
1.額角の長さが第一触角柄部先端に達するか、あるいは越えている。
2.前側角部に明確な棘がある。


からすると、この個体は、
・柄部先端より明らかに短い額角。
・見事に棘の無い前側角部。
なので、これはもう個人的には、国産本物ミナミヌマエビからは、かなり遠い個体になります。

新たに琵琶湖へ侵入したシナヌマエビ?
http://www.lbri.go.jp/omia/80/omia80.htm
ここに掲載されているシナヌマエビの写真にも前側角部に棘がありません。

「額角の長さ」と「前側角部の棘」の二点を見た感じからすると、
アクアリウム業界でいうミナミヌマエビは、“ミナミヌマエビっぽいエビの総称”という印象が強くなります。
レッドチェリーシュリンプも「ミナミヌマエビ・レッド」という名で販売されていたそうですが、
この場合の“ミナミヌマエビ”も本来の在来ミナミヌマエビを指した言葉ではないでしょう。
アクア業界の商品名であって、種名ではないですね。
「ミナミヌマエビの色彩変異個体」として売られているエビの多くは、
一目で額角が短い!と分かる個体ばかりで、
日本在来種のミナミヌマエビを改良したと思える品種には、なかなか御目に掛かれません。
これはおそらく養殖量の問題でしょう。
淘汰され易い色彩変異でも、天敵に狙われない安全な人口飼育下では生き残れますから、
大量繁殖した過程で出た色彩変異を抜き取って増殖させている場所と、養殖している種類が、
日本のミナミヌマエビとは無縁な場合が多いという事になるかと思います。

“ミナミヌマエビ”という名前が示す意味合いには、
広義のミナミヌマエビ=シナ、コウライ、ノコギリ(トロピカルシュリンプ)などの外国産近縁種を含む。
狭義のミナミヌマエビ=日本在来のミナミヌマエビ一種のみ。
という二つの考え方があると思っていたほうが賢明なようです。
ふつう、売る側は広義、買う側は狭義として受け取っていますから、両者の溝は大きいですね。
100円のルーペを覗けば2,3秒で埋められますが・・・(^^;)

2006/01/07

 

追記(2006・01・18)
レッドチェリーシュリンプとの交雑に使った“ミナミヌマエビ”の頭部も拡大して見てみました。
⇒【
前側角部の棘(その二)

 

●日本のミナミヌマエビと近縁外来種が交雑の可能性が大きい2009/03/16追加情報
http://www.esj.ne.jp/meeting/abst/56/L1-11.html
日本のミナミヌマエビとシナヌマエビ類は交雑しないという噂でしたが、
さすがに20種類以上も居ると、そうもいかないようです。
複数の地域で交雑の可能性が高いようです。
http://www.esj.ne.jp/meeting/abst/56/PA2-605.html
文中にあるheteropodaと、palmataは、見た事のあるエビの筈です。
学名で検索すると面白いです。

 

 

 


2007・05・09 更新


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