エビの交接から共食いへの経過  (説明は⇒エビの共食いについて」で)


脱皮した雌の周りに雄が集まってきました。


背後から♂にしがみ付かれると、♀は身動きしなくなる
一種のプログラムがかかるようです。


この♀のバンザイ状態になる行動は、アメリカザリガニでも同じ。




今、まさに精包の授受が行なわれています(真ん中が雌)。
雌の背中にいる雄(一番下)がよろしくない。


交接に頓挫したまま、御食事モードに変更しています。


眼のあたりをさかんにツマツマ。


身動きとれない状態に、次々と雄が訪れます。


モテ過ぎです。「交尾栓」が無いのは明らかな様です。


交接に頓挫した雄は、必ずといってよいほど「ツマ」っとします。
右側の雄はハサミ脚を畳んで、まだ交接モードです。


雌にくっついた雄は、触角の基部・柄部を下に向けるため、
鼻の下を伸ばしたような顔になります。恐らく向きの確認。
雄は上下逆さまに跳び付く事は無い事から、
雌の眼の付近からフェロモンが分泌されている可能性は高いかも。


性フェロモンより血の匂いが上回り始めたようで、
上から来た一匹は、御食事モードです。


真ん中の“受精嚢”と思われる白い部分があるのが♀。
下の雄は交接モード(第一・第二胸脚をきちんと畳んでいます)ですが、
まわりの雄はツマツマモード。


水底に落ちました。
右側の雄がものすごい勢いで腹肢を使って腹部を密着させているところ。
交接に腹肢は使わず、胸脚の付け根を押しつけていました。


もう、この時点では性フェロモンに反応して飛びついてきた雄は
交接行動に移らず、そのまま御食事モードになります。


水底には雌が多く、お食事メンバーに雌が加わります。
ここからはよく見る共食い風景です。


どこからどこまでが交尾で、どこからが共食いなのか、明確な線はありません。
基本的には一匹の雄との一回の交接で抱卵できますから、
それ以降は全て不必要と判断して良いかもしれません。

同じ死骸でも、病死や老衰で死んだものと、脱皮直後のものでは「人気」が違います。
脱皮直後のものは、あっという間に食べきられてしまいますが、
ただの死体はそのまま放置されて、カチカチになっている場合が多いです。
脱皮直後は軟らかいので、むきエビと殻付きエビの違いでしょうか。
観察が行き届かない場合、死体も脱皮ガラも残らない完全犯罪になる事も多いでしょう。
匂いの強いヒカリキャットをそばに落としても、雌の人気の方が遥かに上です。

脱皮直後というのは、体が非常にやわらかい状態ですから、
本来なら、静かな場所でそーっと一匹で過ごしたい時間であると思います。
その一番弱い時期に交尾をするということ自体が、すでに危険な行為ではあるのです。
雌と雄には、風呂上がりと鎧の騎士くらいの違いがあるわけです。
この、雌にとって危険度が高い生殖方法であるという事に、
水槽内で多数の個体を飼うという行為が重なる事によって共食いが起こると思われます。
脱皮後に休憩中の♀
♂の「抱卵の舞」の喧騒の中、水面付近で休息する脱皮後の♀。
頭胸甲に白い
受精嚢と思われる部分が見えます。
♂が多すぎなければ、自然に産卵に至ります。

小型の水槽では雄の飼育数には特に注意が必要です。
3桁にならないような調整はした方がよいでしょう。
もちろんそれ以下でも共食いが起こったら調整は行ないます。
CRSはミナミヌマエビよりもマシな方です。ミナミの雄は相当精力が高いのでさらに注意です。
ヌカエビParatya compressa improvisaでは、多数の飼育でもこのタイプの共食いは見られなかったので、
Neocaridina属特有の悪癖なのかもしれません。

ミナミヌマエビの場合。何がどれやら。

しかし、CRSもミナミも、同性の脱皮には興味は無い様です。
雄の個体が脱皮直後に寄ってたかって食べられる事も、今のところ見たことはありません。

また、未成熟な雌の、成長に伴う脱皮にも無反応のようです。
稚エビや仔エビをたくさん集めて育てていても成長過程で共食いが起こることはありませんが、
メスが成熟し、卵巣が発達した後に行なう最初の生殖脱皮をした途端、共食いに遭う事が多いです。
同腹の仔エビでも雄の成熟は早く(参考⇒
CRSのおすめすの見分け方)、
その雌が生殖脱皮をする頃には、水槽内には成熟を果たした雄が大量に居る事になるからでしょう。


CRS
雄エビ100%の水槽(36cm水槽)では、300匹以上居ても共食いはゼロでした。
雌エビ100%200匹以上でも共食いはありませんでした(36cm水槽。60cm水槽)。

ミナミヌマエビ
雄エビのみ500匹の水槽(45cm水槽)でも共食いはゼロ。
雌エビのみ300匹以上でも共食いは皆無でした(45cm水槽)。


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2003/10/13 


2004/01/10 追記
2004/05/13 ミナミの写真追加


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