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ヒラテテナガエビ(ヤマトテナガエビ)の
縞々シャツ その2



前回、明瞭な縞々シャツを着ていた、やや幼い印象だったヒラテテナガエビ。
ちょっと見ないうちに、腕を太くし、シマシマの柄も変わっていました。
ヒラテテナガエビ(有力な別名ヤマトテナガエビも同じ種)が説明されている文章などには、
よく「模様はない」といった方向で書かれる事が多いようです。
しかし、前回の記事の模様変化を参考にしていただければ解かるように、
種類として他の本州産テナガエビと明瞭に区別のつく独特の模様の所持者です。
大型個体では模様の隙間が埋まり、際立つ模様が目立たなくなるために「模様が無い」かのように見えるだけです。
この「模様は無い」に従って、若いヒラテテナガエビを見てしまうと、
くっきりとした縞模様所持者ですから、「ヒラテテナガエビではなさそうだ」という結論を得てしまいかねません。
模様のある種類から探しますから、「横筋がたくさんあるのでスジエビなのかも」といった方向にも行ってしまいそうです。
“大型の個体の場合は”際立つほどの模様は無い、といった成長過程のどの部分かの断り書きが欠かせません。
他のテナガ類と違って、ヒラテは模様の変化があることをきちんと知って居ないと、
きっと、戸惑ってしまうと思います。
参照⇒【スジエビの範囲
透明でスジがあればスジエビではないです。
種類ごとの模様の位置や形は重要です。透明度や腰の曲がりは参考程度。


4本の太い縞はそのままに、その間にさらに黒い細い縞が入りました。
よく見ると、上2段には、真ん中に白い(ピンク)の縞があり、その上側にも、
さらに細い黒い縞が入っています。
つまり、前回の横縞の間にあった白い線の上下に黒縞が2本追加されています。
下側の縞の間や、甲羅の下部の隙間にも、
太い波線模様が入っています。
前回、白い面積の大きな部分だった所が、模様で埋まってきました。


甲羅に高さが出て来ると、それに合わせて新しい横線で隙間を埋める様です。
これが何度か繰り返され、やがて上下が繋がり、迷路状に入り組んだ模様に見えて行くようです。
「模様が無い」という方向に向かって行く過程では「模様がある」ので、
このあたりは留意したほうが賢明だと思います。(成長しても迷路模様はあります)


このヒラテテナガエビ、これくらいに育った個体は穴掘りがとても好きな様です。
毎日、底の起伏が変わっています。(36cm水槽なので、ほぼ全体の風景が変わってしまう)
巣作りなのか、餌探しなのか。
どちらかというと巣作りに近い印象ですが、全く関係のなさそうな場所も掘ってあるので、
意味は半分半分のようです。
前回の小さな頃は、ほとんどなかった行動ですが、
それだけ力が強くなった証拠です。

エビもザリガニもそうですが、一回の脱皮で、それまで同居が可能だった生物を、
貪り食うような個体に大変身してしまうことがあります。
脱皮ごとに、前とは違った個体を飼うような感じです。
他の魚やエビ達と混泳され易いスジエビだと、雌が突然大きくなり、
夜毎、尾びれの無い魚が続出。
夜目の効かない魚達には暗闇ハサミ地獄ですし、ヌマエビ類にとっては、脱皮で命を落とすことになります。
スジエビやテナガエビを混泳水槽で飼う場合は、あらかじめ最終的な雌の大きさと性格を知った上で決断しないと、
他の混泳魚にもスジエビ達にも良くない結果が生じます。(観賞魚店では、ひ弱そうな個体が売られています)
このあたりは、脱皮で突然の変身を遂げる甲殻類ならではの注意点です。
昨日と今日では、入っていたエビの大きさや力、そして道具が全く変わってしまいます。
幼児用のハサミだったものが、剪定バサミや刈り込みバサミになります。
脱皮を挟んで、まるで別の見覚えのない大きな個体になります。
脱皮をしない魚では、徐々に魚が大きくなり、徐々に混泳が不可能になって行くわけですが、
エビの場合は可能と不可能がたった一日の間に起こります。
ヒラテテナガエビは、小さな時期は、同種や他種のエビを狩ろうという意識は見られません。
テナガエビやミナミテナガエビよりは、かなり安心な部類です。
この水槽にも数種類のヌマエビ類が入っていますが、現在までは数を減らしていませんし、
捕食しようという強い欲求は感じません。(脱皮の最中であれば食べると思います)
ただ、今後もそれが続くかは解かりません。
食に対する欲求が極めて高い種類なので、混泳向きではない事は確かだと思います。


水草の根元に掘った巣穴から顔を出して休憩中。
この水槽に植えてある水草は、
湧き水を根源とする流れの強い細流に密生していた在来のセキショウモの仲間と思われる水草です。
尋常ではない剛健さですから、掘り返しにも負けませんが、
弱い水草だと、この掘り返しは少々厳しいかもしれません。
次に変身した時には、この水草も全部抜かれるかもしれないと思っています。
おもしろい行動を見させてもらえて嬉しい部分ではありますが、少々気掛かり。

 

このヒラテテナガエビの飼育環境

水槽:36cm規格水槽。
脱走対策:フタの隙間にスポンジを詰めて完璧。ヒラテはどんな小型個体でも脱走名人 。
濾過装置:ダブルブリラント1基。(詰まり易いエアー注入部分のパーツは水道用L字部品などで改造←必須)
濾材の洗浄:年間ほぼゼロ。パンパンに詰まったり、ゴッポゴッポしたらするくらい。
エアー量:普通。(止水環境には弱いです)
水温:屋内常温。置き場所は北向き廊下。
照明:植物育成・観賞用NECビオルックス15Wを半分。(水槽を2つ並べている為半分づつ)
照射時間:7時間半(タイマー制御)
底床:ソイル・アマゾニアに、園芸用赤玉土を混ぜた物。
水草:採集した小型のセキショウモの仲間
添加剤・肥料など:なし
同居生物:レッドチェリーの雄、ミゾレヌマエビ数匹
水換え:年に3〜4回。3分の1から半分程度。エアーホースで注入。ハイポでカルキ抜きした溜め水。
餌:キョーリンのザリガニの餌のみ。一日1〜2回、3粒ずつ程度。(大騒ぎで食べる事を確認しつつ与えます)
注意事項:第一に脱走の防止。どんなに小さな個体でも隙間対策は確実にする必要があります。
わずか1.5cmの個体でも脱走して干乾びた姿になりました。(エアー供給が絶たれたりすると脱走したがる行動が顕著)
肉食性がそれほど強くなく、ヌマエビ類的な側面がある為、餌を与えてもらえない事には耐えます。(成長は遅れます)
ヌマエビ類のようにツマツマと何かを食べる行動がよく見られます。
餌を食べなくなったら脱皮間近。
この時に餌を与え過ぎると腐ってしまい、水質悪化。←(一個ずつ反応を見て与えていれば気付きます)
脱皮日時はメモって置くと良いかもしれません。
テナガエビの仲間には餌を与えるのが面白く、ついついあげ過ぎる事になりますが、
食べ残しと糞尿による水質悪化が最も危険です。
単独飼育で脱走を防止してあれば、餌の与え過ぎが死因の第一位になると思います。
与え過ぎて、翌日に餌を食べない状態になってしまったら、
残り餌と糞の掃除を兼ねて半量の水換え(日陰に汲み置いても塩素は抜けませんので注意)、
その後、丸一日以上の給餌中止。
ヒラテテナガエビは丈夫ですから、これで体調回復できると思います。
小さな第一胸脚でさかんに餌を探す行動が確認できたら再度給餌を始めます。
大騒ぎで食べてくれれば一安心。
とにかく、盲目的に与えない事です。(結果的に苦しませます)

 

おすすめ情報

紹介した上記の個体も、自切をした個体ですが、
釣り上げられたヒラテテナガエビも自切をし易いそうです。
テナガエビではあまりない性質だと思います。
http://www.tenagaweb.com/2008/06/post_7106.html【テナガWEB】
最もおいしそうな部分が目の前でぽろぽろ落ちてしまうのは悲しいですね。
網で捕ったほうが良いのかもしれません。
指節の短さと、しがみ付きの強さの実体験も興味深いです。

ヒラテテナガエビの模様は縦縞
http://www.geocities.co.jp/Outdoors/7766/kawaebi/ebisyurui/M.japonicum.html【川エビ雑話】
魚介類の体の縞は縦縞なのか横縞なのか。
これは釣り上げた時の、頭を上にした状態を基準にするようです。
淡水エビに関しても、それに倣っているようです。
横向きのエビしか見ない私個人は「横縞」と表記しますが、
正確には縦縞になるのだと思います。
(申し訳ないですが、今後もずーっと「横縞」と書くと思います。なんか気持ちが悪いので)

おすすめリンク

番匠おさかな館の図鑑・エビ
http://rs-yayoi.com/osakanakan/zukan/shrimpcrub/shrimptop.htm
模様を軽視していないので、生きたエビの見分け方として参考になると思います。
川エビの種類は、模様を見ないとまず見分けを失敗すると思ったほうが正解です。
因習の影響が根強い淡水エビ情報には種類間違いがあるのが常でしたが、
ここには、個人的に違和感や種類間違いを発見できなかった記憶があります。

 

2009/07/19


 


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