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ヒラテテナガエビ(ヤマトテナガエビ)
飼育四年半の状態



採集から四年半を経過したヒラテテナガエビです。
腕が随分と太くなり、立派な姿になりました。


採集当時がコレだった事を考えると、まるで別の生き物です。
(この時期はサンゴ砂で飼っていたようです。サンゴの粒が大きく見えます)
小さなヒラテテナガエビは透明で、スジエビやテナガエビと混同される可能性は高いと思いますが、
胸の横の模様で判断すれば問題なく識別出来るレベルです。
参照⇒【“スジエビ”の範囲
参照⇒【透明なエビ達
この個体は、田んぼ横のU字溝という、およそ考えられない場所に居ました。
しかも、とっくに稲刈りなど済んでいる、流れの無い浅く小さな水溜り。
あと数日で干乾びたであろうという絶体絶命の状態でした。
そこに偶然に入れた網に入っていたのです。
水がそこまで無くなるまでに、よく脱出しなかったものだという不思議さと、
炎天下の水溜りに生き残っていた丈夫さに驚きました。
ドジョウの生き残りでも居るかと思った一振りによく入ったものです。
透明でしたから、少しでも網がかすめてしまえば出会えていなかったことでしょう。


ヒラテテナガ特有の太い腕はこんな感じ。雄である事は間違いなさそうです。
この個体、なぜか単独飼いであるにもかかわらず、腕が片方ずつ落ちました。
参照⇒【ヒラテテナガエビの腕の再生
その落ちた順番にそのまま大きくなっています。
テッポウエビだと、大きかった腕が落ちると、その逆側が大きくなるなど、
エビの仲間には、腕の脱落で左右の変化が見られるようですが、
この個体に関しては落ちた順番のまま、左右の腕が不均衡です。
元通りに揃う事はなさそうです。
参照ページ川エビ雑話
http://www.geocities.co.jp/Outdoors/7766/kawaebi/ebisyurui/M.australe.html
ザラテテナガエビの腕の非対称についての経験談が書かれています。


両腕が揃っていた時期
(この時は富士砂で飼っていたよう。幅広い水質に適応するようです)
HN.しょっつる様から戴いた経験談では、
左右同時に第二胸脚を失った個体の腕は、
片側だけが大きくなってしまったそうです。
web上に公開されている多数のヒラテテナガエビの写真も、
・両腕同じ大きさ
・右だけ大きい
・左だけ大きい
という個体がばらばらに存在します。
生まれて一度も腕が落ちなかった個体のみが、
大きくなっても両腕が均等に揃った状態の個体になるのかもしれません。


自分の腕の掃除中。
ヒラテテナガエビは実に綺麗好き。上の写真でも眼の間をほじほじしています。
床が綺麗なのは、このエビが芝刈り名人だからです。⇒【コケを食べるテナガエビ
剪定バサミと全く同じ構造の小さなハサミ脚で、常に床に生える藻類をカット。
藻類が生える余地が無いようです。
しかし、水面近くのマツモに生える藻類には興味がありません。
水面近くにはかなりコケが生えているのですが、それらを刈る行動は見られません。
自分の腹の下にある硬い基質に生えたコケを食べる事にしかその特異な行動が発揮されない印象。
川でもこの行動が観察されるそうで、
流れの速い瀬で、ツマツマしている生活のようです。
参照ページ川エビ雑話
http://www.geocities.co.jp/Outdoors/7766/kawaebi/ebisyurui/M.japonicum.html


これは水槽側面の刈り込み現場。
この小さな剪定バサミを細かく使って、さくさくチョキチョキ。
手首の部分を器用に折って、ハサミを面に沿わせます。
ハサミの周囲に生えた毛で、苔の有無を感知しているようです。
底面を刈り取っている時が実に見事ですが、
人の気配に敏感で、すぐにこっちに向かって来てしまいますから、
なかなか作業中の行動が撮り難いです。


人の気配を感じると、腕を広げて、突進。急激なパンチで脅かすような行動をとります。
アメリカザリガニが人に対してハサミを振り上げるのとはまた違った、俊敏な動きです。
ザリガニは水草やスポンジフィルターまで食べてしまいますが、
このヒラテテナガエビは、そういう心配はしたことがありません。
前に伸ばしている小さなハサミが彼の生活をいろんな意味で支えている主役です。
これで食べられそうな物を口に持って行くだけ。
与えている餌は毎度御馴染み『キョーリンのザリガニの餌』オンリー。
(宣伝しても一粒も貰えませんが^^;、結果的に良い物なのでおすすめ。
市場から消えると困りますし。安価な粗悪品と交換される事はよくあること⇒ザリ餌比較はこちら
この餌と水槽内で自分で刈り込んだ苔のみで大きくなっています。
(マテナガやミナミテナガは、この餌に飽きたりしますが、ヒラテは飽きません。ロックシュリンプも飽きない)


この大きな腕はここでの生活ではあまり役に立っていません。
むしろ、餌を与えると、スポンジフィルターとガラスの間にまで強引に突っ込んで探します。
引っ掛かって腕を自切しないかと冷や冷やします。
食欲優先の行動で、狭い場所に落ちてしまった餌を諦めません。
無理やり辿りつきます。
ハサミの先の部分は匂いに敏感で、そして正確に餌を保持できます。
マテナガにはやや不器用でのんびりした雰囲気がありますが(餌も食べ残す)、
そういう部分はこのエビには全くありません。
餌は0.3秒で口の中です。
小さな時期は一日一個でしたが、
最近は五、六個を2回に分けて与えても足らない感じです。

小さな時期は、シナヌマエビ類やスジエビ(雄)達と暮らしていましたが、
特に他種を襲って食べるという経験はありません。
単独でツマツマしているのが普通の姿でした。

ミナミテナガエビではミゾレヌマエビやシナヌマエビ類を好んで捕らえて食べてしまいます。
マテナガも脱皮した途端にただの餌と化しました。(自分の脱皮では傷一つしない)
ミナミテナガエビは小さな時期から肉食性が強いです。
かなりの獰猛さで虎に近いイメージです(苔も食べない)。

ミナミテナガエビは、胸の横でデカデカと「」を主張していますが、
性格は完全な「S」。最も肉食性の強い淡水エビではないかと思います。
このミナミテナガエビとヒラテテナガエビは同じような環境に暮らして居るようです。
餌の競合を避けた事で、上手くやっていけている様に思えます。

ヒラテテナガエビでは幼少期、そして若エビの時期でも、
同居のエビは脚も欠けずに元気です。
現在、他にもヒラテの若エビ仔エビを数匹飼っていますが、同じ印象で、
追いかけたり、追い払ったりはしますが、
他種のエビに大きなダメージを与えようという意思はあまり感じられません。
(この大きくなった個体が他種を襲って食べるかは分かりませんが・・・・・
30cm水槽ですから有り得そう。一応“テナガエビ”ではありますから)


四年半も生きて来ていると、そろそろ寿命の事も考えておかなければいけなくなってきます。
このエビに関しての寿命(平均寿命ではなく、最長寿命)情報には出会えていません。
マテナガエビが4年限度という印象ですから、そこから考えるとそろそろお別れです。
しかし、異常に大きい個体も存在しますし、この個体が現在マックスな大きさとも思えません。
実は10年くらいは生きるのではないかと期待しています。
(巨大な個体では、胸の横の迷路模様がボケて、こげ茶色一色に近い印象があります。
この個体は、迷路模様・虫食い模様がはっきりしています。
模様からすれば、まだまだ若造といった感じ⇒上の他の写真参照。
食欲も全く落ちませんし、まだまだ脱皮で大きくなっていますので、
希望的観測で、あと2〜3年は生きるのではないかと勝手に思っています)

 

 

ヒラテテナガエビの飼い方(最近数年の飼育環境)

水槽:30cm規格水槽。明かりに怯えないので青底です。茶色い体は青い背景に映えます。
脱走対策:フタの隙間にスポンジを詰めて完璧。これが最重要項目かもしれません。
濾過装置:ダブルブリラント1基。(詰まり易いエアー注入部分のパーツは水道用L字部品などで改造←必須)
濾材の洗浄:ほぼゼロ。パンパンに詰まったらします。(詰まりは彼が自分で日々解消)
エアー量:やや強め。少々水音がうるさい程度。(止水環境にはやや弱い)
水温:屋内常温。ヒーター不使用。置き場所は北向き廊下。
照明:青紫のPGか10Wパルックcool(苔が発生し易いので、最近、昼白色に変更)
照射時間:9時間
底床:なし
水草:マツモを上層半分まで。それ以上に増えたら取り出し。(ボルビディスはチョキチョキと食われる)
添加剤・肥料など:なし
同居生物:なし。単独飼育。
水換え:年に3〜4回。3分の1から半分程度。エアーホースで注入。ハイポでカルキ抜きした溜め水。
餌:キョーリンのザリガニの餌のみ。一日1〜2回、4粒ずつ程度。(与えるだけ食べてしまう)
注意事項:脱走の防止に尽きます。どんなに小さな個体でも隙間対策は確実にする必要があります。
わずか1.5cmの個体でも脱走して干乾びた姿になりました。(エアー供給が絶たれたりすると脱走したがる行動が顕著)
肉食性がそれほど強くなく、ヌマエビ類的な側面がある為、餌を与えてもらえない事には耐えます。
ヌマエビ類のようにツマツマと何かを食べる行動がよく見られます。
餌を食べなくなったら脱皮間近。
この時に餌を与え過ぎると腐ってしまい、水質悪化。←(一個ずつ反応を見て与えていれば大丈夫です)
脱皮日時はメモって置くと良いかもしれません。

 

2009/06/16


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