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追記(2010/09/24)
近年、輸入されたスジエビの仲間と思われるエビが、観賞用として販売されているのを見掛けます。
これらは魚に対する攻撃性が低い事が多い印象。
中には
マジックシュリンプという名の、小魚に興味すらないようなスジエビの仲間もあります。
以下の記事は、在来種の採集スジエビに対する感想。
観賞用の輸入外来スジエビ、あるいは釣り餌の輸入スジエビに関しては、この限りではないかもしれません。
さらに、国内の在来種でもスジエビA型は陸封種で各地・各水系で大きさや性格が違う可能性が高いです。
http://www.lberi.jp/root/jp/05seika/omia/06/bkjhOmia6-4-2.htm
日本各地のスジエビが別種に近い独自の生活をしている事が推測される。

そして、河口域には大型のスジエビB型が存在し、それらはA型とは別種だそうです。⇒【
スジエビには大きく2種類ある
「スジエビ」という種名にはそのマジックシュリンプから10cm近いようなスジエビB型まで含まれます。
外国の近縁種や国内の地域個体群の違い、A型とB型の違いも含めて、すべて「スジエビ」の一言です。
素性次第で魚を襲うかもしれませんし、コケにしか興味がないかもしれません。
(最近は川で採集しても外来スジエビの可能性も・・・・・
大卵型で水槽でも殖える奇妙な模様と姿のスジエビ風エビが“あの川”を中心に増えている印象)
そして結構多いのが、他の種類との混同です。
テナガエビの子供からおとなしいヌカエビまでが「スジエビ」とされる事が多いです。
スジエビ自体に共通認識が難しい上に、これらの誤認も含まれて「スジエビ」の情報が形成されています。
参照⇒【
スジエビの範囲
「スジエビ」という種名に共通認識は存在しないと考えた方が現実に近い印象です。

 

スジエビの混泳を考える

クマもライオンも小さいうちはカワイイですよねぇ。
特に肉食獣の子供はしぐさが可愛くて。
でも、大きくなるにしたがって・・・
スジエビにも、肉食動物が持つような愛くるしさがあります。
草食動物のように一日中コケを食べているヌマエビ類とは、また別の魅力です。

ミナミヌマエビやミゾレヌマエビ等の日本の河川産のヌマエビ類を購入すると、
よく、スジエビが混ざっています。
特にミゾレヌマエビ、ヌカエビ、ヌマエビとは格好も類似しているため、判別されずに販売される様です。
しかし、良く見ると、目が飛び出してて、腰の曲がりが強く、小さいながらハサミを持っています。
実はあの獰猛で肉食性の強いテナガエビの仲間なんですね。
私の所でも水面まで上がってきて餌を食べる姿が面白いためかスジエビは人気者になる場合が多いです。
特に金魚用の赤いフレーク餌などを与えると、透明な体を通して、食べたものが胃(?)の中でコネコネ動く
ところが良く観察でき、他の生き物には無い魅力がある為、興味を持たれるようです。
私も何度となく魚と混泳させてきましたが、メダカのように余程大きさに差がない限りは、無難に混泳できました。
しかし最も最後に飼った6cmを超えるようなフルサイズ級のメスの個体には、やられてしまいました。
同サイズ位のタモロコとトウヨシノボリが立て続けに食べられてしまったのです。
どちらもスジエビより古株で、前夜までピンピンしていた個体でしたが、
朝になると哀れな姿になっていました。

魚だけではありません。脱皮した同種のスジエビも、何のためらいも無く食べてしまいます。
10匹前後を同じ水槽(60cm)に入れておくと、最終的に大きなメスの個体が残りました。
特別、飢餓状態に置いたわけでもないですし、隠れ家、水草も入れておいたにもかかわらずです。
同種でこんな有様ですから、ヌマエビ類との混泳では、さらに危険性は高いです。
ふだんは比較的大丈夫なのですが、脱皮をした途端、やはりただの餌になってしまいます。
脱皮した個体から次々と食べられてしまいました。
60cm水槽でミゾレヌマエビとの混泳をしていたことがありましたが、
毎回「ミゾレ居たよーっ」と、水草の奥から口にくわえて見せに来てくれます。(^^;
依って、以下は魚との混泳問題です。


常に殺し屋になるわけではない

この「常に殺し屋になるわけではない」という事が、
スジエビと魚の混泳を考えてしまう原因だと思います。
ザリガニやテナガエビのように、あきらかな「武器」を所持していたら、警戒して最初から混泳など考えませんね。
私も何度か混泳を試みましたが、餌が満ち足りていたり、水槽が広かったり、個体が小さかったりといった様々な
理由で問題無く飼えてしまう場合もありました。
体の平たいタイリクバラタナゴとは、うまく飼えたこともあります。
イトミミズを大量に与えていた頃は、ヨシノボリとも難無く飼えました。
産地の環境や個体の性質によっても違うかもしれませんし、
それらをすべて「スジエビ」にまとめる方に無理があるのかもしれません。
ただ「雌の最大級の個体」は例外無く危険だと思います。
産地によってもフルサイズは異なると思いますが、うちの場合、体長6cmを超えるような、つまむというより、
掴み甲斐のありそうな雌の自然採集個体は、ほとんど「殺し屋」でした。
細い針金にニボシやスルメ等をしっかり巻いて与えると、その驚くべき引っ張り力の強さを体感できます。
自然界でもお馴染みの隣人であるはずの前述のタモロコとトウヨシノボリもこのパワーにやられたようです。
ショップでも黒いスジがくっきり太い桁違いに大きな個体を見かける場合がありますが、
そのような個体は、もはやテナガエビのメスと大差ないです。

ヨシノボリ


主役なのか脇役なのか

飼い主にとって、スジエビがその水槽の「主役」なのか「脇役」なのかで、大きな違いが生じます。
主役であるならば、スジエビが好む種類の餌をたくさん貰えますし、
常に餌が足りているかどうか確認してもらえると思うので、魚との問題は少ないでしょう。
腹がいっぱいで栄養的にも満ち足りたスジエビが、わざわざ元気な魚を狩る必要は少ないからです。
しかし、逆にスジエビが脇役である場合は、かなり多くの問題が生じます。
餌が水槽に入れられた場合を考えてみましょう。
主役の魚達は飼い主が餌を与える前の行動を覚えていますから、餌をあげる頃には、もう投入口付近に群れていて、
餌をあげた瞬間から、あっという間に食べてしまうと思います。
スジエビは「匂い頼み」の生き物ですから、餌取りが遅れ、結果、腹を空かせた獰猛な行動に出やすくなります。
では、主役だったら絶対に魚を襲わないのかというと、その保証はないのです。
ヌマエビ類もそうですが、エビは「常に食べ続けている状態が普通」と言ってもいい生物だからです。


水槽内での狩猟方法

狩りは夜に行なわれる事がほとんどです。
たいがい朝になって、狩りが行なわれた事を、昨日までピンピンしていた魚の死体で気付かされることになります。
テナガエビほどの際立った武器が無いスジエビの狩りは、魚が元気で目が効く昼間に成功する事は少ないです。
魚は基本的に口以外の部分が物に触れるのを嫌いますから、
目の効く昼間にスジエビのハサミが届く範囲にわざわざ入ろうとはしません。
ですから、魚が水底に沈み、寝ぼけていて、スジエビが少しくらい触っても分からない頃に行なわれるのです。
主に寝込みの魚の尾びれをつかむという狩猟方法を用いるようです。
魚は尾びれの先端をつかまれてしまうと、まるっきり抗力を失ってしまいますから、
一晩あばれて疲弊した後にそのまま尾びれを食いちぎられ、餌食となってしまうようです。
魚の状態は健康でもOKです。一度傷ついた魚は、血の匂いを発しますから、
狭い水槽で「匂い頼み」のスジエビが見つけ出して、次の攻撃を加えるのは簡単です。
一回の攻撃は大した事なくても、一晩中突つき回されれば、健康な魚もギブアップです。
この方法を確認したのは、一晩スジエビの攻撃を耐えきったヨシノボリの見事に無くなった尾びれを見てです。

捕まえる魚の大きさはスジエビの大きさに比例します。
スジエビは自分の体より大きい魚を襲うような徒労はしないようです。
捕まえる魚のサイズは、だいたい自分の体長と同じか、それ以下です。
自分より小さければ小さいほど、捕まえる力は少なくて済みますが、ハサミやヒゲに触れにくいほど小さくては
逆に捕まえ難いですから、それ以下と言っても限度はあります。
この攻撃に対抗できる大きさの魚ですと、逆に脱皮した時のスジエビがステーキになる確率が上がります
(ウグイやチチブはこの常習犯です)。
何をもって混泳成功とするかは飼育者によって違うものでしょうが、魚種の選択、サイズの調整に気を配り、
余程スジエビ、魚どちらにも充実した餌やりが行なわれていない限り、
長期的混育に妥協点を見出すのは難しいと思います。
スジエビ自体は飼って楽しい生き物ですが、潜在的に「狩りをする力」は十分持ってますので、
絶えず警戒と疑念にさいなまれながら混泳させるよりは、単独で飼育した方が良い生き物だと痛感して、
私は混泳をあきらめました。

スジエビの、器用さ、何でも食べるしたたかさ、そして時には狩りも行なう獰猛さは、
これといった武器の無い「カラス」にも通じるものがあります。
日本全国に分布する力は、伊達ではありません。

2002/10/01 

参照⇒【エビギャラリー

参照⇒エビを食べていた魚(目撃談)


2004/08/10 一部書き足し。ヨシノボリ写真追加

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