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ミゾレヌマエビ(本物)
みぞれ模様



ミゾレヌマエビの名前の“みぞれ”は、当然、雨と雪の間の“霙”を指し、
その体じゅうに散りばめられた無数の白点を、降りしきる霙に喩えたものと推測できます。
ミゾレヌマエビの特徴を解説した文章を目にすることは多いですが、
その特徴を良く表わした写真と共に掲載されていることはまずありません。
ですから、ミゾレヌマエビのミゾレ部分の具体的な絵が思い浮かばなかったのですが、
こうして本当の姿を見ると、その名前が初めて納得できます。


この写真の個体は霙がかなり黄色味掛かっています。
その明色の点は、暗色の模様部分をつくる色素を避けて配置されているのがわかります。
ワンバウンド模様」も見事によけられ、霙はその間の白地の部分に配置されています。

“ミゾレヌマエビ”といえば、巷では“商品名としてのミゾレヌマエビ”であるヌマエビ南部群のほうが有名です。
「〜のほうが」というよりも、ほぼ名前を乗っ取られている状態です。
このヌマエビ南部群にも、白点が体に目立ちます。
商品説明文でもこの部分は強調され、しっかりと特徴を捉えた写真と共に掲載されますから、
スーッと納得して、完全にこちらを“ミゾレヌマエビ”として記憶することのほうが多いと思います。

観賞魚店や観賞魚雑誌、通販などで
“ミゾレヌマエビ”として圧倒的な知名度を誇るヌマエビ南部群。
金色の斑点が良く目立ち、その商品名にもピッタリ合っている。

ただ、両者を見比べると、ミゾレヌマエビの白点は、たいへんに細かく、全体的にまぶしてあって、
白点の位置の把握というものは出来ないくらいの多さであるのに対し、
ヌマエビ南部群のほうは、大きい点が決まった部分に配置されているだけといった違いがあります。
実は、この部分が問題でもあると思います。
このミゾレヌマエビに“ミゾレヌマエビ”という和名を与えた方は、
当然「実体顕微鏡」というものを覗いていると思います。
理科室などにある透過型顕微鏡はスライスした薄い物体しか見られませんが、
実体顕微鏡は、物の表面などを見るための顕微鏡で、
エビを見るためにはこちらを使うことになるはずです。


たいへんに模様の多い個体の腹節部分。
これも写真に撮って拡大して見た場合にはなるほど納得な名前通りの模様ですが、
遠目には赤っぽい個体でしかありません。

実体顕微鏡で見たミゾレヌマエビの体表面には、
白い霙模様はたくさん見えると思いますが、
では、肉眼で見たミゾレヌマエビに点々が確認できるのかというと
かなり難しいものと思います。
こちらに【メスの色々な色彩】がありますが、
そこにある写真は小さめです。(それでも肉眼で見るよりは相当に大きい)
当ページの個体と全く同じ時期の写真や、同じ写真もありますが、
その大きさのエビに白点を探せるかというと、なかなか難しいです。
このページでは白点だらけに写っているエビが、
そちらでは特に点の目立たない灰色っぽいエビとなっています。
実物大ではもっともっと白点を探すのは難しいことになると思います。

つまり肉眼では、大きい点を持ったヌマエビ南部群が「ミゾレ度」では俄然有利になってしまいます。
肉眼では本当のミゾレヌマエビにはミゾレ模様をあまり感じられませんが、
商品名のミゾレヌマエビにはそれを大きく感じる事が出来るわけです。
こんな部分も、二種を取り違えさせる原因としては大きいかも、といった印象を持ちます。
参照⇒【販売名としてのミゾレヌマエビ


赤色を帯びたメスの大型個体です。
これくらい綺麗であれば、和名の響きも納得ですが、
必ずしもこのような個体ばかりではありません。
このページには、当然ながら題名に合った、白点が多い個体ばかりを載せていますが、
ほとんどはもっと白点が目立たないただの灰色のエビです。
しかもオスは完全に透明と言ってよい姿ですし、
仔エビ・若エビも当然ミゾレ模様はありません。

つまり、ミゾレヌマエビという名前ではありますが、
ミゾレヌマエビらしいミゾレヌマエビというものに出会う確率は少ないのです。
大半はミゾレヌマエビという名からは程遠い姿で暮らしているわけです。
まず半分を占めるオス達には、全く名前が当てはまりません。
白点らしいものを体表に持っている個体がほとんどありません。
この部分で既にミゾレヌマエビの半分が迷走します。
そして若いエビ達も透明で、姿かたちからは種名に到達できません。
そしてメス自体にも「これぞミゾレヌマエビ!」の体を成している個体は少ないのです。

ミゾレヌマエビのオス
名前に合致する特徴は一つもない。
正しくミゾレヌマエビとされる事をまず見ないエビ。
この姿からはそれが普通ですが。

エビの名前に関しては、
ヤマトヌマエビやミナミヌマエビ、そしてヒメヌマエビのように、
名前からは具体的な姿かたちを連想できない種類と、
ミゾレヌマエビやヒラテテナガエビ、トゲナシヌマエビのように、
名前から特徴が推し測れるような名前が付いているものとがあります。
当然、ミゾレヌマエビに関しては後者で、
「体じゅうにミゾレ模様がいっぱい入っているのだろうな」
と思うのは普通だと思います。
名前にその種類の特徴を見出そうとし、
種類の見分けの頼みにしようとするのは自然な成り行きです。

しかし、当のミゾレヌマエビ自身の過半数には、それらしい特徴がないことになります。
一掴み程度の少数のメスに有った特徴によって付けられた名前といった感じが強く、
半数を占める雄、そして、若いメス達のことは範疇にないネーミングなのですね。
つまり、名前に説得力がないのです。
名前を告げられても
「ああ、なるほど、確かに」と思うことのほうが少ないわけですね。
種類全体に共通した名前であるといった印象が非常に薄いのです。
しかも、その名前に付けられるほどに特徴とされた白点に関しては、
他のヌマエビ類にも結構有している種類があり、
更には名前を取られてしまい兼ねないほどに
安定した大きな白点を持つ種類も居るという現実があります。

「ミゾレヌマエビって、そんなもの」と解かった後ならば、
その名前とのギャップは受け入れざるを得ない事実になりますが、
初めてミゾレヌマエビを見る方にしてみれば
「どこがミゾレヌマエビなの?」
「これが本当のミゾレヌマエビ???」
となるのが普通だと思います。
説得力のない名前をいくら連呼して力説したところで、
白眼視されるのが関の山だと思います。


この写真は、そんな疑問の声が上がりそうな個体です。
完全に名前負けしている大型のメス個体です。
一見すると、ただの灰色のエビです。
よーく見てみると、一応、白い斑点が見え、さらにそれより小さな白点が無数にあります。
薄汚〜いエビですが、これでも「ミゾレヌマエビ」です。
ミゾレヌマエビって、こんなものです。

 

2007/09/08

 

参照リンク

「ミゾレヌマエビ」で検索しても、なかなか本当のミゾレヌマエビに出会えず、
ほとんどヌマエビ南部群の情報や画像ばかり。

http://www2.fish-u.ac.jp/LAIZ/topics/tansui/tansui1.html【水産大学校】
あきらかに「ミゾレ度」が上回っているヌマエビ(小卵型)=ヌマエビ南部群。
片やミゾレ模様の乏しい本物のミゾレヌマエビ。
名前を取られる事に不思議を感じない。
※このページのミナミヌマエビの画像は典型的なミゾレヌマエビの模様配列に思えます。

http://banana-papaya.blogzine.jp/photos/ebi/mizore030905_t.html
きれいに霙模様の出ている個体。

http://www.zukan-bouz.com/ebi/numaebi/mizorenumaebi.html
遠目にはミナミヌマエビとそっくり。
・目の角度も前向き。
・額角も柄部先端を越える。
・背中に明色のラインが通る。
・額角上の頭の後ろまで歯が並ぶ。
・眼上棘がない。
などなど、ミナミヌマエビとの共通点が多い。
むしろヌマエビ南部群とは似ている部分は少ないです。
他種との混同の原因は単純に「本当のミゾレヌマエビが知られていない」だけ。

http://www.geocities.co.jp/Outdoors/7766/kawaebi/ebisyurui/C.leucosticta.html【KENKEN'S HP】
ミゾレヌマエビの解説

http://homepage1.nifty.com/gebara/ebizukan/mizorenuma.html【えびずかん】
額角の様子がわかる写真。
(一番上のは、おそらく商品名のほう)

http://www.interq.or.jp/jazz/rhinoda/aqua/ebi2.html
リュウキュウミゾレヌマエビとヌマエビ南部群
採集時にはミゾレ模様はよく発現しているそうです。
たしかに飼育していると薄くなる気も。

http://www.h2.dion.ne.jp/~karo/new_page_18.htm
琉球産。琉球産は赤味が強い印象。

http://www.rjnn.net/projectbee/diary/yasu/board.cgi?mode=past
琉球産。やはり赤い。
その下はリュウキュウ南部群?
南部群も赤味が強い印象。
※ヌマエビ南部群は琉球列島産が若干違う遺伝子を持つらしい。

http://toribaka.blog.drecom.jp/archive/82
奄美産は黒が濃い?

http://stay0329.fc2web.com/gallery.htm【BREEDING LIFE】
オレンジ色の大型メス個体(白点があります)や地味なメス、
透明なオスの写真など。
大量の繁殖に成功した「繁殖日記」もあります。

http://www2s.biglobe.ne.jp/~palaemon/atyidae.htm
二種類の“ミゾレヌマエビ”が同所に掲載されています。
別項目でヌマエビ(南部群)もあり。

http://www.geocities.co.jp/AnimalPark/2778/ebizubuzubu.htm
雄と雌の違いがよく写っています。
ミゾレヌマエビだと思われることが少ない、本当のミゾレヌマエビ。
※ミゾレヌマエビ自体は身近に居るポピュラーな種類(本州中部以南の下流域)。
希少なのはエビ自身ではなく「情報」。

http://www2u.biglobe.ne.jp/~niwasaki/mizore2.htm
“商品名のミゾレヌマエビ(ヌマエビ南部群)”
白点の大きさが実物大でもよくわかるので、
商品名が納得されやすい。

 

●参照⇒【ミゾレヌマエビの本物・偽物の見分け方】は簡単です。

 


ミゾレヌマエビの模様の特徴はこちら⇒【ミゾレヌマエビの模様の特徴2007・11・06追記


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