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淡水エビの見分け方 基本の「き」

まず3つに分けます

淡水エビを見分ける基本は、テナガエビ・スジエビ・ヌマエビ類の3つに分ける事です。
この3つに分けられれば、とりあえず一段落。あとは、ゆっくり見分けていけば良いと思います。
採集してきたエビを分けずに置いておくと、まずヌマエビ類が食べられ、次いでスジエビが姿を消し、
最後に大きなテナガエビだけが残る、という事に成り易いので、
すぐ三つに分けたほうが賢明です。(珍エビはヌマエビ類に多いので)

【その一】 テナガエビ(テナガエビ科) とても肉食性の強い大型のエビ達です

テナガエビ (テナガエビ科 テナガエビ属)
●鼻先を越える長いハサミ脚があります。


●胸の横に「m」に似た模様があります。(それ以外に目立つ模様はありません)
大型の個体はm模様が不鮮明な場合があります。

日本本土には、南国からの迷いエビ以外、まず三種類しか居ないので、見分けは容易と思います。
どれも長い チョキチョキがあります。
ヒラテテナガエビは「ミ」模様〜「迷路」模様。
腰に巻く白黒模様が目印ですが、ここに帯が巻くエビは多いので、慣れないうちは参考程度が無難です。

◆大変に肉食性が強いです。
攻撃的で、同種・他種を問わず共食いや攻撃をしかけます。
他の個体が近寄る事を非常に嫌い、手の届かない距離を保ちます。
10cm近くになりますので、大きい個体の見分けに困る事は少ないですが、
若エビ・子エビがヌマエビ類やスジエビと混同される場合があります。

◆見分けに用いる「長いハサミ脚」ですが、
テナガエビでは両腕とも取れてしまっている個体もたまに見掛けます。
ただ、第一胸脚(細いハサミ脚)は残っているので見分けは可能です⇒【
長い腕が無い場合


【その二】 スジエビ(テナガエビ科)←テナガエビ科です

関東では「モエビ」、関西では「シラサエビ」「湖産エビ」と呼ばれて釣り餌になるようです。

小さめですが、立派にテナガエビ科。肉食性の強いエビです。
●テナガエビ科ですから、鼻先を越える長いハサミ脚があります。 チョキチョキ。


●胸の横に“凶”の漢字に似た「逆さハの字」模様があります。
その他、体中に細く長いスジがたくさん走ります。(位置は一緒ですが、太さには地域差が少々あります)
・腰の一番出っ張った部分から腹の下にかけて、太い黒筋がすーっと一本斜めに入ります。
・体付きや大きさがテナガエビとヌマエビ類の中間的な感じの位置にあって、
ヌマエビ類に混ざっていた場合、負傷や捕食などのトラブルを発生させる場合が多い種類です。
特に注意してしっかり見分ける必要があります。
【参照】⇒【スジエビの見分け方

テナガエビほどではないですが、肉食性や攻撃性が強い個体群が多く、
脱皮したてのヌマエビ類は食べられてしまうことが多いです。
特に、産卵期で腹節の下が膨らんだ雌の大型個体は、夜中に魚の尾を背後から掴む狩りを行なったり、
脱皮した同種を共食いする事も多くなります。
スジエビには湖沼や河川上流域に暮らすA型と、河川下流域に暮らすB型が居て、
A型とB型は交配しない別種であることが観察されています。
A型は淡水繁殖ですが、各地域で卵の大きさが違い、
一番小さい琵琶湖群に対して最大7倍の大きさもある事が知られています。
B型は大型でスジ模様が太く濃いのが特徴で、ゾエアの生育には汽水が必要です。
【参照】スジエビの混泳を考える・・・・スジエビはカラスだと思っておくのが無難です。
ワシやタカには食べられますが、ハトやスズメは食べます。


◆スジエビはテナガエビの子供と混同される事が最も多いのではないかと思います。
テナガエビの仔エビや若エビをスジエビと間違えて飼うと、比べ物にならないほどの凶暴さなので要注意です。
胸の横の模様の違いをよく見て確認して下さい。
スジエビ・・・・・・「凶」模様(逆さハの字)
テナガエビ・・・・・・細く崩れた「m」模様
ミナミテナガエビ・・・・・太く鮮明な「m」模様
ヒラテテナガエビ・・・・・「ミ」模様〜「迷路」模様
参照⇒テナガエビ科の模様】テナガエビ三種と、スジエビの模様。


◆スジエビは透明な各種のヌマエビ類と混同される事が多いですが、
長いハサミ脚を持つので、これを見れば、まず間違える事はありません。
参照⇒ミゾレヌマエビの見分け方】よく間違えられる種類。
鼻先の越えるハサミ脚が無いので、
テナガエビ科と混同する事は普通はありません。

◆特に間違われ易いのがヌカエビ⇒【スジエビとヌカエビ
大きさも性格も違うのでまず間違えませんが、写真になると似てしまい、よく混同されています。

◆鼻先の触角が白い事が多く、「シラガエビ」と呼ばれる事もあるようです。

同じく鼻先の下向きに固定されたヒゲは黒い事が多いです。

◆餌を与えると、ぐんぐん飲み込み、あっという間に眼の後ろの胃が、餌と同じ色になります。

飲み込んで行く時に、胃がうにょうにょ動くのが観察できます。(テナガエビも同様です)

◆背腸(消化管・腸管)が細い。

スジエビやテナガエビは肉食性が強く、栄養価の高いおいしい餌を選んで食べます。
コケや汚れを大量に食べるヌマエビ類は、腸管が太く、糞も大量です。
この違いで、ヌマエビ類かスジエビかを確認しても良いかもしれません。⇒【背腸で見分ける


【その三】 ヌマエビ類(ヌマエビ科)攻撃とはほぼ無縁の小エビ達

攻撃性や肉食性が弱く、付着した有機物を忙しく食べる大人しいエビ達です。
ヤマトヌマエビやビーシュリンプなどと同じ仲間です。
上記の2種に比べて、ハサミ脚が短いエビ全てがここに入ります。
大量に食べ続けるエビ達なので、腸が太く、糞が多いのが特徴です。⇒【背腸で見分ける


●ハサミ脚が鼻先を越えることがありません。
とても短いハサミが口元に付いている小さなエビ達です。
この小さなハサミを忙しく動かして、物や水草の表面のコケや水垢を食べ続けます。
テナガエビやスジエビのように、ハサミ脚でケンカをすることはありません。
ケンカをする時は、下の写真の歩脚(第三胸脚)を使って叩き合います。

先端がハサミになっている第一胸脚と第二胸脚(ハサミ脚)が、歩脚よりも短いです。
顎脚の長さが目立ちます。
歩脚を一本上げていますが、先端はハサミではありません。

この仲間は攻撃とはほとんど無縁の平和主義者です。(餌を争ったりはします)
共食いなども特にしませんので
とりあえず同種・他種を混ぜておいてもOKです。
(死骸は餌になりますが、殺し合いや致命傷を与えるような喧嘩はしません)

要注意!
「体が透明」、「腰が出っ張っている」、「目が飛び出している」という三点で
多くのヌマエビ類がスジエビと混同される例を非常に多く見掛けますが、
透明なのも、腰が曲がっているのもエビの共通点ですし、目が飛び出していないエビも、恐らく居ません。
この三点を見て種類を判別すると、むしろ混同を生みます。使わないほうが賢明です。
参照⇒【スジエビと混同され易いエビ達
スジエビかヌマエビ類かの見分けは、真っ先に「手の長さ」です。
テナガエビ科とヌマエビ科の決定的な違いです。

ヌマエビ科のエビは、毛の生えた短いハサミ脚が口元にあるだけです。これでコケを取り続ける一日です。
テナガエビ科スジエビは、鼻先を越える長いハサミ脚を、前へ突き出しています。先は鋭いです。
参照⇒【ヌマエビ類とスジエビの見分け方

ここから見分ける種類
「ヌマエビ類」という括りの先には、7種類あります。
ヌマエビ類は種類が多いという先入観で、あきらめてしまう方もいらっしゃるかもしれませんが、
7種類はそう多くもない数字です。
しかも、7種類のうち、ヤマトヌマエビは簡単に見分けられます。最初から残り6種類みたいなものです。
ヒメヌマエビも容易。トゲナシヌマエビも容易。そうなると、あと4種類です。
最も混同され易いのは生息域が重なり、販売名も重なるミゾレヌマエビとヌマエビ南部群です。
しかし、これは模様で容易に区別できます。⇒ミゾレヌマエビとヌマエビの見分け方
すると残りは2種です。
特徴に乏しいヌカエビ(ヌマエビ北部-中部群)とミナミヌマエビ(シナヌマエビの仲間)です。
しかし、これもナントカなってしまいます。⇒ミナミヌマエビ(シナヌマエビ)とヌカエビの見分け方
これで、ヌマエビ類も7種全部クリアーです。

ヌマエビ・・・・・“ミゾレヌマエビ”だと思って飼われている方が多い。(旧ヌマエビ小卵型)。
ヌカエビ(ヌマエビ北部-中部群)・・・・西日本の旧ヌマエビ大卵型もヌカエビです。目が離れている陸封種。
ミナミヌマエビ・・・・・日本坂トンネル以西に生息。背中にハの字が並ぶ。外来種シナヌマエビが全国的に移入。
ミゾレヌマエビ・・・・・本当のミゾレヌマエビ。この名で買ったら「ヌマエビ南部群」です。見分け方はこちら
ヤマトヌマエビ・・・・・別名サワエビ。渓流域に棲むようで、他種に混ざる事は少なそう。見分けは最も容易。
ヒメヌマエビ・・・・・・・忍者の装束のような模様と、背中一本線の2タイプがあります。独特なので見分けは容易。
トゲナシヌマエビ・・・・・額角が短く、ずんぐりむっくり。見分けに苦労は少ないと思います。
参照⇒おすすめサイト信頼できる情報が掲載されているサイト。種類を比べるのにお薦めです。

水槽のコケ取りに利用されるエビは、まず「ヌマエビ類」です。
四本の短いハサミ脚の機械的な動きが見られます。
(写真はヤマトヌマエビ)

◆ミゾレヌマエビとヌマエビ南部群を見分けられれば、あとの種類の見分けは随分と楽になります。
それ以外のヌマエビ類は結構個性的なメンバーです。⇒ミゾレヌマエビとヌマエビ(南部群)の見分け方

“ミゾレヌマエビ”という呼称で20年以上の歴史を誇るヌマエビ(種名です)。
その弊害も考えると、そろそろ再考が必要な時期に思えます。

◆ヌマエビ類は小さいです。
2〜3cmの種類がほとんどですので、
虫眼鏡は用意しておくと、なにかと便利です。
100円ショップの物でも、じゅうぶん使えます。

 

2007/02/27 


2008/12/04 更新
2010/12/11 更新


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