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産卵期のメスの腰の曲がりは、似たり寄ったり

淡水エビの腰(第3腹節と第4腹節の境あたり)や背中の起伏。
曲がり具合、出っ張り具合で、種類を判断する目安にされている事が多いです。
大きく曲がる時期が多い種類と、常時平坦なままの種類があるので、
明らかに曲がっている個体に関しては、そこそこ目安には使えますが、
その腰の曲がりが強い種類も、産卵期のメス個体は、以下のように、あまり参考になりません。


腰が出っ張っている代表として有名なスジエビ。
代表と云うよりも、この種類固有の特徴のように誤まって語られてしまい、
ミゾレヌマエビやヌカエビとの「見間違い方」になっているのが普通です。
そのスジエビも、頭の後ろの甲羅の中に内子を抱えていると、へこんでいた背中の窪みが埋まります。
そして、すっきりとスマートだった腹節の下側は大きく甲羅が張り出して、抱卵する準備がされます。
こうなると、上下の起伏が埋まって寸胴です。


これはテナガエビのメスですが、上のスジエビと起伏の差がありません。
背中に卵巣、腹節下に抱卵です。
スジエビのほうが腰の出っ張りが強いとされる事も多い印象ですが、
産卵期では全く差がないように思えます。


背中の曲がりで有名なのが本物のミゾレヌマエビ。
しかし、この写真のメスは、上のスジエビ同様、あるいはそれ以上に起伏が埋まっています。
ミゾレヌマエビは産卵期以外には起伏の強い種類ですが、
産卵期のメスは、こんな卵まみれの姿です。


背中の卵巣が無い冬期は、この背中の白い部分がへこんで、窪みとなります。
当然、おなかの下の卵を抱いている部分もへこみます。
全体として起伏の激しいくねくねしたエビという印象になります。
この写真で云うと、灰色の透明な部分だけが「冬期のエビ本体」です。
ここまで卵で埋まった個体を見て、
「ミゾレヌマエビは腰の曲がりが強い」とは、およそ言えません。


ヌカエビも同様です。
背中に卵巣が発達すると、背中の窪みが埋まり、卵を抱く部分が張り出し、
全体に起伏のない体形になります。

ヌカエビは眼の出っ張りと腰の曲がりで「スジエビ!」と勘違いされ易いエビですが、
この体形のメスだけは混同されないかもしれません。

抱卵中のヌカエビのメス。

上記の種類は、テナガエビ以外はどれも腰の曲がりが強い種類達ですが、
その背中の曲がりの強さとは、『産卵期のメス以外は』という条件付きだという事です。
産卵期のメスは、以下の腰の曲がりの低い種類達と、似たり寄ったりです。


起伏の少ない代表、ヤマトヌマエビ。
トゲナシヌマエビやヒメヌマエビあたりも、こっちの起伏の少ない仲間。
しかし、残念ながら、上で紹介した起伏が強いと云われる種類と明確な差はないと思います。
腰の曲がりの強い種類の産卵期の体形との差は、ほとんどありません。
種類を判断する目安にすらならないくらいと思います。


外来のシナヌマエビ類は起伏が低めのタイプに属します。
抱卵メス以外であれば、ヌカエビとの区別は、腰の曲がりで充分に見当が付くものですが、
上記の様に、ヌカエビの抱卵メスは起伏が埋まりますから、腰での判断は難しいでしょう。

シナヌマエビの類(商品名ミナミヌマエビ)。

淡水エビの「腰の出っ張り」ですが、
腰の曲がりが強い時にも、多くの種類が含まれますし、
産卵期の寸胴体形の雌には、更に多くの種類が含まれる事になります。

腰の曲がりの強弱は、特定の種類だけに恒久的に存在するものではありません。
曲がりの強いままで抱卵場所や卵巣を発達させるのではなく、
産卵期のメスは、どの種類も目一杯に卵を積むので、ほぼ共通の体形になってしまうのです。

スジエビの体形変化

雄や産卵期以外の雌、若い個体は左のような体形ですが、
産卵期の雌は起伏の少ない体になります。
へこみの部分に、背中側には卵巣(内子)、
腹節の下側には抱卵場所を作るために生じる変化です。

ヌカエビの体形変化

若エビや雄、産卵期以外の雌と、産卵期の雌では、体形に大きな差があります。

ミゾレヌマエビ(本物)の体形変化

こちらも、若エビや雄、産卵期以外の雌と、産卵期の雌では、体形に大きな差があります。
背中のくねくね、くびれ、腰の出っ張りは、種類の違いを意味しません。
同種の雌雄、同種の産卵期とそれ以外の時期で、別種ほどの違いがあります。

 

◆各識別点の使い勝手、信頼性

模様で見分ける固有性が高いので種の特定が可能です。肉眼レベルなのも便利。薄ければ慎重に。
眼の角度・長さ採集したバケツの段階で、上から見ても区別が付きます。かなり絞れます。
外肢の有無比較的見易い部分です。接写をすれば嫌でも写るかも。効果絶大です。
額角肉眼では厳しい。見分けたい種類ほど額角も似ており、ヌマエビとヌカエビは数年前まで亜種扱い。
眼上棘前側角部棘肝上棘鰓前棘など棘は小さいので相当に精度が高い機器が必要。
腰の曲がり具合種類の特定や断定は無理。同種の雌雄すら別種になります。
体表の細かい白点かなり多くの種類の共通点。ミゾレヌマエビでも白星が無い場合は普通。
透明度で見分けるナンセンス。瓶に入った『ベンジン』を、「透明だから水だ!」と飲むのと一緒。

薄くでも出ていれば、模様だけで充分ですが、
上の方ほど、信頼性も使い勝手も良いので、確認に使うと便利。
下の3つは、直感材料に加わる程度で、断定はナンセンス。
額角は長さ程度。棘は見て置いて損はない程度。
指節背腸もおすすめ)

 

「模様は使えない」と「腰の曲がり」へ続く

 

2011/03/27 


2011/03/27 更新


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