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ヌマエビ類の見分け方(本土産8種類を眼の角度から見分けてみる)


テナガエビでもないし、スジエビでもない事が分かったら、ヌマエビ科という事になります。
ヤマトヌマエビやヒメヌマエビ、トゲナシヌマエビは分かり易いと思いますが、
↑こういった感じの透明系がなかなか難しいです。
「ヌマエビ」で終わっておいても良いですが、残り5種類ですから、
眼の角度や眼の長さを真上から見ると、そこからするするっと種名まで行くものです。
(眼は、網の上などの空気中だと、前に畳まれてしまいますから、必ず水中で見ます)


ヌマエビの仲間は似ている種類もあれば、似ていない種類もあります。
当然、見分けが必要なのは似ている種類だけです。
分かり易さでは、
1.眼の生えている角度、眼の柄の太さ、眼全体の長さ
が一番分かり易いと思います。
2.大人の個体、特に雌の大型個体は種類ごとに独特の模様を持ちます。
若い個体や雄では模様が薄い場合も多いです。
ただ、完全に模様が無いということはないので、じっくり見れば見えます。
3.そして、絶対に確認したほうが良いのが外肢です。
上の写真の歩く脚の付け根から分かれている小さな脚です。
比較的見易いので、これがあるのかないのかをじっくり確認します。
甲羅のヘリに密着していたりもしますが、虫眼鏡やルーペ(100円ので充分)でしっかり観察します。

最低でも、この3つを確認すれば、ほぼ種名に到達します。
3つの根拠が全て一致すれば、まず間違いありません。
3つではなくとも、1つでも2つでも確認できれば、それだけ近づくことは可能です。
逆に、3つのうち一個でも全然違えば、種類が違う事を疑うことが出来ます。
エビの写真に対して種名を明記する場合には、この根拠の提示は大切です。
淡水エビの世界では、根拠が示されないまま、誤まった画像と誤まった種名がセットになっている例が多いです。
その種類だと決定した理由が、最低でも3つは必要と思います。

今回は、一番簡単な『眼』から種類に近付く例の紹介です。
ヌマエビ類には、
1.斜め前向きの太短い眼
2.斜め前向きの太長い眼
3.真横を向いた、付け根が細い離れ眼
といった、眼の特徴に3種類の傾向があります。

 

1.眼が斜め前向きで、短い種類・・・・・3種類

眼が斜め前を向いて生えていて、その眼の長さが短い種類達。
参考⇒ヤマトヌマエビの眼

●主な特徴とチェックポイント
種名       
額角外肢前側   備考
トゲナシヌマエビ |短い|ない|小|ない|弱|スマートな♂がダークホース
ヤマトヌマエビ  |短い|ない|小|ない|弱|
ヒメヌマエビ   |中長|ない|小|ない|中|横縞型と縦縞型がある。♂に注意

この3種類を見間違えたりはしないものです。⇒【見分けにお薦めのページ


2.付け根まで太くて、やや長めの眼が、斜め前向きに生えている種類。
大型個体はやや横向きになる・・・・・3種類


やや長めの眼が、斜め前向きに生えています。
柄の部分が長めで、その柄の部分も太く、眼球との太さに差があまりありません。

ミゾレヌマエビ(本物)。雄や若い個体は斜め前向き度が強いです。老齢な雌はこんな感じでやや横向き。
ヌカエビの眼にやや似た感じも受けますが、付け根まで太いので区別できます。長さもほどほど。

付け根まで太いミゾレヌマエビの眼。
眼上棘外肢が無いのでヒメヌマエビ属。 
知名度の高い商品名“ミゾレヌマエビ”には眼上棘や外肢があるのでヌマエビ属です。全くの別種です。


青い矢印のように、個々の眼が斜め前を向いている、
外来種シナヌマエビやコウライヌマエビ等(商品名ミナミヌマエビ・ブツエビ・タエビ)。
写真右上の大型個体の眼がやや開いているが真横までは開かない。

●主な特徴とチェックポイント
種名(リンクは模様)
額角外肢前側   備考
ミゾレヌマエビ(本物)|長いないない|強|この種を知る事が見分け向上の秘訣
ミナミヌマエビ     |長い|ない|大|ある|中|意外なほどスタイル抜群
外来シナヌマエビ類 |中短|ない|大|ある|弱|ミナミより額角が短い

シナヌマエビ類には前側角部に棘が無い個体や個体群もあります。


3.真横の種類・・・・・2種類
出眼で離れ眼。両眼が180°に開きます。眼柄が長く、付け根に行くほど細いです。
小さな個体から大きな個体まで、どの時期でも真横の離れ眼。

ヌカエビの真横に出た離れ眼
電球やソフトクリームのコーンのような、眼球と眼柄の差が大きい眼です。
ヌマエビ属の2種、ヌマエビとヌカエビがこの眼になっています。
亜種ではなく別種になりましたが、眼の特徴は良く似ています。

スジエビと思われてしまう事も多いほどの離れ眼具合です。
参考⇒【スジエビとヌカエビ
ヌマエビよりもヌカエビのほうが頭が大きく、離れ眼も強い印象です。
真横を中心に、やや前向き、あるいはやや後ろ向きの個体もあります。
柄の長さが長いので、若干の向き違いよりも、長さを見たほうが間違いが無いかもしれません。

●主な特徴とチェックポイント
種名(リンクは模様)
額角外肢前側   備考
ヌマエビ)     |長い|ある|小|ない|強|昔から商品名“ミゾレヌマエビ”で有名。
ヌカエビ)     |長い|ある|ない|強|西日本にも広く生息する陸封種。
スジエビ(参考)   |長い|ない|中|鰓前棘|強|テナガエビ科


この、眼の角度や長さでおおよその見当を付けてから、模様を比べたり、外肢の有無をチェックすれば楽と思います。
眼の角度なら、顕微鏡やルーペも要らないですし、採集したバケツの上からでも分かります。

ヌマエビ類は透明で似ている種類が4種類ほどありますから、
さすがに、雰囲気や直感だけでは正解率25%程度です。同意や信用の形成も難しいと思います。
眼の角度」、「外肢の有無」、「模様の傾向」の3つの内のどれか1つでも確認してあれば、
ぐっと絞られますし、説得力も増すことでしょう。
3つ全部確認してあれば、混同もなく種名そのままだと思います。
種類を特定する時に使った特徴の提示は、直接に当のエビを見られない第三者にとっては大事な情報です。
たとえば、このエビ。
透明で腰の曲がったヌマエビの仲間です。
この写真一枚で、根拠の提示なしでは、第三者に種類は分かりにくいと思います。
1.眼の角度は斜め前でした。
2.外肢は無いです。
という情報が付属していれば、涙模様と、跳ね上がり模様をプラスして、
第三者にも、簡単にミゾレヌマエビと判断されます。
(もっとも、ミゾレヌマエビは模様を見るだけでの正答率が高い種類なので、写真に模様が見出せれば充分ですが)

 

眼から見分けていく例。

◆ヌマエビの場合
 こんな模様(強調してあります)。
ヌマエビ(ヌマエビ南部群=旧ヌマエビ小卵型=商品名“ミゾレヌマエビ”)
ほぼ完全な真横(たま〜に幾分斜め前もあり)。離れ具合はヌカエビほどではない感じ。
観賞用に売られるくらいですから、ミゾレ模様の綺麗な個体が多いです。
胸の横にネコに引っ掛かれたような「ミ」模様や、UFOが飛んでいるような軌跡があります。⇒【UFO墜落エビ】。外肢もあり

◆ヌカエビの場合
  
真横出眼のヌカエビ(西日本の旧ヌマエビ大卵型も同種)。眼柄が細い。胸の横の模様は単純

◆ミゾレヌマエビ(本物)の場合
  
斜め前で眼柄が太いミゾレヌマエビ(本物)。眼上棘も無く、模様も独特

◆外来種シナヌマエビ類(雄の場合
 
シナヌマエビ類の若い個体や♂。眼が斜め前で眼柄が太い。模様が濃い♂。ハの字が並ぶ(トゲナシも似る)。
間違い易いと思われるヌカエビとは、眼の角度だけ見ても容易。離れ眼具合も違う。

◆外来種シナヌマエビ類(雌の場合
 
シナヌマエビ類の大型の黒化個体はやや眼の開きが強くなる。それでも真横ではなく前に傾く。複雑な模様〜黒化
ヌカエビとは模様が全然違う

 

『ヌマエビの見分け方=眼の角度、眼の長さ』くらいのつもりで入って行くと良いと思います。
ヌマエビを見たら眼の角度!。こうすると種名の判断が身近になるのではないかと思います。
角度だけでなく、長さや柄の細さなどを見て、模様のチェック、外肢のチェックと繋げると良いと思います。


ヤマトヌマエビは眼を見るまでもないですが。

 

※ちなみに、眼だけ見るのは、下の2種類の最大の混乱源。
あくまでも、ヌマエビ科の中で行なうと比較的簡単に種名に到達するかも、という話です。

 
左:テナガエビ科スジエビ
右:ヌマエビ科ヌカエビ(ヌマエビ北部−中部群)
ヌカエビはケンカをしないので、こういう写真でも分かります。
スジエビはここまで他個体と接近しません。
性格は真逆ですが同一種とされる率が高い種類同士。
最大の原因が「真横の離れ眼」。共に腰の曲がりも強く、透明度も同様。

 

2010/07/17 


2010/09/05 更新


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