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日本産淡水エビの見分け方 基礎的部分と注意点

川や池で淡水のエビを採集したら、早めに3つに分けます。
そうしないと、小さなヌマエビ類が食べられてしまい、次いでスジエビが食べられ、
最後にはテナガエビだけになってしまいます。

1.テナガエビ類・・・・・大型化する肉食性のエビ。バケツの中でも脱皮したが最期、仲間に食べられます。

名前の通り、手(第2胸脚・ハサミ脚)が長く、これで餌を獲ったり、ケンカをしたりします。
胸の横に「m」に似た模様があるのが、テナガエビとミナミテナガエビ。ミナミテナガエビは足の爪が短いです。
上流部に多いヒラテテナガエビは「m」ではなく「」のような斜め模様です。
3種類の見分けは比較的容易です⇒テナガ3種の模様。特にミナミテナガとテナガは歩脚の爪の長さで一瞬です。
エビの中ではワシやタカなどの猛禽類的な存在です。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・↑と↓の見分け方⇒テナガエビとスジエビの見分け方・・・・・・・・・・・・・・・・・・

2.スジエビ・・・・・・テナガエビほどではないですが、肉食性の強い中型エビ。

テナガエビ科なので、手は長いです。このハサミ脚でケンカや餌獲りをします。
大型のメスは共食いや小型の魚を狩る事も出来ますので注意が必要です。小型魚の尾が割かれる兆候が見られます。
ヌマエビ類にとっても危険な存在で、脱皮時に捕らえられて食べられてしまう事が多いです。
餌を与えるとぐんぐん飲み込み、胃が動いてみるみる餌色に膨らんで行きます。
エビの中ではカラス的な存在です。
名前の通り、体じゅうにスジ模様がたくさん入ります。捕獲時に模様が薄くなっても、落ちつけばスジは出て来ます。
透明度や腰の曲がり、眼の飛び出しを見て、ヌマエビ類の多くを「スジエビ!」と断定する誤まりを非常に多く見掛けます。
テナガエビ科の特徴である手の長さと、独特の模様の特徴を良く確認すれば、簡単に防げる間違いです。

・・・・・・・・・・・・・↑と↓の見分け方⇒スジエビとヌマエビ類(代表としてヌカエビ)の見分け方・・・・・・・・・・・
手が取れていてもテナガエビ
スジエビとヌカエビを背腸で見分ける

3.ヌマエビ類・・・・チマチマと付着藻類や付着生物を食べるおとなしい小型エビの仲間。

落ちている餌や付いている餌を、口元の小さなハサミを忙しく動かして食べます。
ケンカはほとんどしません。餌を取り合ってケンカをする場合にはハサミではなく、足で叩き合います。
テナガエビやスジエビは、仲間が近くに居たり、体が触れ合うのを嫌って、ハサミを振るって一定の距離を保ちます。
ヌマエビ類は、殊更に仲間を嫌う事なく過ごします。1個の餌に多くが群がります。
エビの中ではハトやスズメのような存在です。
透明度や腰の曲がり、眼の出っ張りのみで安直にスジエビと勘違いされる例が多いですが、
テナガエビ科ではないので、短いハサミ脚を見れば容易です。
特に間違われ易いのがヌカエビ、そしてミゾレヌマエビ(本物)です。腰の曲がりや透明度、出眼はエビの共通点です。

・・・・・ヌマエビ類の種類を見分けるヒント】最大でも8種類ですから、消去法で充分(識別の根拠は明確に)・・・・・
ヌマエビ類に関しては、まるで数十種類以上も日本に居るかのような勘違いをされている方も多い印象ですが、
本土に居るのは外来種も含めてたった8種類。しかも、標本ではない生きたエビ達は個性的な色柄を持ちますから、
よく言われている「額角を顕微鏡で見なければ識別は不可能!」なんて事はありません。
お薦めのエビ画像サイトの写真と見比べて、全然違う種類から消して行く「消去法」で辿り着けるはずです。
ヌマエビ類でやや似ているのは、ヤマト、ヒメ、トゲナシ以外の四種類程度です。
ただ、その四種類程度に関しては、エビの飼育書や雑誌でも間違いだらけが定番です。
ヌマエビ類は、ひとに聞いたり、図鑑を見たりしても正しい種名には辿り着かない可能性が大きいジャンルです。
正確な情報を自分の判断力で選び、自力で種名まで辿り着くしかないと思っておいた方が妥当です。
上記のお薦めサイトには写真に対して正しい種名が記載されていますので、安心して活用できると思います。
「たぶん→おそらく→きっと→まず、○○ヌマエビ!」と絞れたら、
あとは100円の虫眼鏡やルーペ、マクロ撮影などして、ゆっくり確認して行けば良いのではないかと思います。

 

淡水エビの種類を識別する際に使わない方が良い点(参考にはなりますが、断定として使うには無理があります)
1.腰の曲がり具合・・・・海老と書くくらいですから、どれも曲がっているものです。可動部分でもあります。
2.透明度・・・・・・・若い個体やオスはどの種類も透明度が高いです。まず無理でしょう。
3.眼の出っ張り具合・・・どのエビも眼は体表から飛び出ています。科を超えたヌカエビとスジエビの混同が多過ぎる原因。
4.体表の白い点々・・・どの種類にも多く見られます。逆にミゾレヌマエビ(本物)には少なく、取り違えが著しいです。
5.背中の明色の縦帯・・・ヌマエビ類のメスには背中を頭から尻尾まで通る明色の帯が出る種類が多いです。
6.額角・・・重要性が強調され過ぎて、別種を同種としてた例も。小さ過ぎますし、似ている種類のほうが圧倒的に多い。
7.雰囲気・・・「そんな気がする」だけで根拠の提示なく誤まった種名が書かれる例が多いです(特にヌマエビ類)。


(左)ヌカエビが出眼である事はあまり知られていません。スジエビとの混同がとても多いです。
(中)ヌマエビ類の各種のメスに多く見られる背中を縦走する明色の帯。どの種類の大型メスにも出易い。
(右)こんな姿が主流の生き物に「なんとなく○○エビな気がする」では無理。あてずっぽうでは当たりません。

 

ヌマエビ類の種類を見分けるポイントは3つ←3つ見られればほぼ終了。1つでも確認すれば確度大幅アップ。
1.眼の特徴・・・「眼の短さ・長さ」、「眼の生えている向き・角度」、「柄の太さ・細さ」
2.胸の横の模様・・・種類ごとに違った模様が描かれています。薄くでも見えれば強い味方です。
3.外肢の有無・・・歩く脚の付け根に生えている小さな脚の有無が見えれば、種類間違いがすっ飛んでしまいます。

(左)眼の向きや眼の長さは、種類ごとに特徴的なので、識別の大きな判断材料です。
(中)各種の模様の特徴は、強調して憶えておくと便利です。ただ、誤情報の鵜呑みを再検証した後の解禁となります。
(右)体に沿って小さな脚があるのが見えると思います。これの確認すらなしで種類を語るのは無謀に思えます。
必ず三点の一致を確認していれば、一点でも違えば気付きます。
特に外肢という揺るぎ無い根拠を見ているか居ないかでは確度に天地の差が生じます。
3つに限らず、確認箇所の一致は多いに越した事はありません。⇒【ヌマエビ類の識別ポイント早見表
特に、前側角部の棘は、「ミゾレヌマエビ(本物)」と「ミナミORシナ類」では必須箇所です。

 

根拠の確認をしていない誤情報の氾濫に要注意
参照
⇒【ヌマエビ類の識別ポイント早見表
本土産ヌマエビ類8種類中、見分けにくい種類は4種類程度です。
ですが、その4種類に対する誤同定情報は、正しい識別情報を上回る量です。
写真に対して雰囲気や気分で種名が付けられている例が圧倒的に多く、
詳細な説明の割りに識別の根拠の確認はされていないのが現状です。
その4種類を雰囲気で断定するのはあまりに強引なのですが、ヌマエビ類の誤情報の氾濫は常態化しています。
「眼」と「外肢」と「模様」の特徴の確認は最低条件。それらの確認宣言が無ければ眉唾情報と疑うのが安全です。
見分け例⇒【ヌカエビと外来シナヌマエビ類(商品名ミナミヌマエビ)を見分ける】今後増えると予想される混同も簡単識別。

(左)“ミゾレヌマエビ”という販売名が定着してしまっているヌマエビ(南部群)。外肢が生えているので明らかな間違い。
(中)密放流され、関東・東北・北海道にまで居る“商品名のミナミヌマエビ”。採集され、ヌカエビとして紹介される例が多い。
(右)本物のミゾレヌマエビ。模様も独特。外肢がないのでこちらが本物ですが、ヌカエビやただのヌマエビとされる率が高い。

 

肉眼的識別への根拠のないネガティブキャンペーンが酷い世界(成熟にはほど遠い世界です)
淡水エビは種類も少なく、模様も種類ごとに独特、額角は酷似した種が多く極小なので参考になるのは長さ程度。
ところが、不思議な事に、淡水エビの識別方法には、以下のような後ろ向きな発言が充満しています。
・淡水エビは種類が多く、酷似していて識別は困難。←世界の全種類も相手にしている分類学上での話。
・色彩や模様は識別の参考にならないし、使えない。←アルコールに浸かった標本は色抜けします。
・額角を顕微鏡で見る事でしか見分けられない。←色柄の抜けた世界中の標本との比較だとそうなります。
ほぼ笑い話ですが、生きたエビにも当然の如く適用して語る人の数は尋常ではありません。(特に博物館系発信)
生きたエビには関係のない、標本瓶の世界での話なのですが、まるで生きたエビも真っ白かのように語られます。
淡水エビは自然科学の一部ですから、生きたエビの模様も自然現象。
似ているから使えない、間違えるから見てはいけない、という後ろ向きな感覚は馴染みません。
良く観察し、類似点や相違点を明確にすればとても便利な識別材料となります。
淡水エビの世界に蔓延る「後ろ向きな讒言」には根拠が一つもありません。
科学ですから、明確な根拠の提示があれば、またそれを乗り越える手法が生み出せます。
しかし、それは無いのです。全部勘違いから生まれたただの因習だと思っておいて大丈夫です。
淡水エビを肉眼的に見分ける上で自虐的な負担でしかありませんから完全無視が相応です。

生きた綺麗なエビも、まるでこのような白化エビのつもりで語る情報は無視してしまって構わないと思います。
そのような情報では写真に対する種類間違いが当然多いです。
間違った種名や間違った見方を植えつけられたりで、得る物よりも失う物の方が多いでしょう。

これに限らず、種類を正しく見分けるには人為的な障害がとにかく多い世界です。
淡水エビ自体を良く観察して、独自に判断していくしかない、まだまだそんな未成熟ジャンルです。
見ず知らずの誰に聞いてもすぐ分かるとか、書籍の鵜呑みでOKとかとは縁が無い水準と思っておいて下さい。
50個情報があっても、正しい情報が1個あれば良い程度の世界です。自分の目と判断力だけが頼りです。
ただ、エビ達は、種類それぞれに違った姿と色柄と顔付き・体付きで、各種独自の生態で暮らしています。
つまり、最初からエビだけ見ていれば混乱は生じません。勝手に混乱しているのは人間だけです。

 

ヌマエビ類とスジエビの簡単な見分け方

ヌマエビ科のエビ達には、口元に小さなハサミ脚が4本生えているだけです。攻撃的なハサミ脚は持ちません。

ビーシュリンプやヤマトヌマエビと同じ仲間です。

スジエビには長いハサミ脚があります。テナガエビ科はバケツに入れると、バンザイして泳ぐので簡単に識別できます。

スジエビはテナガエビ科スジエビ属。テナガエビの仲間なので、鼻先を越える長いハサミ脚を持ちます。
ケンカをしたり、餌を探したりと器用に使います。やや小さな第一胸脚も同様です。(第一胸脚は畳んでいる事も多い)

参照⇒【淡水エビ写真館・エビギャラリー
この中に、同じエビが見付かれば、説明を読むより早いと思います。
欠けている種類は、その先の【おすすめエビサイト】が必見です。
行ったり来たりすると知識が濃くなって、自ずと見分けられて行くと思います。

 

2010/09/16 


2010/09/21 更新


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